アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 924

石田養豚場。

発見されたスコップ。写真二点は"無実の獄25年・狭山事件写真集=部落解放同盟中央本部中央狭山闘争本部・編、解放出版社"より引用。

【公判調書2919丁〜】 

                    「第五十五回公判調書(供述)」

証人=石田一義(三十五歳・養豚業)

                                            *

山梨検事=「先ほど吉田先生を送って帰りに警察官から尋ねられたという説明をしましたね、五月二日の午前零時過ぎという時間ですが」

証人=「ええ」

山梨検事=「その時にあなたとしては、何で警察官が立っているのかなと思ったんですか」

証人=「その当時、市会議員の選挙があったものですから、選挙違反か何かと自分は思ってました」

山梨検事=「今、細かく聞かれたスコップの件ですが、スコップが無くなってすぐわかったという風に言われたんですが、スコップの無くなった時には残飯は何でかき回したんですか」

証人=「その時はバケツでかましたんだと思います」

山梨検事=「そうすると言い換えるとそのスコップしかそこにはなかったということですか」

証人=「そこで専属に使っていたのはこれだけだと思いますね」

山梨検事=「無くなったのを発見した時にはバケツでかき回したと」

証人=「その朝行って無かったものですからね」

山梨検事=「登利造さんが亡くなった話が出たんですが、時期はいつなんですか」

証人=「四十二年十月二十四日です」

山梨検事=「これはちょっと別になるんですが、石川はあなたのところに三十七年十月から三十八年二月頃まで居たわけですね」

証人=「ええ」

山梨検事=「その時の働きぶりはまあ前回の証言であったかと思いますが、彼の腕力の強さは、強かったかどうかですが」

証人=「ええ、力はまあ、あるほうですね」

山梨検事=「何か具体的にこういうことがあったということはなかったですか」

証人=「別にないですね」

山梨検事=「警察ではドラム罐を持ち上げる話などはしておるようですが」

証人=「それは商売ですから。しょっ中、車に積んだり下ろしたりしておりますからそういったことはしょっ中、それが仕事ですから」

山梨検事=「ドラム罐を担いでどの程度運べるんですか」

証人=「まあ車がちょっと離れている場合は車のところまで持って行くように・・・・・・」

山梨検事=「あなたよりも力は強いですか」

証人=「そうですねぇ、当時はあったと思いましたね」

山梨検事=「あったというのは」

証人=「力は強かったと思いました」

山梨検事=「離れてるというのはどれくらいの距離を運ぶんでしょうか」

証人=「車までですか。その当時はちょっと今の状態と違いましたから二十メートルくらいは空のドラム罐を運んでおったんです」

山梨検事=「空というと目方はどれくらいあるんですか」

証人=「そうですねぇ、二十キロから三十キロくらいじゃないですか」

山梨検事=「どういう風にして運ぶんですか」

証人=「両手で持ち上げる場合と、肩に担ぐ場合とあります、空の場合はですね」

山梨検事=「入ってたら」

証人=「どうしても車を傍までつけて三人くらいで持ち上げるわけですね」

山梨検事=「あなたのところにいた若い衆の中では一番力の強いほうだということは言えるわけですか」

証人=「そうですねぇ」

                                            *

裁判長=「あなたは四十一年四月十四日に当控訴審で証人に出て相当詳しく述べてますね」

証人=「ええ」

裁判長=「さっき弁護人が非常に詳しく聞かれたスコップの入手先という風な点についてはその時は殆ど述べてないと思いますが、その時詳しく述べたこと、これはその前の三十九年の証言、それからみると二、三年経っているわけですが、当審で四十一年四月に述べた時は自分の記憶のままに正直に述べたということは確信しておりますか」

証人=「当時はねぇ・・・・・・」

裁判長=「当時述べたことは特に嘘を言ったとか、余計なことを言ったとか、あることをないと言ったとか、そういうことはない」

証人=「ありません」

裁判長=「その時述べたことは記憶のまま正確だと思うことを述べたと」

証人=「ええ、その当時はねぇ」

                                            *

福地弁護人=「五月二日夜に豊岡から自宅に帰りましたね」

証人=「ええ」

福地弁護人=「その時に佐野屋の西の方を通って権現橋の方に行ったと」

証人=「ええ」

福地弁護人=「そうすると途中、町田忠治という人の家の前を通りますか」

証人=「はい」

福地弁護人=「家へ着いたのは一時頃だか十二時半頃だかちょっと分からないんですか」

証人=「一時頃じゃないんですかね」

福地弁護人=「佐野屋の付近では警察官は見かけなかったと」

証人=「知りませんです」

福地弁護人=「スコップをもらったことがあるが、誰からもらったかは分からない」

証人=「ええ、分かりません」

福地弁護人=「もらった理由といいますか、それも分からない」

証人=「ええ、そうですね」

福地弁護人=「何でもらったのかも分からないと」

証人=「・・・・・・・・・・・・」

福地弁護人=「(前同スコップを示す)このスコップに剥げているところはありますか、そういう風に思いますか」

証人=「どういう意味ですか」

福地弁護人=「柄の部分で剥げてる部分はあると思いますか」

証人=「剥げてるというのはどういう意味ですか」

福地弁護人=「私の言う通りの意味です。柄の部分で木が剥げてる部分があると思いますか」

証人=「減ってるという意味ですか」

福地弁護人=「ええ、減ってるという意味ですね」

証人=「あると思いますね」

福地弁護人=「どの部分ですか」

証人=「この部分と(スコップの裏差込みの入口の部分)持っている部分(三角形の下の部分)じゃないですかね」

福地弁護人=「あなたは機械油と植物性の油と見分けがつくように先ほど仰いましたね、その根拠をもう一度仰って下さい」

証人=「ですから、その当時使っていたものだと残飯をかました場合はしょっ中扱っていたものですから分かります」

福地弁護人=「しょっ中扱っていた時の油は何の油ですか」

証人=「残飯に混じって入ってくる油ですから」

福地弁護人=「いろいろな油があると思いますねぇ、それが植物性の油かどうか」

証人=「植物のと豚の油とほかの油と、そういうものがしょっ中見慣れている油ですから、残飯の中の」

福地弁護人=「それが植物性の油か機械油か区別する根拠は」

証人=「残飯に入っているものは分かるんですね」

                                            *

裁判長=「つまり植物性と限定したが、豚などは動物性で、植物性、動物性の油と機械油とを区別する意味では、大体当時扱っていた時は分かったと思うと、こういう意味ですね」

証人=「ええ、残飯に入っているので・・・・・・」

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昭和四十六年十一月二十四日

東京高等裁判所第四刑事部     裁判所速記官      沢田怜子