【公判調書1579丁〜】
「狭山事件の特質」
中田直人
第二、被告人の主張
3.『自白が、山学校附近の十字路で被害者を捕まえた、と述べている点について被告人は、 「“その場所は三輪車を置いて畑をしていたから捕まえるわけはない、その人達に見られる” と警察官に言われた。警察官は図面を見せて、車の形を書いて、丸で囲ってある判がその地図にはあった」と言っている。昭和四十三年九月十七日の第二十七回公判で、横山ハル、横田権太郎両証人は、その日この近くの畑で仕事をしていたことを明らかにした。とくに横山ハルは、自白に言う連行した正にその道に “ダイハツの自動車を止めて長男と一緒に桑畑の手入れをしていた” のである。自白の虚偽を示す決定的な証人が当審において取調べられた意味は大きい。特に注意してほしいのは、この両証人(弁護人請求の高橋ヤス子を含めて)の存在を我々弁護人が調査し出したのは、被告人が「取調べ中、こういうことを取調官から言われて調べられたから、調べてほしい」と言ったからである。我々にはその時までこれらの事実を知るなんらの手掛かりも無かった。調査は困難であったし、かなりの時日を要したが、被告人の言った通りの証人が現れた。そして被告人はまた、事実を取調官からだけ知り得たのである。何故なら、連行経過が仮に自白通りであるならば、被告人はその人たちを見ていたはずであるし、被告人はそのことを述べたに違いない。ところが、六月二十九日付青木調書十一項には「その附近には誰もいなかった」と記載されているのである。被告人はその日、そこを通らなかったからこそ、そこに人がいたことを知らなかったのである。この証人によって明らかにされたことは、自白の経過、取調官から誘導された事実について被告人の供述を裏付けると同時に、自白自体の虚偽を証明する二重に価値高いものとなっている』(続く)
*“狭山事件公判調書第二審”より引用中の、中田直人主任弁護人による「狭山事件の特質」であるが、その分量は思った以上に多く、それでいて密度の濃い内容となっている。今まで三文小説しか読んだことのなかった老生にはその一行一行が目新しく映り、また刺激に満ちている。
本日はサンタ・バイ・サンタ・カロリーナ カルメネール/プティ・ヴェルドを口に含み、その濃厚な果実の香りと存在感のあるタンニンを楽しむ。前菜はコモディイイダのポテトサラダ。その後エコスで購入した「二層仕立ての粗挽きメンチカツ」(税込140円)に舌鼓を打つ。メインディッシュには「紺のきつねそば」が待っている。