アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 983

【公判調書3071丁〜】

               「第五十七回公判調書(供述)」(昭和四十七年)

証人=諏訪部正司(四十八歳・浦和警察署刑事第一課長)

                                           *

橋本弁護人=「それではこの事件に関連する物の出所とか使用方法とか、そういったことについてあなたが捜査を直接担当したことはありますか、雑誌りぼんについてあなたが捜査したのは分かっておりますからそれは結構です。それ以外について」

証人=「物というのはどういう」

橋本弁護人=「たとえば鞄とか腕時計とかタオルとか手拭いとか荒縄とか、いろいろありますね」

証人=「証拠品という意味じゃなく」

橋本弁護人=「裁判所に証拠品となっているかどうかは別として、被疑者が遺留したものと思われる物、あるいは被害者の被害品と思われる物、そういったものです」

証人=「大体まあ、その物々という言葉がちょっとどうもあれですね、私共まあ誤解されがちのような感じがするんですが、具体的に何かまあ、たとえば本件に関係のないものも物と言うのか、直接関連したものであるか、そういった点について明確でないものですから」

橋本弁護人=「本件に関係したものだけ聞いてます」

証人=「記憶ありません」

橋本弁護人=「たとえば被害者の体にタオルがついておったことは知っておるでしょう」

証人=「知っております」

橋本弁護人=「で、このタオルがどこから出てきたものかという捜査をあなたはしたことはないんですか」

証人=「捜査員から復命は聞いたことがあります」

橋本弁護人=「それはタオルについてね」

証人=「日本手拭いですか」

橋本弁護人=「あなた自身が捜査に加わったわけではない」

証人=「ええ、報告を聞く程度ですね」

橋本弁護人=「私が聞きたかったのはあなた自身が、たとえば聞込みをしたり、調査に行ったり、そういうことで捜査したものが」

証人=「まあ、ほとんどやってないです」

橋本弁護人=「記録を見ますと六月十六日に再逮捕状の請求を小川簡裁にしておりますね」

証人=「はい」

橋本弁護人=「あなた方内部で、再逮捕をしようということに決定したのはいつですか」

証人=「その点は上司が判断したと思います。いわゆる中刑事部長、当時の将田一課長、これは私共にはほとんどと言っていいくらい聞きませんので責任ある証言は出来ません」

橋本弁護人=「あなた自身は、それでは再逮捕をするという決定には携わらなかったわけですね」

証人=「そうです」

橋本弁護人=「ただ結論だけを聞かされたわけですね」

証人=「はい」

橋本弁護人=「その結論を聞いたのはどういう風になるんですか」

証人=「私共が保釈釈放指揮が出ると、出ないと思っていたわけですね」

橋本弁護人=「保釈が」

証人=「はい。たまたま出たということで。その程度の、その時点ですね」

橋本弁護人=「そうすると、六月十七日に再逮捕の逮捕状を執行した、その日ということになりますね」

証人=「その前日あたりに聞いてますね」

橋本弁護人=「六月十六日ということになりますね」

証人=「そうだと記憶しておりますね」

橋本弁護人=「そうしますとあなたはその再逮捕の決定に携わらなかったということになりますと、どういう証拠が新たに加わったから再逮捕をしようということになった、ということについてはあなた自身は分からんということになりますか」

証人=「そうですね、記憶ないです」

橋本弁護人=「五月二十三日が第一次逮捕ですね。そして六月十七日が再逮捕になるんですが、この期間に、五月二十三日から六月十七日までの間に、容疑を一層強めるような新たな証拠は何か発見されたんでしょうか、あなたの伝聞した範囲でも結構ですが」

証人=「恐らく筆跡鑑定、足跡等でしょうか、ちょっとはっきりしません」

橋本弁護人=「これはあなたの推測ですか」

証人=「そうですね」

                                            *

橋本弁護人=「五月二日の夜のことですが、この日の状況については刻々あなたの方に報告があったわけですか」

証人=「はい」

橋本弁護人=「で、逃走されましたね」

証人=「はい」

橋本弁護人=「逃走されてどのくらい経ってからあなたの方に報告があったんですか」

証人=「十二時ちょっと過ぎに犯人が出て来まして、そのあと0時二十分か二十五分と記憶しております」

橋本弁護人=「報告があったのが」

証人=「はい」

橋本弁護人=「それに対してどういう指示を出したんですか」

証人=「たまたま中刑事部長当時、それから署長あたりもいましたが、これが狭山署にいまして私もいたわけです。五、六人でその電話を受けてから直ちに佐野屋へ向かって自動車で出発しております」

橋本弁護人=「出発する前に具体的に部下に対する指揮はしているんですか」

証人=「現地に山下警部、大谷木警部が行っておりましたので私は直接は指揮しないと」

橋本弁護人=「そうすると現地の指揮はその両警部に任せておったということですか」

証人=「ということです」

橋本弁護人=「その犯人が現われる前に怪しい通行人は警察の検問に引っかからなかったですか、そういう点についての報告はありましたか」

証人=「ありませんですね、一件くらい何かあったということを聞かされましたけど、ちょっとその後の記憶はありません」

橋本弁護人=「その引っかかったという人は徒歩で通行した者ですか、それとも車ですか」

証人=「ちょっとその点記憶はないですね」

橋本弁護人=「石田一義という人を知ってますね」

証人=「はい」

橋本弁護人=「石田一義という人がその日、警察の検問で止められて質問されたということは知ってますか」

証人=「ちょっと忘れました」

橋本弁護人=「町田忠治という人を知ってますか」

証人=「はい」

橋本弁護人=「家も知ってますか」

証人=「はい」

橋本弁護人=「あそこの所に警察官が配置されておりましたね、配置計画書によれば」

証人=「はい」

橋本弁護人=「これは最終的な配置計画書でもあそこには警察官は配置されておったんですね」

証人=「はい」

橋本弁護人=「二名ですか」

証人=「二名と記憶しております」

橋本弁護人=「それから権現橋の所にも警察官が配置されておりますね」

証人=「はい」

(続く)

図面は佐野屋張込み時における、警察官らのおおよその配置地点。