アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 1080

『原文を読みやすくするために、句読点をつけたり、漢字にルビをふったり、中見出しを入れたり、漢字を仮名書きにしたり、行をかえたり、該当する図面や写真を添付した箇所があるが、中身は正確である』

                                            *

中田家に届けられた脅迫状。写真は"無実の獄25年・狭山事件写真集=部落解放同盟中央本部中央狭山闘争本部・編、解放出版社"より引用。

【公判調書3357丁〜】

「第六十一回公判調書(供述)」昭和四十七年六月十五日

証人=中田健治(三十四歳・農業)

                                            *

橋本弁護人=「(東京高等裁判所昭和41年〈押〉第187号の1号脅迫状封筒と、同号の3、小紙片を示す)まず封筒を、ずいぶん色が変わっておりますから分からないかも知れませんが、その封筒に見覚えありますか」

証人=「はい。もっと色は白かったように記憶しております」

橋本弁護人=「その封筒の後ろを見て下さい。いわゆる封緘するところに、どういう印が付いておったかはどうですか」

証人=「記憶ないんです」

橋本弁護人=「よくペンでばってんをひいて封をすることがありますね」

証人=「はい」

橋本弁護人=「ああいうものはなかったですか」

証人=「はい、記憶ありません」

橋本弁護人=「その封筒を見ていただいて封が切られておりますね」

証人=「はい」

橋本弁護人=「封筒の端から端まで全部切られておるように見えますが、あなたが最初に見た時もこの通りでしたか」

証人=「はっきり記憶ありませんが」

橋本弁護人=「この現物をじっと見て思い出していただけませんか、どういう切り方をしてあったか」

証人=「思い出せません」

橋本弁護人=「それでは封筒が切り残してあったという記憶はないですか」

証人=「さあ、そこまでどうか・・・・・・」

橋本弁護人=「もし封筒が切ってなければあなたのほうで、あなたが切るか、喜代治さんが切るか分かりませんが、切らなければ中身が取り出せませんね」

証人=「はい」

橋本弁護人=「中身を取り出した以上は、封は誰かが切ったはずですが」

証人=「・・・・・・・・・記憶ないですが・・・・・・」

橋本弁護人=「もう先ほどからの証言で分かりますけれども、封筒から中身を取り出したのは間違いないでしょう」

証人=「はい」

橋本弁護人=「その時点で封が切れてあることは間違いない」

証人=「そうです」

橋本弁護人=「この封筒の切り跡をもう一度よく見てほしいんですが、あなたの最初に見た時と変わっておりますか」

証人=「記憶ありません」

                                            *

橋本弁護人=「(原審記録第二冊五三六丁の写真を示す)この写真は記録によりますと五月四日迄に撮影した写真のようですから比較的初期の写真なんですね。封筒の状態で、この写真を見て封が全部切ってあったか、あなたのほうで切ったのか思い出して下さいませんか」

証人=「家で切ったんじゃないように思います」

橋本弁護人=「そうすると封はあらかじめ切ってあったということですね」

証人=「はい。その時、警察のほうにどういう報告をしてますか」

橋本弁護人=「あなたは浦和で証言した時は、切れてあったという風には言ってます。全部なのか、部分なのかは・・・・・・」

証人=「最初の調書のほうが正しいと思います」

橋本弁護人=「それでは小紙片のほうを見て下さい。あなたが庭先で見つけたという紙切れはそれですか、それとも違いますか」

証人=「もっと小さい、・・・・・・小さかったような気もしますけれども」

橋本弁護人=「それがあなたが見つけたものだとは断言出来ないわけですか」

証人=「ええ、うっすら、こういう記憶はありますが、こんな大きかったようには・・・・・・」

橋本弁護人=「あなたは一審の時にも同じようなことを言ってますね」

証人=「はい」

橋本弁護人=「そうすると、その現物はあなたが見つけて警察に出したものかどうか、あなたには分からんということですか」

証人=「はい。はっきりした記憶はありませんが・・・」

橋本弁護人=「いや、記憶というより、今、現物をご覧になったわけだから、その現物を見てそれが自分が庭先で見つけた現物であると言えるかどうかということで、記憶の問題じゃないんですがね」

証人=「自分が見つけたものではないような感じです」

橋本弁護人=「あなたが今見た小紙片にインクの滲みは、あなたが仰ったのはありますか」

証人=「ええ、そうです」

橋本弁護人=「あなたの見つけたものも、あの程度の滲みがあったんですか」

証人=「ほとんど同じ状態のようです」

橋本弁護人=「さて、あなたは一審でも警察に対する調書の中でも、封筒の切れ端のようだということをしきりに言われているんですが、というと、入って来た封筒の切れ端という意味でしょう」

証人=「そのように・・・・・・」

橋本弁護人=「常識的に我々もそう解釈しますがね」

証人=「ええ」

橋本弁護人=「そうしますと、この封筒のどの部分の切れ端でしょうか、これはあなたに意見を求めることになると思うが、どの部分の切れ端か」

証人=「この切れ端は出来ないと思います」

橋本弁護人=「この封筒の切り跡の形と、ぴったり一致しないというんですか」

証人=「はい、しないように思います」

橋本弁護人=「どうして、思われるんでしょう」

証人=「大きさが、そういった大きさでは・・・・・・・・・、一致しないように思うんですけれども」

橋本弁護人=「今の切れ端を見ると、封筒の真ん中の封緘をする部分のようですね、小紙片は三角形をしておりまして。どうでしょうか、そういう判断は」

証人=「そう言われればそのようにも思います」

橋本弁護人=「ところがこの脅迫状の封筒には封緘の部分が付いているように見えるんですが。私の目には」

証人=「・・・・・・・・・」

橋本弁護人=「それから先ほどの封筒の写真ではもっとはっきり分かるんですが、ばってん印が付いて封緘してありますね」

証人=「・・・・・・・・・」

橋本弁護人=「あなたが見つけたのは、あの紙切れとは断言出来ないというから、あなたが警察に提出したのは一つだけですか」

証人=「一つだけだったと思います」

(続く)