アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 1078

『原文を読みやすくするために、句読点をつけたり、漢字にルビをふったり、中見出しを入れたり、漢字を仮名書きにしたり、行をかえたり、該当する図面や写真を添付した箇所があるが、中身は正確である』

写真に向かって右側のガラス戸、その下から二段目を見ると屋内が見える。つまりこの並列した二枚のガラス戸、その下から二段目の計四枚のガラスは透明なガラスが使われていたことがわかる。それ以外は曇りガラスが使われており、脅迫状を差込むには屋内の様子を探りつつ低姿勢での行動が要求されたと思われる。写真は"無実の獄25年・狭山事件写真集=部落解放同盟中央本部中央狭山闘争本部・編、解放出版社"より引用。

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【公判調書3352丁〜】

「第六十一回公判調書(供述)」昭和四十七年六月十五日

証人=中田健治(三十四歳・農業)

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佐々木哲蔵弁護人(以下、佐々木と表記)=「善枝ちゃんの自転車ですが、普段はどこに置いてあるんですか」

証人=「あの当時は家の土間に置いていたと思います」

佐々木弁護人=「家の土間というと、どこですか」

証人=「東側の隅のほうです」

佐々木弁護人=「東側の隅というと」

証人=「家の中の図面出して下さい、説明しますから」

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裁判長=「さっきご飯食べたとか、あの図面で分かるの」

証人=「はい、分かります」

佐々木弁護人=「(前同一六五丁見取図〈一〉を示す)この図面でいうと」

証人=「これのガラス戸を開けて、右側のほうです。この右側のところにもガラス戸があります」

佐々木弁護人=「ガラス戸を開けて中に入ったところというんですか」

証人=「はい」

佐々木弁護人=「いつもそうですか」

証人=「そうですね、大体」

佐々木弁護人=「あの晩発見された場所は普段置いてあったところではなかった」

証人=「ええ、全然違う場所でした」

佐々木弁護人=「自転車はどちらかというと新品だということでしたね」

証人=「はい」

佐々木弁護人=「古い新しいというのは程度問題でしょうけれども、いつ買ったんでしょうか」

証人=「半年か、事件からやっと一年前じゃないでしょうか」

佐々木弁護人=「どこで買ったんでしょうか」

証人=「派出所の近くの原島自転車店と思ってます」

佐々木弁護人=「いくらで買いました」

証人=「あの当時は父と登美恵が金の出し入れしておったもので記憶ありません」

佐々木弁護人=「それからガラス戸ですね、というのは透明のガラスですか、曇りガラスはどうですか。六枚あるようですね、ガラス戸が」

証人=「はい、一枚のガラス戸について二枚だけだかが、透明が入っていたと思うんです」

佐々木弁護人=「出入り口のガラス戸というのは二枚だけですね左側の」

証人=「はい」

佐々木弁護人=「それは脅迫状が挟まっておったというガラス戸は透明でしたか、曇りでしたか」

証人=「曇りと透明と両方付いてました」

佐々木弁護人=「あなたが原審の一番早い時点での、第二回公判でご証言されたことに関してちょっとお尋ねするんですけれども、あなたが学校に行って、捜しに行って帰られて、そしてすぐお父さんに『・・・善枝はやっぱりいなかった・・・』とお話したことが、ご証言になってますね」

証人=「はい」

佐々木弁護人=「一審で述べたのは間違いないでしょうね」

証人=「間違いないと思います」

佐々木弁護人=「やっぱりいなかった、というのは、何か予感でもされたんですか」

証人=「ええ、あんまり遅くなっても帰って来ないから、まあそういう、どこかの家にでも行ってるのかなあという気もしないでもなかったんです」

佐々木弁護人=「そうすると捜しに行かれた時、何か、多少そういった不安めいたものがあったんですか」

証人=「まあ、こんな事件になるとも思ってなかったし・・・・・・」

佐々木弁護人=「ただ、まあ何か、そういった不安めいたものは感じていた」

証人=「もう、恐らく、夜学の始まっている時間だから学校にはいないだろうと」

佐々木弁護人=「やっぱりいなかった、と仰っているからそのお気持ちを、ですね」

証人=「・・・・・・・・・」

佐々木弁護人=「何か不吉めいた予感でもおありだったんですかと」

証人=「いや、そんな感じでは・・・・・・」

佐々木弁護人=「こういうことを仰ったことは間違いないですね」

証人=「はい、ないと思います」

佐々木弁護人=「それからガラス戸とガラス戸との間に脅迫状が挟まっておったと、それを発見されたのはあなたですね」

証人=「はい」

佐々木弁護人=「今までのご証言の位置関係からしますと、あなたが一番取りやすい場所ではありますね。距離的には」

証人=「そうですね」

佐々木弁護人=「それをどうして武志さんに取らしたんですか」

証人=「武志はあの時もう食事は済んでいたと思うんですが、一緒に始まって早く終わっていたと思うんですが」

佐々木弁護人=「あなたの一審でのご証言は、『みなさんは食事中でした、僕はちょうど終わった時でした』と、あなたは終わってみなさんは食事中ということになってますから、あなたが一番取りやすい場所にいるから、武志さんに取ってくれというのがちょっと理解しにくいからお尋ねするんですが、その辺はどういうことだったんでしょうか」

証人=「さあ、何という気はなく、武志に頼んだと思ってます」

(続く)