アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 371

昭和四十三年、東京高等裁判所狭山事件第二審が進行する中、被告人及び弁護団より「事実取調請求書」が提出され、二十一通に及ぶ石川一雄被告人の供述調書が証拠として請求された。その立証趣旨は「被告人石川一雄に対する取調状況および同人の供述経過を明らかにする」ためである。請求した供述調書は目録通り二十一通であることを確認し、前回まで引用して来たわけだが、途中で調書の落丁問題が発生、これに釣られて我が脳ミソも混乱し、結果として目録とのズレが起きてしまった。そこで調書に載っている供述調書(本来なら二十一通)は全て引用しておくことにする。

【公判調書1353丁〜】供述調書 石川一雄

右の者に対する強盗、強姦、殺人、死体遺棄被疑事件につき、昭和三十八年七月八日川越警察署分室において、本職は、あらかじめ被疑者に対し、自己の意思に反して供述をする必要がない旨を告げて取調べたところ、被疑者は任意左のとおり供述した。

私は狭山署に泊められていた頃は、何とかして逃れたいという気持ちと、家の者に申し訳ないから、とても生きていられないという気持ち等が入り混じって、ごちゃごちゃした気持ちでいました。仮に逃れられたとしても一旦犯人として捕まった以上、家の者に顔向け出来ないという気持ちから、死んでしまいたい様な気持ちになった事もあり、そんな時は、留置場の板に自分の名前書いてその上に死んだことを表す✖️を書いたりしました。しかし何とか逃れたいという気持ちの方が強かったので面会に来てくれた弁護士さんが調書には署名しなくてもいいんだよと云ってくれたりしたのを聞いて、検事さんの調書に名前を書かなかったりしました。しかし今ではすっかり素直な気持ちになって、ありのままの事を話し、お裁きを待っています。供述人  石川一雄

右のとおり録取し読み聞かせたところ誤りのない旨申立て署名指印した。

浦和地方検察庁  

検察官検事・河本仁之、検察事務官・橋上  英。

*昨日、拙ブログに載せた写真だけでは説明不足であったので、ここに補完しておく。

狭山事件再審弁護団、解放同盟、その他の支援団体により事件の再現実験が行われている(残念ながら実験を行なった日付は不明である)。石川一雄被告人の第一審における供述の中に、身代金を取りに佐野屋(酒類販売業)付近に出向いた旨の自白があり、そこで語られた状況が、実は身代金を届けに佐野屋前に立った被害者の姉、登美恵さんの供述と食い違いを見せるのである。これを明らかにする為、天候や気象の条件を同一にして再現実験を行なった。

付近には街灯もなく、何も見えないほど暗かった。実験結果として、事件当夜、実際に佐野屋前に立った被害者の姉、登美恵さんの供述通りの状況であり、石川一雄被告人の自白にある「暗闇の中、女の人が立っていた」という判別は出来ないことが実証された。写真二点は「無実の獄25年 狭山事件写真集  部落解放同盟中央本部中央狭山闘争本部編  解放出版社」より転載。