アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 95

私の解釈が間違っていなければ、井波裁判官は次の点を明らかにする為、問いを繰り返したのであろう。1、何故、小島証人は石川被告の供述を簡単に確信したか。2、不徹底な少女雑誌の捜索及びその理由。まず1が先にあり、この先入観とでも言おうか、それが2を生み出している。したがって小島証人から1と2を明確にさせる言質を引き出せば、少なくとも弁護側の疑問に対し一つの答えとなり得ると、公明正大・厳正中立の立場である裁判官は、直々に問い質したのだと思われる。自宅から被害者の万年筆が発見されたとなれば、これは重大な、石川被告の運命を左右する証拠となり、事実、第一審判決は死刑なのである。したがって第二審における万年筆問題では井波裁判官自らが前面に出、深く掘り下げ尋問を繰り返したと、こう私は捉えた。さて、石川被告の供述は当初、三人による犯行と自供、これは変遷し単独犯行となり、他にも細々とした供述がやはり変遷後確定されてゆくが、この石川被告の供述が変遷する過程を井波裁判官が取り上げ、なぜそのような被告人の供述を小島証人が簡単に確信したか、その短絡ぶりを追及する。井波裁判官:「〜被告があることを供述したらそれだけで信用できると、認められるのかどうか、という経緯を知らないからそういうことを言うんじゃないかないかと思うんだよね。そういうことを知らないんでしょう、被告がどういう供述態度で従来やって来たかということは、あなたは知らないでしょう」小島証人:「或る程度は知っております」井波裁判官:「そうすると、こういうことを知っているか、被告が一つのことを言うについてもいっぺん言えば間違いないと、供述を変えないんだという供述態度であったかどうか、ということは知っているんですか」証人:「当初ですか」裁判官:「全部を通じて」証人:「「そういうことは知らないです」裁判官:「だから、従来の供述態度をよく知っておれば、被告がこういうことを言って、こういう絵を書いたから、それだけで全部間違いないんだというふうに信用することは、ちょっとおかしいんじゃないかと思うんです。ただあなたは、上の者からか、ほかの取調べをしている者が、こういうふうに言ったんだから行ってこいと言われて行ったんですが、そこに、大体そういうことを言われるんだからあるんだろうと思うならいいが、確信するのはおかしいんだがね。あなたは、確信するだけの材料はないんだから」証人:「それは、先ほど言いましたように、飯塚警視から直接電話があったと、今まで直接取調官から電話があったことはないということ、更にメモを将田警視から渡されて、こういうことを言われたということで、私は確信したわけです」・・・なにやら小島証人が使用した言葉である「確信」という語句、これがあまりにも断定的過ぎるところに問題が孕まれているのかと、ならば表現を変え、「そんな気がした」とでも言っていればここまで長丁場にならず済んだかと、単純な私は思ったが、裁判官は、こう語る。「その確信が、もう少し深い確信の根拠があるならいいが、僅かな確信であって、これで充分なんだというから少しおかしいんだね。記録全体から見ると被告の言うことは、何も一貫していないということは、前と後とはずい分違う、それで前に言ったことが本当だと思って行ったら、そこには本当に何もなかったということがあるんですよ。だから被告が言ったからということだけの理由で確信するというのは、少し客観的の事実と違うんだ、そういうことを知って、あなたが確信があると言ったのかどうかということなんです。必ずしもそうでなくて今まで捜索を命ぜられなかった上司から捜索を命ぜられたということが主になっているわけですね」証人:「はあ」・・井波裁判官による小島証人への尋問はここで終わる。以上を持って狭山事件・第二審公判調書:第1分冊を考察終了とする。・・・再び読み返し新たな発見があればここに書き出そう。公判調書は再読の価値が満載であり、それは冤罪性を指摘することにつながるかも知れず、無意味では無いだろう

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(無実の獄25年 狭山事件写真集:部落解放同盟中央本部中央狭山闘争本部編 : 解放出版社より引用)