アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 1139

『原文を読みやすくするために、句読点をつけたり、漢字にルビをふったり、中見出しを入れたり、漢字を仮名書きにしたり、行をかえたり、該当する図面や写真を添付した箇所があるが、中身は正確である』

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【公判調書3524丁〜】

                                 証人尋問調書

証人=鎌田芳子(二十四歳)

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裁判長=「前に警察官に調べられたのは、いつ頃のことか覚えておりますか」

証人=「事件が発生して石川一雄が捕まる前に学校で一回と、それから捕まったあとで、私善枝さんに本を貸してあったんです。確か女学生向けの本だったと思うんですけど、その本に私の名前が書いてあったので、どういう経路で貸したかと言われたんです」

裁判長=「その二回だと思うというわけですね」

証人=「はい」

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橋本弁護人=「あなたは昭和三十八年当時、川越高等学校入間川分校の生徒だったんですね」

証人=「はい」

橋本弁護人=「善枝さんと同級生でしたね」

証人=「はい」

橋本弁護人=「中学校の時は善枝さんと同じじゃなかったんですか」

証人=「いえ、違います」

橋本弁護人=「そうしますと、三十八年四月に入間川分校に入学をして、それから、五月一日に善枝さんが被害に遭うまでの間、同級生であったと」

証人=「はい、そうです」

橋本弁護人=「同級生は全部で十七人だったそうですね」

証人=「はい」

橋本弁護人=「まず最初に、善枝さんの持っていた手帳についてお聞きしたいんですが、今記憶に残っておりますか」

証人=「覚えてません」

橋本弁護人=「あなた方は学校に入ると、学校から身分証明書をもらいましたね」

証人=「はい」

橋本弁護人=「あなたはその身分証明書を、どんな風にして持っていましたか」

証人=「鞄のすみにいつも入れていました」

橋本弁護人=「善枝さんがどんな風にして持っていたか、知っていますか」

証人=「知りません」

橋本弁護人=「先ほどあなたが仰った、警察官に述べたあなたの調書があるんですが、それに身分証明書のことが書いてあるんですがね、身分証明書をもらったことは間違いないんですね」

証人=「はい」

橋本弁護人=「当時、学校からもらったんですね」

証人=「はい」

橋本弁護人=「(東京高等裁判所昭和41年"押"第187号の2の身分証明書を示す) これは中田善枝さんの身分証明書ですが、あなたはそれと同様のものをもらっておって、鞄に入れて持って歩いたと」

証人=「だと思いますけれども」

橋本弁護人=「善枝さんがどんな風にして、その身分証明書を持っていたか、思い出せませんか」

証人=「わかりません」

橋本弁護人=「学校の中で、あなたの座っている席と善枝さんの席は、どんな風な関係にありましたか」

証人=「善枝さんのほうが斜め前のほうだったと思います」

橋本弁護人=「すぐ隣というわけじゃないんですね」

証人=「ええ、隣じゃなかったと思います」

橋本弁護人=「あなたの卒業した中学と、善枝さんの卒業した中学とは違うんですね」

証人=「違います」

橋本弁護人=「善枝さんは堀兼中学を卒業したそうですが、卒業の折に、下級生から手帳をもらっているらしいんですよ、卒業記念の。そういうものを善枝さんに見せてもらった記憶はありませんか」

証人=「わかりません」

橋本弁護人=「わからないということは、見せてもらったかどうか、覚えてないということですか」

証人=「ええ」

橋本弁護人=「それとも、見せてもらったことは全然ないということですか」

証人=「見せてもらったかも知れないけど忘れました」

橋本弁護人=「善枝さんとあなたの付き合いの程度はどの程度でしたか」

証人=「ただ学年が同じで、クラスが同じで、それほど仲がいいというほどでもありませんでした。普通の付き合いだったと思います」

橋本弁護人=「下校の道は違うんですか」

証人=「全然違います」

橋本弁護人=「あなたは電車通学ですか」

証人=「バス通学です」

橋本弁護人=「善枝さんの持ち物で、手帳みたいなものを持っていたらしいんですが、縦が十センチくらいで、横が六センチくらいで、ちょっと見た目にはピンク色のような、そして中学校のカラー写真が入っていたと、そういったような手帳を持っていたらしいんですが、そう言われても思い出せないですか」

証人=「思い出せません」

橋本弁護人=「善枝さんは、お金をどこに入れていたかは、どうですか」

証人=「財布じゃないかと思いますけど」

橋本弁護人=「善枝さんは被害に遭われた当時、財布を持っておられたかどうか覚えていますか」

証人=「わかりません」

橋本弁護人=「わからないというのは、覚えてないということですか」

証人=「ええ」

橋本弁護人=「何か三つ折りのできる財布のようなものを持っていたんじゃないかと思われる節もあるんですが」

証人=「わかりません」

橋本弁護人=「あなたの覚えておられる範囲で結構ですが、善枝さんの通常学校に持って行く持ち物はどんなものがありましたか」

証人=「鞄に教科書」

橋本弁護人=「そのほか、たとえば財布とか万年筆とか手帳とか、そういうもので覚えているものがありますか」

証人=「時計や万年筆は持っていたようだと思いますけど、ちょっと記憶にはないですね」

橋本弁護人=「三十八年七月三日に学校で刑事さんに会って、供述調書を取られた覚えがありますか」

証人=「その頃に聞かれたような気がします」

橋本弁護人=「場所はどこで、ですか」

証人=「学校で一回あったと思いますけれども」

橋本弁護人=「それから、もう一回あると言いましたね」

証人=「ええ」

橋本弁護人=「もう一度は、どこですか」

証人=「もう一度はうちに来られたんですけど、その時うちで、お蚕をしていて、うちの中が汚れていましたので、隣のうちで聞かれました」

橋本弁護人=「その学校で聞かれたのと、隣のうちで聞かれたのと、順序はどっちが先ですか」

証人=「学校のほうが先だったような気がします」

橋本弁護人=「学校で聞かれた時は、どんな質問をされて、どんな答えをしたか覚えていますか」

証人=「やっぱり、どういう風にして善枝さんが帰ったかとか、何かそんなようなことだったと思いますけど」

橋本弁護人=「手帳とか財布のことを聞かれた覚えはありませんか」

証人=「よく覚えてません」

橋本弁護人=「それじゃ、隣のうちで聞かれた時は、どんな質問をされたんですか」

証人=「その時には、犯人が隠していた教科書や何かと一緒に私の雑誌が出てきて、どうしてその雑誌を貸したかというようなことを聞かれました」

橋本弁護人=「先ほど言った女学生の友」

証人=「ええ、それだと思います」

橋本弁護人=「そのことについて質問された」

証人=「はい」

橋本弁護人=「その雑誌はあなたが貸したものなんですか」

証人=「はい、そうです」

(続く)