アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 1144

写真の万年筆は事件後、警察による被告人方の家宅捜索により発見されたもの。これは被害者が所持していた万年筆とされているが、しかしこの万年筆の指紋検出はされておらず、さらにはこの万年筆の内部に残留していたインクは被害者が常用していたインクとはその成分が異なるという鑑定がなされ、これは証拠としての信憑性はかなり疑わしいと指摘されている。

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『原文を読みやすくするために、句読点をつけたり、漢字にルビをふったり、中見出しを入れたり、漢字を仮名書きにしたり、行をかえたり、該当する図面や写真を添付した箇所があるが、中身は正確である』

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【公判調書3541丁〜】

                                 証人尋問調書

証人=若狭良江(二十五歳)

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橋本弁護人=「事件のあったのは五月一日なんですがね、この日、調理の時間というのがあったのを覚えていますか」

証人=「ちょっと覚えてないです」

橋本弁護人=「あなた方の授業に調理という時間があるんですね」

証人=「はい」

橋本弁護人=「料理を作ってみんなで食べるようなこともあったんですね」

証人=「はい、ありました」

橋本弁護人=「五月一日に調理の時間があって、作ったものを食べたかどうか、覚えてないですか」

証人=「ちょっとわからないですけど」

橋本弁護人=「思い出せない」

証人=「はい」

橋本弁護人=「クラスメイトはそれぞれクラブ活動をやっておったようですが、あなたはどんなクラブに入っていましたか」

証人=「私は卓球のクラブに入っていました」

橋本弁護人=「善枝さんも卓球のクラブのようですね」

証人=「ちょっとはっきりわかりませんけど」

橋本弁護人=「善枝さんと卓球をしたような記憶はないですか」

証人=「まだ入って間もなくだったので覚えておりません」

橋本弁護人=「五月一日にも放課後クラブ活動として卓球をやったようですが、あなたもやりましたか」

証人=「ちょっと覚えておりませんけど」

橋本弁護人=「善枝さんが行方不明になって、事件になってから非常に大きな問題になりましたね」

証人=「はい」

橋本弁護人=「警察官からあなたが質問を受けたようなことがあるでしょう」

証人=「別にそういったようなことはないです」

橋本弁護人=「一度もない」

証人=「はい」

橋本弁護人=「たとえば今、私が見せた身分証明書とか、手帳のこととか、財布のこととか、そういう善枝さんの持ち物について質問を受けたことはないですか」

証人=「はい、別にないです」

橋本弁護人=「そうすると、警察官から供述調書を作成されたこともない」

証人=「どういったことでしょうか」

橋本弁護人=「あなたの話したことを警察官が紙に書いて、そしてあなたに読んで聞かせて、間違いがなければあなたがそれに署名捺印をすると」

証人=「そういったこともございません」

橋本弁護人=「一度もないですか」

証人=「はい」

橋本弁護人=「万年筆に使うインクについて質問されたことはないですか」

証人=「ちょっと覚えてないです」

橋本弁護人=「善枝さんが万年筆を持っていたのはどうです」

証人=「ちょっとわかりません」

橋本弁護人=「善枝さんが当時どういう万年筆を使って、どういうインクを使っていたかということで、クラスメイトに警察官が質問をしているんですがね、そういう質問を受けたことはないんですか」

