アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 586

ここへきて公判調書は、そのいたるところへ上申書、弁護人選任届、求意見書、証人調請求書、電話聴取書、決定書、図面借用書などをこれでもかと挟みこんだ上で、これより第三十九回公判が始まろうとしている。が、ここで扱われる内容が、かなり以前から引用してきた「事実取調請求書(弁護側提出)」、それに対して述べられた「検察官=平岡俊将の意見」への、さらなる応酬となっていた・・・。

【公判調書1852丁〜】「第三十九回公判調書(手続)」

証拠関係   別紙証拠関係目録(一)記載の通り

主任弁護人=「検察官に対し、昭和四十五年六月十七日付検察官提出の〈事実取調請求に対する意見書〉の内容に関して、次のことを求める。

一、四丁表九、十行目に『検察官の調査によれば』とある、調査というのはどういうものなのか具体的に明らかにされたい。なお、その点に関する当時の書類があるのなら弁護人に閲覧させられたい。

二、二十四丁裏(二)の項に、科学警察研究所に対し時計の地中埋没時間推定の鑑定が可能なりや否やを問合せたところ、同研究所機械研究室よりその推定をすることは困難であるとの結論の回答があった、ということでその回答を引用してあるが、同回答書の作成日付、作成者を明らかにし、なお、同回答書を弁護人に閲覧させられたい。

三、二十七丁裏十二行目以下に、自転車についての指紋採取に関する書類が見当らず調査中である旨記載されているが、その書類が見つかったかどうか明らかにされたい。

四、三十二丁裏(二)の項につき、 

    1.『死体発見現場付近の山林三ヶ所から新たに牛乳ビン、コモなど六、七点発見、指紋その他を調べている』とか『死体発見現場から三百米はなれた林の中に堀立小屋が発見され、中に草刈ガマと荒ナワ、エロ雑誌、ヌード写真、自動車運転免許甲法令集、ペン習字帳、絵本などがあり、カマと荒ナワは本部員が持ち帰った』等の記事に関連する事実については本件に関係ないことが判明した旨記載されているが、本件に関係ないとの根拠が明らかでないからそれに関する捜査書類を開示されたい。

    2.奥富玄二について捜査した資料があるようであるから、それを開示されたい。

    3.丸京青果の荷札は証拠物件として整理する過程で木綿ひもに結びつけたものである旨記載されているが、それはいつ、いかなる機会に、だれが結びつけたものかを明らかにし、それに関する資料があれば開示されたい」

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山梨検事=「右三の自転車についての指紋採取に関する書類は現在当検察官の手許にはない。

右に指摘の各資料があれば提出することにやぶさかではない。しかし、昭和四十五年六月十七日付検察官の証拠調請求書中、証拠七の昭和三十八年五月三日付狭山警察署巡査・飯野源治、同小川実作成の現場指紋(足跡)採取報告書は、第三十六回公判での公判手続更新における植木弁護人の意見『現場足跡は偽造された』の項二の(七)で巡査部長・関口邦造作成の実況見分調書に足跡を採取したと書いてない、そこには黒い影がある、という風に述べられているし、一方弁護人は証拠の開示を求めるので取調を請求したものであるところ、弁護人はこれを証拠とすることに同意しないということであって、このようなことは検察官にとっては心外である。なお、同書面は原審においても検察官が取調を請求したところ弁護人が同意しなかったものである。弁護人が全部を裁判所に見てもらうという公明正大な方針であれば検察官としては各資料を提出することにやぶさかではないのである」

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主任弁護人=「弁護人としては検察官側にどういう証拠があるのか手持ちのものをまず見せてほしい、というのが証拠開示を求めている趣旨である。

右証拠七、現場指紋(足跡)採取報告書を証拠とすることに同意しなかったのは、検察官の請求の趣旨によっては不同意であるということであり、また弁護人としてはその内容に不審があるからである。これについては、弁護人がすでに請求している飯野源治の証人尋問がなされ、同書面が取り調べられるべきものかどうかを確かめた上で改めて意見を述べるとか弁護人から別の立証趣旨で取調を請求するということがあるかも知れない。さきに提出した書面では単に不同意としたが、右の点を補足する」

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佐藤検事=「弁護人の右各要求に対してはのちに回答する」

別紙証拠関係目録(二)記載の通り

昭和四十五年十二月二十一日

東京高等裁判所第四刑事部裁判所書記官   飯塚   樹

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○佐藤検事が「弁護人の右各要求に対してはのちに回答する」と述べたということは、その回答はいつの日か知らぬが、果てしなく遠く、そして意表を突くタイミングで調書上に登場するのであろう。