アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 214

・・・弁護団側による三十の証人と証拠の取調請求が却下された。却下が二十三、撤回が二、取調済が三、他が二である。これに対し弁護団側から『証拠調請求却下決定に対する異議の申立』がなされる。全文引用しよう。主任弁護人:「弁護人が取調請求をしていた証拠の中には例えば足跡に関する鑑定がある。これについて(注:1)えば当審における審理の結果、従来法廷に現れていなかったスコップ発見現場付近からの足跡並びに地下足袋などに関する問題が新しく付加された。これらについては検察官が手持の足跡についてその内容などを明らかにしているところである。これからみれば果たして従来出ている足跡鑑定が正しいかどうか明らかでないと思う。そういう意味では弁護人請求の足跡鑑定は不可欠のものだと考える。次に、証人・石川美知子についていうと、脅迫状は被告人の妹・石川美知子のノートをちぎって書いたという趣旨の被告人の自白があるわけであるが、ノートの持主であるこの証人は脅迫状の材料そのものに関する最も重要な証人である。更に、証人・小林秀雄についていうならば、この証人は、被告人が当審で初めて述べた入間川駅の荷小屋の中で中学校の生徒が通るのを見たということに関する証人で、つまりアリバイ証人である。被告人が自分が起訴されている事件について犯人ではないということを申し立てたのは当審第一回公判であり、当審においてアリバイ証人がただ一人として採用されないということは重大な問題である。弁護人が取調を請求している証拠は、弁護人が控訴趣意書において被告人が自白していたにもかかわらず、いずれも原判決の誤りとして指摘して来た問題点に関するものばかりである。そこで当審には、控訴趣意書に包含された事項に関する、また、当審において新たに必要性を生じて来たこれらの証拠の取調をすることが刑事訴訟法第三九二条に定める調査義務として課せられているものと考える。従って、弁護人の各証拠調請求を却下したのは右控訴審の調査義務を規定した右同条に違反するほか実体的真実の発見を規定している同法第一条にも違反する違法な決定であると考えるので、右却下決定全部について異議がある」……。全くもって正論である。しかし次の行には間髪入れず、裁判長による「右異議申立却下決定」との、切歯痛憤に満ちる返答が記載されている。この、却下されてしまう異議申立であるが、特に目を引いた箇所は「アリバイ証人がただ一人として採用されていない」との記述である。なるほど、この裁判を振り返って見たとき、事件当時、被害者宅の場所を尋ねられた内田氏や、某植木屋など、検察側に有利な証人・証言は採用されているが、石川一雄氏および弁護団側に有利な証人・証言はほぼ採用されていないのである。双方の証人・証言を採用し調査、厳密な考察を経て結論を導き出すことが、いわゆる公明正大という裁判所の是ではなかろうか。こういった、軸足が警察・検察に置かれている裁判官を相手にした場合、弁護団側は途方もない労力を強いられるであろうことは明白であるが、私は極力応援したいと思った。だけど、残念ながらこれは昭和四十三年の話であり、いささか事件に没頭し過ぎの自分に気づいたのだった。さて(注:1)であるが、調書を見ると一文字抜けているのであり・・・、

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「〜について」と「〜えば」の間に何らかの文字が入らないと意味が通じない。文脈から推測、「言」を当てはめ「〜について言えば」とすれば意味は通じるのだが、果たしてそれで良いのか、これを反訳した裁判所速記官に聞いてみたい。