弁護人=「話が飛んで悪いですが、五月一日の日に入間川の駅に帰ってきてから、馬車新道を通ってお茶屋の所を回って、煙草を買って学校のほうへ行った、という話をしましたね。前に」 被告人=「はい」 弁護人=「その途中で八百屋の息子に会ったと言ってますね」 被告人=「はい」 弁護人=「その八百屋の息子に会った時の模様をもう少し詳しく聞きたいんですが、八百屋の息子の名前を知ってますか」 被告人=「知らないです」 弁護人=「金子という八百屋じゃないですか」 被告人=「そういうのも知らないです。裁判所から証人の決定が来たので金子って分かったけど、それまで分からなかったです」 弁護人=「そこのうちには息子さんが何人いるか知ってますか」 被告人=「ちょっとそれはわからないです」 弁護人=「学校はいくつぐらいか判っているんですか」 被告人=「いくらか知っている人は俺と同じです。学年は一つ下だけど年は同じです」 弁護人=「あなたが会ったというのは、その年が同じ人ですか」 被告人=「そうです」 弁護人=「その人とは、前にはよく会ったことがあるんですか」 被告人=「ええ、会いました」 弁護人=「どこで会いましたか」 被告人=「パチンコ屋で会ったことがありますけれども、その八百屋で物を買ったこともあるし、家のほうへ売りに来た時、買ったこともあります」 弁護人=「八百屋さんの息子さんもあなたの家のほうへ売りに来てたんですか」 被告人=「はい、そうです」 弁護人=「パチンコ屋で会ったことがあると言ってましたね」 被告人=「はい」 弁護人=「どこのパチンコ屋ですか」 被告人=「オリオンです」 弁護人=「オリオンの場所は」 被告人=「この前、現場検証をやった時、お茶屋を曲がって百メートル位行った左手です」 弁護人=「煙草を買ったという煙草屋さんの前ですか」 被告人=「あれよりずっと手前、神社より手前です」弁護人=「オリオンというパチンコ屋で会ったことがあるんですね」 被告人=「はい、二、三度あります」 弁護人=「そこで五月一日のことですけれども、八百屋の息子さんに会った時に、その息子さんはどこにいたんですか」 被告人=「店にいました」 弁護人=「店に立っていたんですか」 被告人=「はい。それで向こうから言ったから、手まねしたんです」 弁護人=「最初に言葉を交わしたのですか」 被告人=「交わさないです。パチンコかいって尋ねられたんです。それで、手まねして教えたんです」 弁護人=「それに対して、息子さんは何か言ってなかったですか」 被告人=「何も言ってません、笑ってたです」 裁判長=「途中ですが、今言った八百屋というのは、どの辺になっているの」 被告人=「入間川、郵便局、あの並びではないですけれども、あの向かい側です」 裁判長=「曲がる手前ですか」 被告人=「三十メートルぐらい手前です」 裁判長=「どっち側ですか」 被告人=「入間川の駅から降りますと左側です」 裁判長=「お茶屋のほうだね」 被告人=「はい」 弁護人=「まだ少し坂になってる辺りじゃないですか」 被告人=「坂は殆ど降りちゃってからです」 ・・・(続く)
八百屋。