『老生による原文(公判調書第二審)引用作業は常に泥酔状態で行なわれるが、中身は概ね正確である』
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【公判調書3597丁〜】
「第六十五回公判調書(供述)」
証人=高橋乙彦(四十七歳・警察官。事件当時は埼玉県機動隊分隊長)
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裁判長=「あなたはこの石川一雄の事件について、当時から多少捜査に関与されましたね」
証人=「はい」
裁判長=「そのことについて控訴審の証人として弁護人の申請によって来て頂いたんですが、裁判所に証人として出たことはあるんでしょうね、この事件についてですよ」
証人=「はい、あります。ほかにはありません」
裁判長=「この事件以外にはない」
証人=「ありません」
裁判長=「今、警察学校の教官をしておられるということだけれども、全国に警察学校はいくつあるんですか」
証人=「各県に一つずつです」
裁判長=「あなたが教官をしておられるのはどこです」
証人=「埼玉県のです」
裁判長=「この前この事件で証人に出たのは、あなたの記憶ではいつ頃のことだか覚えていますか」
証人=「証人に出たのは、三十八年の九月か十月頃と思います」
裁判長=「それではあなたの警察官としての経歴を概略でいいんですが、最初から言って下さい」
証人=「昭和二十年十月拝命しました埼玉県警察の羽生署です」
裁判長=「巡査ですか」
証人=「そうです。それから二十一年十月大宮警察署の外勤です。それから二十四年十月県警捜査一課へ行きました、そこで庶務をやっておりました」
裁判長=「身分に変更があった時は言って下さい」
証人=「二十九年七月に巡査部長になりまして蕨警察署に行き警務係をやりました。主任です。警務主任をやって、三十一年八月埼玉県機動隊に行きました。三十八年八月に大宮警察署に行き、四十七年八月二十四日警部補になって警察学校に行きました」
裁判長=「機動隊では何を」
証人=「分隊長です」
裁判長=「現在では教官ですね」
証人=「はい」
裁判長=「そうすると三十八年の、この事件が起こった時は機動隊に所属していたということになりますね」
証人=「はい、分隊長をしておりました」
裁判長=「あなたはさっき三十八年九月か十月頃証人に出たように記憶しておると言っておったんですが、だいたいその通りですが、正確なところは十一月四日の第四回公判に出ております」
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城口弁護人=「あなたは三十八年五月の、いわゆる狭山事件についての捜査に従事したことがありますね」
証人=「はい」
城口弁護人=「どんな捜査に従事されましたか」
証人=「死体の捜索、また遺留品の捜索です」
城口弁護人=「死体の捜索の方法は、山狩りとかそういうことになりますか」
証人=「山狩りが大部分です」
城口弁護人=「死体の発見現場について覚えておりますか」
証人=「現場覚えております」
城口弁護人=「その近くにいわゆる芋穴があったということも覚えてますね」
証人=「はい」
城口弁護人=「その捜索をしたことも覚えてますね」
証人=「はい」
城口弁護人=「山狩りは何度くらい従事されましたか」
証人=「三日か、四日間くらいだと思います』
城口弁護人=「回数にして何度くらい」
証人=「三回か四回あります」
城口弁護人=「捜索の部分については別な部分をなさったんですか、それとも同じ所をなさったんですか」
証人=「同じ所にぶつかったこともあると思います」
城口弁護人=「それは重なった部分があるということですか」
証人=「そうです」
城口弁護人=「捜索に関わったのは何日からでしょうか、特に山狩りですよ」
証人=「五月三日頃の朝だったと思いますが」
城口弁護人=「事件は何日にあったか覚えていますか」
証人=「一日だと思います」
城口弁護人=「二日くらい経った五月三日の朝から従事したと」
証人=「はい」
城口弁護人=「死体の発見をされたのはいつですか」
証人=「四日です」
城口弁護人=「この日はどのような部分の山狩りに従事されてましたか」
証人=「場所ですか、死体の発見された東の方になりますが、あの山を捜索しておりました」
城口弁護人=「捜索に従事したメンバー、それはどういう構成メンバーでしたか」
証人=「各分隊毎に編成を組んで出たと思います」
城口弁護人=「何分隊くらい」
証人=「四個分隊くらいが行ったと思いますが、詳しいことは忘れました」
城口弁護人=「その四個分隊の機動隊の外は」
証人=「外には消防団員が捜索したかとも思いますが」
城口弁護人=「一分隊というのは何名くらいですか」
証人=「十一名です」
城口弁護人=「分隊長を含めて」
証人=「はい」
城口弁護人=「四分隊というと四十四、五名ですね」
証人=「そうですね」
城口弁護人=「消防団員のほうは何名くらいでしたか」
証人=「これは私のほうではちょっと分かりかねます」
城口弁護人=「機動隊の数に近い数であったかどうかはどうですか」
証人=「その点もちょっと、記憶ありませんね」
城口弁護人=「参加しておったということについては記憶しておるんですね」
証人=「ええ、それは聞いております」
城口弁護人=「同じくらいの数ではなかったんですか」
証人=「その数はちょっと分かりかねるんですが」
城口弁護人=「単に数名というような印象じゃないでしょう」
証人=「数名ではないと思いますね」
城口弁護人=「機動隊、消防団員の人たちの、その山狩りに際しての指揮は、誰が一番上に立って指揮するんですか」
証人=「これは特捜本部の本部長ですね」
証人=「これを小隊長が受けて、小隊長から分隊長に来るんです」
(続く)