【公判調書1290丁〜】
ここには何やら届けが載っている。「不参届」とあるが、見てみよう。
『昭和四十三年九月二十七日
裁判長判事 久永正勝殿
不参届
昭和四十三年九月二十四日付昭和三十九年(う)第八六一号被告人石川一雄被告事件について証人として貴法廷に出頭方の御召喚状を受領致しましたが、別紙添付の医師診断書の通りの病気の為、目下安静療養臥床中にて、出廷致し難き状態でございますので御届け申上げます。
尚、昭和四十三年八月二十三日午後三時頃、東京合同法律事務所弁護士石田享氏同中田直人氏両氏が突然私宅に来られ私に質問され、それに私が御答えました事は、次の通りでございます。 石田、中田両氏が突然来られ、近くの畑に働いていた人が私方は或いは知っているかも知れないからと言われたから来ましたとの事でした。私は事件当日は来客があり夕方迄家の中に居て、夕方門まで客を送っただけで、家より外に出なかったから、当日の事件に関しては何も知りませんと答えました。又、私の家は道路より相当奥に入り森の中にあり、林で遮断されて外は見えない状況ですから外の事は一切わかりかねます、と答えました。次に、当時警察等の山狩りがあったかと問われ、あったという事は聞いたと答えました。次に、刑事が調べに来たかと問われ、手拭いについて数回来られたと答えました。又、私方で雇っていた女の農手伝が畑で働いていたが、道路とは方向の違う遥かに離れた麦畑で一日中屈みながら牛蒡播きに熱中していた為、仕事以外の事については、気がつかなかった、と答えました。二人の弁護士の方に、以上のように話した通りで、それ以外の事は一切無関係であり、又事件に関し知っている事も無く、従って御証言申し上げる事も何らございません。以上 』
*そして文章のおわりに診断書が添付されていた。なるほど、こういう趣旨の届け出であったか。面倒に巻き込まれることは御免と言うわけだ。