アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 94

小島証人は法廷で大変な目にあっていた。検察官による尋問の過程で、万年筆捜索時、ワラ半紙に鉛筆で書かれた見取図を紛失するという失態が明るみにされるのだ。見取図とは石川被告の自供による万年筆のあり場所が書かれた紙であり、その性質上、重要な位置づけにある品と考えられる。結局この見取図は石川被告の弁護人により警察へ届けられ一件落着する。小島証人:「あとで、その捜査が終わって刑事部長に怒られまして、お前とんでもないものをよそへ忘れて来たなということでありまして(以下略)」と語る。この後、再び登場した石田弁護人に「そのメモ(見取図)は、忘れて置いて来たりしておりますから、あまり重要だとは考えておらなかったわけでしょう」となじられるのであるが、こうして小島証人を眺めていると、裁判に関係する人々、それも敵味方関係なく、皆に吊るし上げを喰らっている印象が強いのである。さて尋問者が石田弁護人から井波裁判官に移り、ここでも責めを浴びる。井波裁判官:「六月二十六日、差押に行ったときに、向こうから任意に差し出されたものを二冊持って来たと」 小島証人 :「はい」裁判官:「そうすると、そのほかに残っているかもしれないということが考えられるんだが、そういうことは考えなかったのか」証人:「私は、先ほども申し上げましたように内容そのものが“リボンちゃん”であるか・・・」裁判官:「だけど、向こうが出すに任せている捜査方法は、普段やっているのです( ここは前後の文脈から見て疑問形で語られたと思われる: 筆者注)」証人:「だけどあれは任意提出ですから」裁判官:「任意提出にしても、捜索だろう」証人:「捜索です」裁判官:「だから、自分でやれるのに、任意に出したやつだけ持って来たということなんですが、普通そういう捜索方法をやってますか」証人:「自供の場合は、やってます」裁判官:「自分でやれるところをそういうふうにやるんですか、部屋を捜せるでしょう」証人:「しかし、人数が三人きり・・・」裁判官:「それはさっき聞いたが、何人であろうと、やればやれるわけですね、それをやらなかった理由というのは原審の供述でも、家族が大分興奮しておって、いろんな雑言を言われたということも言っておるが、雑言を言われて、とてもやりにくいから向こうが言うままに任意提出したものだけを持って来たというわけですか、というばかりじゃないですね。ちょっと、何故もっと徹底的にやらなかったということを疑う人もあるんじゃないですか」証人:「端的に言うならば結局、被疑者の自供だけの押収ということをそのときにやったんだとこういうふうに解釈しました」裁判官:「いや、だけど、捜索の目的とか、何とか書いてあるんだからね、それは、捜索をする人がやろうと思えばいくらでもできることなんだからね、単に向こうから差し出しこれでございと、言ったものだけを受け取って引き上げてくるのは、少し徹底を欠くんじゃないか、ということを、弁護人は言っているわけだけど、だから大した重きを置かない、という理屈があるなら別ですがね、それから原審から言っているように相手の家族や何かの態度か、あまりに興奮して   ・・・」証人:「そういうことは些細なことですがねそれよりももっと被疑者の言うことが本当のことだと思ったわけです」裁判官:「被疑者が、そこにあるということを言って、今聞けばメモに書いてある、これはあることは間違いないと確信したと言っておるがね捜査員というものは、そんな被疑者の言うことをすぐ確信するものですか、どうして確信の理由が出てくるのか」・・・。井波裁判官は自身が納得できるまで尋問を繰り返すのであった。(以上、第二審640丁より)  

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(無実の獄25年 狭山事件写真集 : 部落解放同盟中央本部中央狭山闘争本部編 : 解放出版社より引用)