アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 583

【公判調書1815丁〜】

東京高等検察庁検事=平岡俊将の意見

第四、事実取調請求について

三、請求書第三の証人

番号1.植木幹雄

番号2.杉田文平

    前記第三で述べたように、被告人の五月一日の行動について当審で陳述するところは信用し難いのみならず、右証人らが被告人のいう時刻頃、直接貨物小屋の前を通ったという事実の立証でないとすれば、なおさら態々証人調べの必要はないと考える。

番号3.大竹幸

    先に証人調された横山ハル、横田権太郎もあり、重ねて尋問の必要はないと考えるが、強いて反対する訳ではないから然るべく決定相成りたい。

番号4.石川美智子

    請求の立証事項は従来の審理や記録に現れていることであり、改めて取調べの必要はないものと考える。

番号5.高村巌

   右第四、の一、の(一)で述べたとおり、鑑定については鑑定書で明らかと考えるが取調べに強いて異存はない。

番号六.加登豊

    然るべく決定相成りたい。

番号7.中田直人

    原審以来引き続き当審において弁護人として立証趣旨と同一内容のことについて屢々陳述され、また、提出された各書面でも述べられていて、十分聴取しているところであるし、改まって証人としての証言までされる必要はないように考える。

番号8.河本仁之

   当審において本件の捜査主任検事であった原正を尋問してあり、また、本証人の関与した被告人の取調状況等は全てその作成にかかる調書が提出してあり、当審第三回検証の指示は被告人の自供その他の捜査結果に基づいて行なったもので、今次更新に際しても図面通り検証確認されているので改めて尋問の必要はないものと考える。

番号9.中勲

   当人は既に退職し他の職に就いているものであって、記憶も余り期待はできないと思うが、取調に強いて反対はしないから然るべく御決定相成りたい。

番号10.竹内武雄

   右に同じ。

番号11.将田政二

   既に当審第十二回公判で詳細な尋問がなされておるので、重ねて取調べの必要はないと考える。なお、立証事項2、3については、後記書証、新聞記事の項で述べる通りである。

番号12.長谷部梅吉

   既に当審第八、九、十回の各公判で詳細な尋問が尽くされているので、重ねて取調べの必要はないと考える。なお、立証事項4については後記書証、新聞記事の項で述べる通りである。

番号13.諏訪部正司

番号14.青木一夫

番号15.小島朝政

番号16.関源三

   何れも既に当審証人として詳細な尋問済みであり、重ねて取調べの必要はないと考える。

番号17.清水利一

   同人による被告人の取調状況は全てその作成にかかる調書が提出されているし、鞄発見の経緯、状況は原審記録中(第五冊一三五七丁以下)の実況見分調書に充分表れており、その他の事項についても特に証人尋問の必要はないと考える。

番号18.山下了一

   概ね右清水と同じで、特に必要はないと考える。

番号19.斉藤留五郎

   同人は直接被告人の取調責任者ではなく、また、被告人の断食の点については前記第一、の四にも述べた通りで、何れについても特に斉藤を証人として尋問する必要はないと考える。なお、供述調書、添付図面の謄本作成状況は先に取寄せられた供述調書謄本二組と、添付図面の鑑定等によって明らかとなると思われるので現段階では必要ないと考える(右17.清水利一、18.山下了一のこの部分に関する立証事項についても同じ)。

番号20.遠藤三

   立証事項4については、既に当審第三十一回公判で証人として尋問されており、1ないし3の点は既に当審における証人長谷部梅吉、青木一夫、関源三らによって証言されておるところであるから、改めて取調べの必要はないと考える。

番号21.大野喜平

   立証事項1は、原審記録第二冊五五八丁以下の同人作成にかかる実況見分調書及び添付写真と、原審における同人の証言(記録第二冊四九六丁以下)の通りであり、3については後記書証新聞記事の項で述べる通りであるし、その他4についても、何れも改めて取調べの必要はないと考える。

番号22.五十嵐勝爾

   原審記録第三冊八七五丁以下の同人の鑑定書と原審における同人の証言(第三冊七一二丁以下)によって明らかであって、改めて尋問の必要はないものと考える。

番号23.大谷木豊次郎

   立証事項中には、既に当審における証人将田政二、諏訪部正司等の証言で尽くされている部分もあるので、この点を考慮の上、然るべく決定相成りたい。

番号24.飯野源治

   立証事項1、2については前記第四、の一、の(三)で述べた通りであり、3、4については当審第二十五回公判で既に証人として尋問済であるから改めて取調べの必要はないものと考える。

番号25.関口邦造

   立証事項1については原審記録第二冊五一七丁以下の同人作成にかかる実況見分調書の通りで、改めて取調べの必要はないと考えるから、同2についてのみ然るべく決定相成りたい。

番号26.石田一

   当審第十五回公判において既に証人として尋問済であって、重ねて取調べの必要はないものと考える。

番号27.福島英次

   立証事項1については、原審記録第三冊八六〇丁以下の同人作成にかかる実況見分調書の通りであり、同2については、当審第十二回公判において証人将田政二が述べているところで、本件に関係ないものと判って処置されたものであり、改めて取調べの必要はないと考える。

番号28.岸田政司

   前記第四、の一、の(三)で述べた通り鑑定書で明らかであるから、改めて尋問の必要はないものと考える。

番号29.鈴木章

番号30.石原安儀

番号31.梅沢茂

   これらについての立証事項はいづれも当審で既に取調べられた証人等によって尽くされている点と思われるし、また、梅沢茂についての立証事項3は、前記19の斉藤留五郎につき述べた通りであるから、いづれも取調べの必要はないものと考える。

 

四、請求書第四の書証及び証拠物たる書面

(一)、請求にかかる文書は何れも新聞記事または週刊誌の記事であって、作成責任者も明らかでなく、内容も伝聞的なものである。特に1ないし9の各新聞記事は、いづれも本件発生直後の五月五日ないし七日のもので、当時捜査当局においてさえ未だ事件犯人等の筋も把握し得ず、捜査も五里霧中の時期において、いわゆるジャーナリズム的な面から独自の情報蒐集により得た材料によって、推測、想像さえ交えたものが多いと思われ、その信用性は殆どなく、いかなる趣旨においても刑訴法上の証拠となり得る資格、価値のないものであると考える。(続く)

                                          *

○上記、四の(一)の意見は当時の新聞紙面を見れば納得できよう。そこには目を覆いたくなるほどの差別、偏見、煽情に満ちた記事が確認でき、本来、新聞の持つ使命である情報の正確な伝達などとは程遠い、おぞましくも人々の注意を引く、従って新聞の売上には貢献できそうな文言が並んでいる。こういった記事の掲載を認可した会社の胆力は見上げたものだが、いずれしっぺ返しが待っていることてあろうことは明白である。

写真は"無実の獄25年・狭山事件写真集=部落解放同盟中央本部中央狭山闘争本部・編、解放出版社"より引用。