【公判調書1172の12】
狭山警察署・関巡査の、「長谷部さんに従った方がためになる」との忠告が効き、
石川一雄被告人は荒縄の件を認めた。「ためになる」とはどういう意味か、関巡査に聞いてみたいが、さて、法廷では
取調室での虚構の供述をさらに暴くごとく弁護人は尋問を続けてゆく。 弁護人=「〜山学校の一つ手前の十字路で○○(被害者名)さんを捕まえて、あなたの言う倉さんの首っこ(首吊り=筆者注)した山、この裁判では四本杉と言われている山の方へ連れて行ったということを言ったことがありますね」 被告人=「はい」 弁護人=「その道を言い出したのはあなたですか、警察の方ですか」 被告人=「私が言いました」 弁護人=「どうしてですか」 被告人=「何となく、そこだといっちゃったと思います」 弁護人=「三人でやったと言った時もその場所で捕まえたと言いましたね」 被告人=「そうです」 弁護人=「どうしてその場所で捕まえたと言ったか、今は分かりませんか」 被告人=「思い出せません」 弁護人=「自分で考え出して言ったのですか」 被告人=「そうです」 弁護人=「ここで捕まえたのか、と聞かれたわけではないのですか」 被告人=「はい、そうではないです」 弁護人=「あなたが、今言った十字路で捕まえて山の方へ連れて行ったという話をしたら、そのことについて取調官から何か言われましたか」 被告人=「言われました」 弁護人=「どういうことを言われましたか」 被告人=「地図を示して、ここに三輪車を置いて畑をしていた人が居たのだから、そこで捕まえる分けはない。見られる、と言われました。でも、私はそこだと頑張りました」 弁護人=「東中学校という新しい学校の前の道を、峯の方から行くと左側に曲がって山の学校へ行く十字路があるでしょう」 被告人=「はい」 弁護人=「その一つ手前の十字路で○○(被害者名)さんを捕まえたというように説明したのでしょう」 被告人=「そうです」 弁護人=「畑仕事をしていたという場所は、山学校へ行く一つ手前の十字路を右の方、つまり四本杉の方へ入ったところですか」 被告人=「はい、荒神様の方から行くと右です」 弁護人=「地図を見せられたと言いましたね」 被告人=「はい」 弁護人=「地図に何か書いてありましたか」 被告人=「三輪車が書いてあって丸の判が押してあったと思います。三輪車がここに居たんだからここで捕まえるわけはない、と言われたです」 弁護人=「三輪車は自動車の形でも書いてあったのですか」 被告人=「そうです」 弁護人=「何という人がそこで仕事をしていたということは」 被告人=「ちょっと分からないです」 弁護人=「捕まえたという十字路から四本杉の方へ入っていくと道が二又に分かれていますね」 被告人=「はい」 弁護人=「車が止めてあったという場所はどの辺に書いてありましたか」 被告人=「どの辺といっても分かりません」 弁護人=「十字路になっている所と二又に分かれている所の真ん中辺に書いてあったとか、十字路になっている所に近い方に書いてあったとか、分かりませんか」 被告人=「十字路に近い方だったと思います」 (続く)
私は確認のため山学校に向かった・・・。
写真中央やや上に十字路がある。被告人の「自白」では、被害者を殺害後、この十字路を右に進み、鞄や教科書を捨てたとされる。
十字路を右に進む。私はすでに酔っていたので、ここで犯したミスに気付かない。この道は前述の通り、殺害後に通った道とされているが、いつの間にか私は、被告人が被害者を捕まえ殺害現場へ向かう道と勘違いし、ひたすら四本杉を探すという行動をとる。しかし59年前の杉の木が残っているわけがない。気付くまでに30分かかり、歯ぎしりしながら先を急いだ。
このあたりは、写真奥に向かってなだらかに傾斜している。相当量の降雨が続いた場合、地面が吸水しきれない雨水は、多方向からも集まる雨水と合流し、鞄や教科書が発見された窪地付近に向かうと私は思う。狭山事件を深く知る者には、私の言いたいことが分かるだろう。ところで、事件当時の状況はと言うと・・・・・・
ぬかるんだ道。雑草。雑木林。偽らざる昭和38年の情景である。