前回より続く十字路の件である。
弁護人=「あなたはそこで連れて行ったのではない、と警察官に言ったわけでしょう」「それで結局どうなったのですか」 被告人=「結局、捕まえたのがどこか、分からなくなってしまうから、多分そこだと言っちゃったです」
裁判長も軽いが、石川被告人も軽い。今引用している裁判記録は第二審であり、第一審では死刑判決がなされている。「多分そこだと言っちゃった」とは、思わず笑うが、本件はやっていないという気軽さゆえ出てくる言葉なのであろうか。死刑判決の出た事件では、おおむね全てが重い。重く進行し、過程、結果も重い。石川被告人の(私の失礼な言い方であるが)能天気さは、犯人ではないからこそ、その態度を取れると(ここに科学的根拠は無いが)、そう私は思った。