弁護人=「先程、死体にあった縄について長谷部さんから教えられたと言ったが、あなたの自白を見ると、縄の他にも手拭いで縛ったとか、タオルで目隠ししたなどという事を言っているでしょう」 被告人=「はい、言っています」 弁護人=「その自白が、どういう風にして出て来たか覚えていますか」 被告人=「死体の写真なんか見せられました。こういうように縛ったのではないかと」 弁護人=「その死体に縛ってあったわけですね」 被告人=「そうです。こうなっているがどういう風にして縛ったかと、写真を見せられ言われました。そしてどういう風に縛ったかやって見ろと言われて、遠藤さんの手を縛ったり、椅子を縛ったりしました」 弁護人=「どういう物で縛ったのですか」 被告人=「布のひもだと思います」 弁護人=「それは長谷部さんか誰かが、あなたに渡してくれたのですか」 被告人=「そうです」 弁護人=「縛ってどうなりましたか」 被告人=「縛り方があべこべだと言われました。どうしてそういう風になったのだと言われたので、自分は昭和三十二年頃、プレスで指を落として、それからは細かい仕事にはほとんど左手を使うので、左から縛ったと言ったような気がします」 弁護人=「だから縛ったというのはどういう意味ですか」 被告人=「主に右手を動かさず、左手を括るのに使って、左で引っ張るのです。そうしたらあべこべだと怒られました。だけど指を落とす前は右をほとんど使っていたから、右で縛ることもあり得ると言いました」弁護人=「そうしたら警察官は納得しましたか」 被告人=「ええ」 弁護人=「手拭いやタオルを結んである状況を見せてもらったことがありますか」 被告人=「あります。写真を見ました」 弁護人=「実物は」 被告人=「実物も見ました。手拭いかタオルかどっちかが、二か所位はさみで切ってあったと思います」 弁護人=「その時調べた人は、あなたが結んだのをみて、その結び方はあべこべだと言ったわけですね」 被告人=「はい。だけど写真を見ても、どう結んであったか分からなかったです」
狭山の黒い闇に触れる 264
【公判調書1172の14】