アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 1081

『原文を読みやすくするために、句読点をつけたり、漢字にルビをふったり、中見出しを入れたり、漢字を仮名書きにしたり、行をかえたり、該当する図面や写真を添付した箇所があるが、中身は正確である』

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【公判調書3359丁〜】

「第六十一回公判調書(供述)」昭和四十七年六月十五日

証人=中田健治(三十四歳・農業)

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橋本弁護人=「五月一日の朝、登美恵さんが掃除をしたんですね、庭先を」

証人=「はい」

橋本弁護人=「当時あなたの家の庭先というのは地面がむき出しになっているものですね」

証人=「はい」

橋本弁護人=「紙切れやなんか落ちていると目立ちますか」

証人=「目立ちます」

橋本弁護人=「五月二日朝早く起きて庭先に出たあなたとしては、あれ以外にも紙切れが落ちてれば多分見つけるでしょうね」

証人=「はい、見つかる状態だったと思います」

橋本弁護人=「一審の証言によると、足跡やなんかを捜そうと思って細かく家の周辺を調べたと言ってますね」

証人=「はい、見回しました」

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山梨検事=「今の紙片に関連してですけれども、先ほども言われたように封筒はもう五月一日の晩に交番に届けたと言いましたね」

証人=「はい」

山梨検事=「だからこの小紙片が封筒のどこに当てはまるか、突き合わせというのはあなたはやったことはあるんですか」

証人=「いや、出来ない状態でした。警察へ提出したまんまですから」

山梨検事=「警察に調べを受けてる段階ではどうですか。突き合わせをしたことありますか」

証人=「いえ、自分はやったことないです」

山梨検事=「警察は別ですよ、あなたが取調べを受けてる段階辺りで警察に示されて突き合わせをしたことありますか」

証人=「ありません」

山梨検事=「検察庁ではどうですか」

証人=「あんまりそういったことは、細かくは言われませんでした」

山梨検事=「全然突き合わせなどということはやったことはなかったということですね」

証人=「はい」

山梨検事=「現物を再び見たのは公判の時に見たわけですか」

証人=「そうです。刑事さんに家から渡して、その時の公判まで全然何もそれについては聞かれたことはありません。ないように記憶しておりますが」

山梨検事=「見せられたということも」

証人=「はい」

山梨検事=「それから、先ほどのビニール風呂敷の件ですがね、これはまあ、あなたに記憶を喚起するために見て頂きたいと思うんですけれども、五月五日付であなたの名前で確認上申書というのが出ているんですが、ちょっと内容をよく読んでみて下さい」

山梨検事=「(検察官手許の昭和三十八年五月五日付中田健治の押印のある確認上申書 狭山署助勤警部補遠藤三 代筆のものを示す) 先ほどから弁護士さんが言われるように、記録を見ますとやはり死体解剖の時にこのビニール風呂敷を警察官があなたに見しているんですよ。あなたは、これは家の物ではないということがはっきりしているんだが、その後で、五月五日付で上申書が出ているので、それがどうしてそういうことになっているのか先ほどから弁護士さんがお聞きになっているんですが、そこがちょっと、どうして家の物だということが分かったのか。あなたとしては前の証言を総合しますと、五月一日にはあんまり分からなかったが、その後の時点で分かったということになると、家族の皆で相談し合って家の物だと、誰か家の人が風呂敷に見覚えがあった人がいたんじゃないのかね。

それを裏付ける根拠としては登美恵さんが、これは一審の証言で、これは事件前から白地に寿のある風呂敷は知っていたと、善枝が中学の時から持っていたんだと、一審の証言でこれははっきりしているんですが、登美恵は、もう知っていたんだが、そこら辺で、あなたとしては家族から聞いて改めて確認を、前のは間違っていましたというので届け出たんじゃないんですか」

証人=「よく記憶ないんですが」

山梨検事=「その確認書はどうですか」

証人=「ええ、私が書いたんではありません」

山梨検事=「名前は」

証人=「名前は自分が書きました」

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裁判長=「それは一審では出ていないものですか」 

山梨検事=「出ておりません。あなたとしては、芋穴から出た時から、これは家の物だという風な記憶が残っている感じですか。現在としては」

証人=「ただ、刑事さんには、この風呂敷善枝が持ってたんべかということは、言われた記憶はありますけれども、はっきりそういう風に言った記憶もあんまり思い当たらないんです」

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裁判長=「刑事さんにこの風呂敷を何と」

証人=「持っていたかどうかと」

裁判長=「そういう刑事の問い」

証人=「はい」

裁判長=「それに対してあなたは」

証人=「善枝が持っていたかどうかは分からないということは言ったと・・・」

裁判長=「そういうことを言ったことはあるような気がするということ」

証人=「そうです」

裁判長=「だから、検察官の言うように、初めの、死体が出た時には、これは持っていたものじゃないというように否定的な答えをし、その後そういう上申書が出ている時には、思い直したような形が見えるが、それは何か理由があってそういう風に変わったのかという点は答えが出来るんですか、出来ないんですか」

証人=「答えは出来ません」

(続く)