アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 1146

『原文を読みやすくするために、句読点をつけたり、漢字にルビをふったり、中見出しを入れたり、漢字を仮名書きにしたり、行をかえたり、該当する図面や写真を添付した箇所があるが、中身は正確である』

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【公判調書3547丁〜】

                                 証人尋問調書

証人=若狭良江(二十五歳)

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山梨検事=「五月一日の放課後に、あなた方新入生に対して運動服の配付ということが行なわれたらしいんですがね、トレーニングシャツ」

証人=「はっきりとした日は覚えていませんけど」

山梨検事=「そういうことがあったことは覚えていますか」

証人=「はい、あったことは覚えています」

山梨検事=「で、何か中学校の時の服、そのままでもいいんだと、交替に使ってもいいんだというような、そういうことがあったということは覚えていますか」

証人=「はい、そういうことは覚えておりますけど」

山梨検事=「それが記録によると五月一日になるんですがね、担任は宇賀神先生ですか」

証人=「はい、そうです」

山梨検事=「そうすると、その模様はどの程度記憶があるんですか」

証人=「まだ入ったばかりで、嬉しくて喜んで卓球をしたなんていうのは分かってますけど」

山梨検事=「で、その服の配付を受けたという記憶はあるわけですね」

証人=「はい、はっきり日にちは覚えていません」

山梨検事=「その日が記録によると五月一日なんですけどね、で、当然、善枝さんもそれなんかには残っていたことになるんでしょうか」

証人=「・・・・・・・・・」

山梨検事=「そこら辺のことは分からないんですか」

証人=「はい、ちょっとよく分かりません」

山梨検事=「あるいは、そういうのはもらわないで帰る子もいたですか」

証人=「特別の用事のない限りはみんな残っていたと思うんですけどね」

山梨検事=「それから調理があれば、その調理のあとで、何かその調理の計算というのがあるんですか」

証人=「・・・・・・それはいくら使ったかというのは計算をしたと思いますけど」

山梨検事=「朧(おぼろ)げながらの記憶でもいいんですが、五月一日に善枝さんは何時頃下校したんですか」

証人=「ちょっと分かりません」

山梨検事=「まあ正規の授業だと、六時限というと二時三十分になるんですね」

証人=「はい」

山梨検事=「だからそれ以後、たとえば今の運動服の配付があったり、調理の計算があったり、一体その問題の事件のあった日、善枝さんが何時に学校を出たのかということが、当然その当時、警察辺りの調べがあったんだろうと思うんですけど、覚えてませんか」

証人=「ちょっと分かりません」

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宇津弁護人=「調理の時間というのは、お料理を作る時間のほかにカロリー計算という、いわば理論もあるわけだね」

証人=「はい、そういうのは授業でありました」

宇津弁護人=「そのほかに放課後、今日あった調理の時間に関する何か仕事がありますか」

証人=「放課後はちょっとないと思います。その時間の終わりにやったと思うんですけど」

宇津弁護人=「つまり調理の時間内に、この料理を作るためにいくら材料を使ったかということをやるんでしょう」

証人=「そうです」

宇津弁護人=「放課後は関係ないね」

証人=「放課後は関係ないです」

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山梨検事=「あるいは全部でなくて、係とか、そういうのがいて、その人が計算するということはあるんですか」

証人=「買い物当番というのがその都度あるんです。その人がやったと思うんですけど」

山梨検事=「五月一日は誰が買い物当番だったかということはちょっと分からないんですね」

証人=「はい、分かりません」

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福地弁護人=「先ほど検察官の質問に対してあなたは正確な日にちは覚えていないけれども、運動服の配付を学校で受けたという風に言いましたね」

証人=「はい」

福地弁護人=「それを着てクラブ活動なんかをやるんですか」

証人=「はい、そうです」

福地弁護人=「その配付を受けた運動服は学校で貰って、それをうちへ持って帰ったという記憶ですか」

証人=「洗濯や何かでは持って帰りましたけど」

福地弁護人=「それ以外の時は」

証人=「それ以外はちゃんと自分で持っておりました」

福地弁護人=「自分で持ってるというのは、どこに持ってるんですか」

証人=「ロッカーです」

福地弁護人=「自分のロッカーがあるんですか」

証人=「はい」

福地弁護人=「それは各人にあるんですか」

証人=「はい、そうです」

福地弁護人=「どこにあるんですか」

証人=「クラブのロッカーがあるんですけど」

福地弁護人=「学校で支給を受けたらすぐ、普通はロッカーに仕舞うわけですか」

証人=「そういう風に決まってはいませんけど」

福地弁護人=「毎日学校の行き帰りに持って行って持って帰るというようなことはないんですか」

証人=「ちょっとそこまではよく覚えていません」

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裁判長=「その学校のクラブというのは、どんなクラブなんですか」

証人=「卓球とか、バレー部ですね、私、運動のほうしかちょっと」

裁判長=「運動のほうじゃないものもあるんでしょう」

証人=「はい」

裁判長=「全部で五つか六つくらいはあるんですか」

証人=「はい、あったと思います」

裁判長=「十七名の者が誰も入らないような部もあり得るわけだね」

証人=「はい、あると思います」

裁判長=「あなた方、十七名の者がだいたい数多く入った部というのは、バレーボール、卓球などですか」

証人=「やっぱり運動のほうをよくやったと思いますけど」

裁判長=「十七人の中で、あなたは善枝さんとは比較的ほかの人より話合いをするほうのグループであったかどうか、という点はどうですか」

証人=「あまり、まだ入って、慣れておりませんでしたから」

裁判長=「友達とも言えない程度ですか」

証人=「はい、そうです。ただ何か用事があったら話をする程度です」

裁判長=「そうすると、日常の行動についてお互いに注目し合うというような間柄じゃないわけですね」

証人=「はい、そういったことはございません」

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昭和四十七年八月二十一日   東京高等裁判所第四刑事部

                                                      裁判所速記官  重信義子

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