アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 977

やけにリラックスしたこの猫は言う。静岡県警が、血痕の付着した5点の衣類を味噌樽の底に沈めるという証拠捏造行為を行った」と。 ああ、これは袴田事件のことかと私は受け止めた。

猫はさらに、しかし「捏造を行った」という言葉が、どれだけ検察側を刺激するか、そこを考慮しなければならないとも言う。つまり言葉とは、それは外交を参考にすると分かりやすいが、かなり微妙なニュアンスが含まれ、今回のケースではその点が疎かにされ、検察側が、袴田氏にあくまで死刑を求刑するという姿勢にまで追い込む事態となった・・・。

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【公判調書3056丁〜】

               「第五十七回公判調書(供述)」(昭和四十七年)

証人=諏訪部正司(四十八歳・浦和警察署刑事第一課長)

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石田弁護人=「午前中最後の質問の続きになるわけですが、スコップ発見現場から北へ約三百メートルと仰る地点の地下足袋は、領置はもちろんされましたですね」

証人=「はい」

石田弁護人=「領置される際に、発見状況に関する見分書はお作りになっておられますね」

証人=「記憶ありません」

石田弁護人=「通常の捜査の常道からすると、そういう場合は実況見分をしてその調書をお作りになることでしょうね」

証人=「その通りです」

石田弁護人=「その地下足袋が発見された地点というのは自殺された奥富玄二さんという方のお宅と比較的近い所じゃないかという風に思われるんですが、その点いかがですか」

証人=「そちらの方角になっております」

石田弁護人=「なお、スコップ発見現場付近の足跡発見地点というのはスコップ発見現場のすぐ近くだったですね」

証人=「はい」

石田弁護人=「大雑把でいいんですが、大体の距離で表しますと、スコップが発見された場所から何メーターくらいの地点でしょうか」

証人=「正確ではないと思いますが、五メートル以内のように記憶しております」

石田弁護人=「その足跡は何個くらい印象されておったか覚えておったら」

証人=「忘れました」

石田弁護人=「一個よりも複数であったでしょうね」

証人=「その点も忘れてしまいました」

石田弁護人=「まあ書類には書かれておるということですね」

証人=「はあ」

石田弁護人=「その他に死体発見現場付近で地下足袋が発見されたということはございませんか」

証人=「ないと思います」

石田弁護人=「六月十三日でしたか、いわゆる別件が起訴になったことを知ってますね」

証人=「別件と言いますと」

石田弁護人=「恐喝未遂を除くその他の第一次逮捕の被疑事実が起訴になったことをご存じですね」

証人=「はい」

石田弁護人=「その際、恐喝未遂についても起訴すべきだったという意見をあなたお持ちになりませんでしたか」

証人=「起訴、不起訴につきましては検察官の権限でございますので分かりません」

石田弁護人=「それではあなたでなくてもいいんですが、警察の内部で、恐喝未遂を起訴しなかった点について不満のような意見はあったのではありませんか」

証人=「不満という言葉はちょっとどうかと思うんですが、ただ私どもの捜査が足らないんだと、こういう風に思っておりました」

石田弁護人=「私どもと言いますと警察のことですか」

証人=「そうです」

石田弁護人=「まあ六月十七日に第一次起訴され、勾留が続いた関係について保釈になって、第二次逮捕になるわけなんですが、あなたは第二次逮捕については逮捕状を請求する疎明資料等の整備にはあたられておりませんか」

証人=「逮捕状の請求については直接はあたっておりません」

石田弁護人=「その逮捕状を請求する際に、まあ請求書にいろいろな資料を添付する手続きがあるわけですが、そういった資料の整備などはおやりになっていませんか」

証人=「資料の整備まではやっておりません」

石田弁護人=「までは、と仰いますと、何か関与されたことはあるわけでしょうか」

証人=「その書類を疎明資料として集めるというのには若干、携わりました」

石田弁護人=「そういう作業をされた時点は第一次起訴があった当日でしょうか」

証人=「忘れました」

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石田弁護人=「まあ狭山事件は佐野屋脇で、そこへ現われた犯人を取り逃したということから、広く社会で注目されるようになったと思うんですが、その五月二日夜のことについては十回、十一回の公判の時にある程度お伺いしていると思うんで、その前の日である五月一日の夜、警察が張り込んだことについてお尋ねしたいんですが、五月一日夜、佐野屋の脇付近に警察官、あるいは被害者の姉が赴いたことがありますか」

証人=「ちょっと記憶は薄らいでおりますが、十二時という言葉がありましてその点たまたま、まあ現在亡くなっております関口部長が当日の当直であったわけなんです。で、事件が探知しまして時間がなかったので当夜関口部長外五名ほどが張り込みをやった以後の報告を受けております」

石田弁護人=「その際、どんな風に五人の人を配置したかというようなことは覚えておられますか」

証人=「五、六人であることはわかりますが、具体的にどこへどういう風にということにつきましては忘れました」

石田弁護人=「その関係については署長宛の書類が関口部長などから出されておりますね」

証人=「その記憶は薄らいでおります。口頭報告だけ受けた記憶ははっきり残っております」

石田弁護人=「関口部長はお名前は何と仰るんでしょうか」

証人=「邦造です」

石田弁護人=「被害者の姉を一日の夜も立ち合わせていますね」

証人=「はい」

石田弁護人=「それから増田秀雄という人はどうでしょうか」

証人=「その点は恐らく当夜は行ってないと思います」

石田弁護人=「以前のあなたの証言によりますと、五月二日の夜の張り込みについて報告書があるという証言をなさったことがあるわけですが」

証人=「はい」

石田弁護人=「その書類に記載されている主な事項はどういうものでしょうか」

証人=「報告書を書いた記憶があります」

石田弁護人=「だからその書いた主な内容でいいですがね」

証人=「逃走直前の張り込み図面を作成した記憶はあります。内容は忘れました」

石田弁護人=「その中に、犯人が逃走したとされる頃からの警察官の、いわば動き方などは記載されていないんでしょうか」

証人=「それには記載されてないと思います」

石田弁護人=「移動後の状況については、そうしますとあなたが作られた報告書と言われるもの以外の、別の報告書のようなものがあるわけですね」

証人=「その点ちょっと記憶が薄らいではっきり分かりません」

石田弁護人=「その五月二日の夜、佐野屋付近の張り込みについて警察官に各自の配置を指示されたのは証人でしょうか」

証人=「はい、私と将田警部と相談をして配置をさせたわけです」

石田弁護人=「配置をあなたと将田さんがお決めになったのはいつ頃の時期でしょうか。張り込み直前でしょうか」

証人=「直前と言いますか、当日の午後六時からまあ八時頃までだったかと記憶しております」

石田弁護人=「その張り込みについては、もし犯人がそこに現われるならば絶対逃がさないようにという配慮はもちろん働かして警察官の配置をお決めになったわけですね」

証人=「そうです」

石田弁護人=「つまり要所要所と言いますか、その犯人が現われた地点から遠くへ逃げられないような形で、その要所要所に配置をさしたということになりますね」

証人=「はい」

(続く)