アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

電波

この事件に関して書かれている書物を、私はこれしか知らない。なので何度も読み返している。佐木隆三節炸裂の一冊である。この表紙!レクター博士も真っ青

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事件の凶行場面はあまりにも無残で、被害者の無念さはいかほどであったか。なので再読するたび当該場面はスルーしている。犯人の生誕から、東京深川で犯行に及ぶ瞬間までの、狂気のエネルギーがみなぎってゆく描写に引き込まれる。でもね、この犯人の性格の一面である「ぶっきらぼう」「対人関係が苦手」という人は世に一定数いるのだ。昔の私がそうだったから。そこでこの犯人から、誰もが持つ負の要素を一つ一つ剥がしていくと、公判で明らかになる「電波」という犯行原因が浮かび上がってくるのだ。本人は公判で「電波による攻撃を受け続けた」と切実に訴える。その内容も、「電波が耳から入る」「顔に張り付いてくる」あるいは「それと共に声が聞こえる」など、本気で真面目に裁判長に訴える姿は気の毒に思える程だ。しかし、これが死刑判決回避に向けた弁護側のテクニックの一つだったとしたら、これは恐ろしい。今後は「電波」を振りかざし精神鑑定に持ち込む弁護士が出て来るだろう。本事件に関して、死刑相当と思いきや無期懲役の判決であった。

不謹慎を承知で言うと、大地康雄主演で事件がドラマ化されているが、最高の出来映えである!当時テレビ局に「本人を出したのか?」との問い合わせがあったそうだが、犯人と大地康雄が似過ぎているから仕方ない。演技も本家を超える出来で、危なくオモシロイ。最後に、私はこの事件の公判記録完全版が読みたくてしょうがない。気骨あるジャーナリストの方、然るべき手続きを取り書籍化を願いたい次第だ。