証人=「ちょっと私覚えてないんですけど」

橋本弁護人=「善枝さんが万年筆を使っていたかどうかということは覚えてないですか」

証人=「科目にはペン習字というのがありましたけど」

橋本弁護人=「ペン習字は万年筆でやりましたか」

証人=「万年筆でやっていました」

橋本弁護人=「(東京高等裁判所昭和41年〈押〉第187号の42号の万年筆を示す)そういう万年筆を警察官から見せられて質問を受けたことはございませんか」

証人=「ちょっとだいぶ前のことなので覚えておりませんけど」

橋本弁護人=「そういうのを見ても思い出せないですか」

証人=「でも、何か使っているのをちらっと見たことがあるような記憶も・・・・・・」

橋本弁護人=「善枝さんが万年筆を使っているのを見たことがある」

証人=「はい」

橋本弁護人=「その万年筆について、あなたはこういう万年筆を見たことがあるかどうか、見たとすればどこで見たかというような質問を受けたことはないですか、警察官から」

証人=「ちょっと覚えておりません」

橋本弁護人=「あなたも当時、万年筆を使っていましたか」

証人=「はい、持っていました」

橋本弁護人=「あなたの使っていた万年筆は、どこの製品ですか」

証人=「パイロットだと思います」

橋本弁護人=「使っていたインクは」

証人=「青です」

橋本弁護人=「どこの会社のインクですか」

証人=「パイロットです」

橋本弁護人=「そうすると、パイロットのブルー・ブラックというやつですか」

証人=「ちょっとそこまでは」

橋本弁護人=「それとも、単にブルーですか」

証人=「はい、そうです」

橋本弁護人=「単に青」

証人=「はい」

橋本弁護人=「そういうことについて、警察官から聞かれなかったですか」

証人=「ちょっと私覚えておりませんけど」

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宇津弁護人=「あなたは卓球クラブに入っていたそうですね」

証人=「はい、そうです」

宇津弁護人=「三十八年の四、五月当時、卓球クラブのメンバーは何人だったですか」

証人=「ちょっと、はっきり今わかりません」

宇津弁護人=「全体のクラスで十七名ですね」

証人=「はい」

宇津弁護人=「そのうち卓球クラブに所属したのはおよそ何人くらいか」

証人=「ちょっと覚えておりませんけど」

宇津弁護人=「中田善枝さんがいなくなった、あるいは、実は殺されていたということで、クラスの中で大変な騒ぎになったことがありますね」

証人=「はい」

宇津弁護人=「そういうクラスの中でのいろんな騒ぎのことはあなた覚えているでしょうね」

証人=「はい、覚えています」

宇津弁護人=「いなくなったというのは五月一日であるということも、あなたは知っているわけですね」

証人=「はい、それは知っています」

宇津弁護人=「その日にあなたが卓球をやったかどうかは記憶ありますか」

証人=「ちょっとその日は覚えておりませんけど」

宇津弁護人=「あの日、中田善枝さんが卓球をやっていたとか、やっていなかったとか、そういう記憶はどうですか」

証人=「ちょっとわかりません」

宇津弁護人=「そのいなくなったという五月一日の日に、あなたは中田善枝さんとおしゃべりをした記憶はありますか」

証人=「ちょっともう何年も経っておりますし、私覚えておりませんけど」

宇津弁護人=「あなたはここにいらっしゃる前に、証言台に立つ時にどうすればいいのかということを誰かに聞いて来たことがありますか」

証人=「別に、うちの主人に聞いたことはありますけど、ただ素直に知っていることだけ答えて来なさいと言いました」

宇津弁護人=「何でも知らんと言えばいいんだというようなことを言われましたか」

証人=「別にそういうことは言われませんでした」

宇津弁護人=「先ほど警察のほうから万年筆とか、いろんなことを聞かれたことはないと言いましたが、受け持ちの先生から善枝さんの持ち物について何か尋ねられたことはありますか、当時」

証人=「別にないですけれども」

宇津弁護人=「あなたは卓球部に属していたらしいけれども、三十八年の四月、五月当時、実際に卓球をやっておりましたか」

証人=「やってました」

宇津弁護人=「三十八年の四月、五月の頃は、あなたはだいたい毎日やっておりましたか」

証人=「毎日はやっておりませんけど」

宇津弁護人=「どのくらいの程度やっていましたか」

証人=「週に三回くらいですね」

宇津弁護人=「何曜日はやるが、何曜日は事情でやれないんだというようなことはあったんですか」

証人=「やっぱり月水金とかいろいろ決まっていたと思いますけど」

宇津弁護人=「何曜日に練習することになっていましたか」

証人=「その曜日はちょっと覚えていませんけど、一週間に三回とか、そういったように決まっていたとは思います」

(続く)