アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 1145

『原文を読みやすくするために、句読点をつけたり、漢字にルビをふったり、中見出しを入れたり、漢字を仮名書きにしたり、行をかえたり、該当する図面や写真を添付した箇所があるが、中身は正確である』

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【公判調書3545丁〜】

                                 証人尋問調書

証人=若狭良江(二十五歳)

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宇津弁護人=「あなた方三十八年度の新入生は卓球部に属したら、だいたい毎日、あるいは週のうち何日かは練習をしなくちゃならないというようなことを受け持ちとか先輩から言われていましたか」

証人=「はい、言われたと思います。部に入った限りは」

宇津弁護人=「あなたが日を決めて練習していたというのは、それは先輩なり先生の了解を得てそうしていたんですか」

証人=「やっぱりそのクラブで決まっていたと思います」

宇津弁護人=「あなたは五月一日の放課後、中田善枝さんが卓球をやっていたという記憶は全然ないわけですか」

証人=「ちょっと覚えておりません」

宇津弁護人=「行方不明になったということで、あの日善枝さんはどうだったかしらね、というようなことをクラスメイト同士で話合いをしたというようなことはありましたか」

証人=「たぶん彼女は五月一日は誕生日だと思ったんですよね、それではっきり覚えてないんですけど、ちらっと、何か今日は誕生日だから早く帰って、自分で料理を作って、それで家族と食べるというようなことを聞いたようなことを覚えております」

宇津弁護人=「あなたが直接それを聞いたんですか」

証人=「直接ではないですけど、何か友達に話したみたいなんですよね、それで聞いたんですけど」

宇津弁護人=「友達から善枝さんがそう言ったということをあなたが聞いたんですか」

証人=「はい」

宇津弁護人=「それは善枝さんが友達の誰かに話していたのをあなたが傍らで耳にしたということですか」

証人=「ちょっと聞いたんです、それは」

宇津弁護人=「友達からそう言ったよと聞いた」

証人=「はい」

宇津弁護人=「あくまで伝え聞きであるというわけですね」

証人=「はい」

宇津弁護人=「それはどういう時にそういう話を聞いたんですか」

証人=「それはもう放課後でした。帰る時ですね」

宇津弁護人=「五月一日にそういうことをあなたは伝え聞きしたということですか」

証人=「はい、そうです」

宇津弁護人=「誰から聞いたような記憶ですか」

証人=「ちょっとそれはわかりませんけど」

宇津弁護人=「ということは、あなたの記憶では誕生日だからというので善枝さんが早く帰ったような記憶がするんですか」

証人=「はい」

宇津弁護人=「早く帰ったという意味ですがね、授業を早びけしたという意味じゃないですね」

証人=「早びけじゃないです」

宇津弁護人=「正規の授業が終わってからすぐに、という意味になるんですか」

証人=「はい、そうです」

宇津弁護人=「あなた自身、今そういう感じを持っているわけですか」

証人=「はい、それはちょっと覚えております」

宇津弁護人=「そこのところ、どんな風に覚えておりますか」

証人=「ただ誕生日だから早く帰って料理を作って家族とみんなで食べるということだけ」

宇津弁護人=「そういうことをあなたは友達から聞いたわけですね」

証人=「はい」

宇津弁護人=「そうして、正規の授業が終わってからすぐ帰ったというような記憶まであるんですか」

証人=「はい、そうです」

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石田弁護人=「善枝さんとあなたはよく話合ったりしたことがありましたか」

証人=「・・・・・・よく覚えておりません」

石田弁護人=「何か印象に残るような話合いというものは別段したという記憶はないですか」

証人=「まだ学校に入ったばかりで、あまり慣れておりませんでしたから」

石田弁護人=「何か善枝さんから男の友達からきた手紙を見せられたことはありませんか」

証人=「全然ございません」

石田弁護人=「あなたは検察官に調べを受けたことがありませんか」

証人=「覚えておりません」

石田弁護人=「河本検事の調べを受けたことはない」

証人=「ちょっと、前のことはよくわかりません」

石田弁護人=「警察官にも聞かれたことないと言ってましたけど、何か学校へ、調べる仕事の人が来て聞くとか、あなたのうちに警察官なりあるいはそのほか調べる仕事の人がみえて、話を聞いたりしたことはあったんではないですか」

証人=「一度、美しい十代という雑誌の方が家にみえたことがあります。何か、聞いた内容はよく覚えておりませんけど私自身も本に写真が出たことは覚えております」

石田弁護人=「何か供述調書という、調べる人があなた方の話を聞いて、それをまとめて文にして、読んで聞かせてくれて、名前を書いてくれというようなことを言われたことはないですか」

証人=「ちょっと覚えておりません」

石田弁護人=「さっきの善枝さんから男の友達からもらった手紙を見せられたことがあるんじゃないかという問いに対しての答えは、そういう風に見せられたか見せられたことがないか、記憶がないという意味ですか」

証人=「はい、そうです」

石田弁護人=「そういうことはないという趣旨なんですか」

証人=「はい」

石田弁護人=「ところがこれは検察官の調書があるんで、それにはそう書いてあるんですがね」

証人=「私自身、全く覚えはありません」

石田弁護人=「あなたが話したことと。聞かれたことと」

証人=「・・・・・・・・・」

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(続く)