狭山の黒い闇に触れる 58
事件番号:昭和三十九年(う)第八六一号・原本番号:昭和四〇年刑第二六号の五。411丁に目を通していると次の記述があった。検察官が証人、青木警察官に対し問う。検察官「これは、カバンを捨てたという場所の図面ですが、これは、本人が書いたものに間違いありませんか」証人「はい」検察官「そばで、長谷部警視などが捨てた場所なんかについて示唆したことがあって、それに基づいて書いた事実はありませんか」証人「ありません。示唆を与えることができなかったろうと思います」検察官「どこまでも被告人本人の自発的に出た供述に基づく図面なんですね」証人「はい」ふむふむ。気にかかった記述は「長谷部警視が示唆してないか」のくだりである。検察官は不安なのか具体的に、しかもこの問いは推測に基づいているが、それを証人に問う。いや、問うというより「お前、言い切っているがいいんだな、それで。これで裁判がひっくり返った日にゃ、お前覚悟しとけよ」というような、いわば圧力とでも言おうか、検察官自身、疑義を感じながらもそこまで言うなら信じましょうと、そんな空気感を私は感じた。ま、これも推測であるが。