弁護人=「あなたは時計が聞こえることについて、誰かに言いましたか」 被告人=「いろいろな人に言いました。看守人に教えました。そうするとどうして分かるのかと言うので、その柱時計の音で分かると言って、それから聞こえなくなっちゃったと思います」 弁護人=「何が分かると言ったのですか」 被告人=「時間がです。今、何時だねって言ったんです。そうすると、どうして判るんだと聞くんです」 弁護人=「それは調べが終わってからのことですか」被告人=「そうです。留置場へ戻ってからです。それで、何時何時と言うと、どうして分かるのかと言うから教えたんです」 弁護人=「西側の柱時計があるからということですか」 被告人=「ええ。それから二、三日経ってからだと思います。全然聞こえなくなっちゃったのは」 弁護人=「日にちで言うとどのくらいですか」 被告人=「二十六日頃だと思います。もっと前か、ちょっと知らないですけど」 弁護人=「二十六日頃までの間は、川越へ行ってからずっと聞こえてましたか」 被告人=「ええ、聞こえてました」 弁護人=「二、三日経ってから聞こえなくなったんですか」 被告人=「ええ、そうです」 弁護人=「ずっと聞こえなくなったんですか」 被告人=「ええ、そうです。いつも調べの時は八時頃までは時計をはめているんですけれども、それ以後出て行って、来る時は時計をはめて無いです。大体八時頃過ぎると、外へ出て行った人は完全に時計を外して来るんです」 弁護人=「すると、夜八時頃までは、皆んな時計をはめたまま調べているわけだね」 被告人=「はい」 弁護人=「その時計をあなたが見られるわけですか」被告人=「ええ。その頃までは、何時ってことは判るわけです」 弁護人=「それから後は、出て行っては時計を外して来るものだから時間が判らなくなったんですか」 被告人=「はい」 弁護人=「だけど終わってから、帰って柱時計で判ってたということですね」 被告人=「はい、そうです」 (続く)
狭山の黒い闇に触れる 287
【公判調書1189丁〜】