アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 1140

『原文を読みやすくするために、句読点をつけたり、漢字にルビをふったり、中見出しを入れたり、漢字を仮名書きにしたり、行をかえたり、該当する図面や写真を添付した箇所があるが、中身は正確である』

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【公判調書3529丁〜】

                                 証人尋問調書

証人=鎌田芳子(二十四歳)

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橋本弁護人=「先ほど私が言いました、七月三日付のあなたの調書を見ますと、何かあなたは善枝さんから手帳を見せてもらったような供述をしておられるんですがね、それにメモ用紙が入っていたようだというようなことを言っておられるんですよ。そうするとあなたは善枝さんからそういうものを以前、見せられたことがあるんじゃなかろうかと思われるんですが」

証人=「見せてもらったかも知れませんけど・・・・・・」

橋本弁護人=「しかし、思い出せない」

証人=「よく覚えてません」

橋本弁護人=「手帳というものは、みんな持ってるんですか」

証人=「あの頃はみんな、おしゃれみたいなもので、きれいな手帳をよく持っていました」

橋本弁護人=「善枝さんがお金をどこに入れて、物を買ったりする時にどこから取り出すかということは、見たことないですか」

証人=「制服にポケットがありますから、よくそのポケットに私達は入れてたんですけど、善枝さんもそうじゃないかと思います」

橋本弁護人=「制服の上着のポケットですね」

証人=「はい」

橋本弁護人=「上着のポケットに財布を入れておくんですね」

証人=「ええ」

橋本弁護人=「制服というのは決まっているんですか」

証人=「決まっておりました」

橋本弁護人=「学校の制服ですね」

証人=「はい、そうです」

橋本弁護人=「そのポケットに入るくらいの大きさの財布じゃないと困るわけですね」

証人=「ええ。でも、かなり大きいポケットでしたから」

橋本弁護人=「善枝さんがそういう制服のポケットに財布を入れていたというのを見たことないですか」

証人=「一度みんなで遊びに行った時は、ポケットに入れてたような気がします」

橋本弁護人=「遊びに行ったというのは・・・」

証人=「天覧山に登ったんです。六人くらいで登ったと思います」

橋本弁護人=「天覧山に登って、何か買い物をしたんですね」

証人=「食事か何かしたと思いますけれども」

橋本弁護人=「その時、善枝さんが上着のポケットから財布を出してお金を払ったようだと」

証人=「ええ」

橋本弁護人=「それは、いつ頃のことですか」

証人=「まだ学校に入学したての頃なんです」

橋本弁護人=「三十八年の四月・・・」

証人=「から、五月までの間だったんですけど」

橋本弁護人=「入学したのは」

証人=「四月の八日か七日だと思います」

橋本弁護人=「その天覧山で善枝さんが出したという財布はどんな財布か、思い出せないですか」

証人=「忘れました」

橋本弁護人=「空色の、縦が十センチくらいで、横が五センチくらいの財布を持っていたんだと言う人もいるんですけど。善枝さんが事件当時持っていたかどうか知りませんけれども」

証人=「・・・・・・・・・覚えてません」

橋本弁護人=「五月一日、事件のあった日ですね、授業は六時限目まであったんですね」

証人=「ありました」

橋本弁護人=「あの日、お昼にあなた方生徒が食事を作ったということですね」

証人=「調理の時間があったら作ったと思います」

橋本弁護人=「調理の時間があったようですが」

証人=「でしたら作ったと思います」

橋本弁護人=「それ、覚えてないんですか」

証人=「覚えてません」

橋本弁護人=「カレーライスを作ったようなんですがね、それで、それをみんなで食べたようですけれども」

証人=「よく覚えてません」

橋本弁護人=「調理の時間というのは毎週あるんですか」

証人=「毎週ありました」

橋本弁護人=「毎週何曜日と何曜日、というように決まっているんですか」

証人=「決まっていました」 

橋本弁護人=「週に何回くらいあったんですか」

証人=「一回だったと思いますけど」

橋本弁護人=「週一回ですか」

証人=「ええ」

橋本弁護人=「学校に入ったのは四月の七日か八日で、事件は五月一日ですね」

証人=「はい」

橋本弁護人=「善枝さんとあなたが付き合った時間というのはあんまりないわけですね」

証人=「はい」

橋本弁護人=「五月一日に作ったかどうかは別にして、入学してから五月一日に善枝さんの事件が起きるまでの間に、調理の時間に食事を作ったということを覚えていますか」

証人=「覚えています」

橋本弁護人=「何度くらいありましたか」

証人=「最初の時は食事を作らないでカロリー計算の仕方を教えてもらって、次に二回くらい作ったと思いますけど」

橋本弁護人=「何と何を作ったか、覚えてませんか」

証人=「忘れました」

橋本弁護人=「五月一日にカレーライスを作ったらしいんですがね、そういう資料があるんですが、思い出せませんか」

証人=「・・・・・・・・・・・・」

橋本弁護人=「そうすると、カレーライスを食べたかどうかは思い出せないということですね」

証人=「はい」

橋本弁護人=「五月一日の日、あなたは善枝さんと何か特別話をしたようなことはありませんか」

証人=「特別というほどでもないんですけど、二、三人くらいで話した時に、きょうは誕生日だから、早く帰りたいというようなことを言っていました」

橋本弁護人=「あなた自身がその五月一日の日に学校を出た時間は覚えていませんか」

証人=「覚えていません」

橋本弁護人=「放課後、学校で何かしたことありますか」

証人=「クラブに入ってましたので、運動のほうをよくしていました」

橋本弁護人=「五月一日は、そうするとクラブ活動をしたんですか」

証人=「よく覚えていません」

橋本弁護人=「今あなたは善枝さんが誕生日だという話をしましたね」

証人=「はい」

橋本弁護人=「それは善枝さんの口から聞かれたんですか」

証人=「はい、聞きました」

橋本弁護人=「それは放課後ですか、それともそれより前ですか」

証人=「休み時間だったと思いますが、何時間目の休み時間かは思い出せません」

橋本弁護人=「善枝さんが帰るのを見ていますか」

証人=「一番先に出たので、私達は何かしていたと思います」

橋本弁護人=「善枝さんが一番最初に出たんですか」

証人=「はい、早く帰りたいと言っていましたから」

橋本弁護人=「教室を一番最初に出て行った」

証人=「はい」

橋本弁護人=「もちろん授業が終わっての話ですね」

証人=「はい」

橋本弁護人=「終わってからすぐ」

証人=「だったような気がします」

橋本弁護人=「それきり戻って来ませんでしたか」

証人=「戻って来ません」

(続く)