アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 870

被害者の遺体に巻きつけられた荒縄。写真は"無実の獄25年・狭山事件写真集=部落解放同盟中央本部中央狭山闘争本部・編、解放出版社"より引用。

【公判調書2720丁〜】

                    「第五十二回公判調書(供述)」

証人=青木一夫(五十六歳・川越市役所臨時嘱託)

                                            *

福地弁護人=「死体を縛った縄がありましたね」

証人=「はい」

福地弁護人=「記憶ありますか」

証人=「はい」

福地弁護人=「この縄をどこからどうやって持ってきたものであるか、石川被告は説明したでしょうか」

証人=「はい、説明がありました」

福地弁護人=「どういう説明だったか覚えておりますか」

証人=「今、言葉で表現するのがむずかしい場所なんですけれども、死体の発見された場所はご存じのように畑ですけれども、畑の反対側に山林がありますが、その山林の端に家が何軒かありまして、その家の柵か何かに使ってあったように記憶するんですが」

福地弁護人=「それを外して持って来たということですか」

証人=「はい」

福地弁護人=「縄についての被告人の説明は、被告人の取調べをあなたは十九日頃から七月に入ってからもやっておられるようだけど、比較的早い時分に自白があったのでしょうか。真ん中頃でしょうか、それとも縄はうんと後になってから説明があったか、あなたの記憶はどうですか」

証人=「よく思い出せませんが」

福地弁護人=「先ほどの湯呑み茶碗の件ですが、縄を一体どうしたんだと、縄はどこから持って来たんだと、こういう取調べをやっている際に湯呑み茶碗を使って長谷部さんが何かやったんじゃないですか」

証人=「どうも今お話の、先ほど申し上げましたように湯呑み茶碗というのは私には記憶がないですけれども」

福地弁護人=「長谷部さんは、やったことがあると言ってるんですが、あなたは記憶ないですか」

証人=「・・・・・・・・・・・・」

                                            *

山梨検事=「湯呑み茶碗と縄とは結び付いてないですから誘導尋問です」

福地弁護人=「私の聞いてるのは湯呑み茶碗についてはやったということです」

山梨検事=「縄とは結び付いておりませんよ」

福地弁護人=「ええ、そうです。湯呑み茶碗については長谷部さんは、やったと証言してるんですよ」

証人=「はあ、ですからいつも三人が一緒に・・・・・・」

福地弁護人=「まあ、いいでしょう」

                                            *

中田弁護人=「先ほどあなたは、湯呑み茶碗のことは記憶がないと言われたのですが、何か、紙を長谷部さんが切ったりしていたのは見たことがあるんですね」

証人=「はい」

中田弁護人=「それは調べ中のことではないんですか」

証人=「調べ中には、そういうことはないと思うんですね」

中田弁護人=「あなたは、私の調べの時にはそういうことは出来んという趣旨のことも言いましたね」

証人=「調べをやってる時は出来ないと思うんです。あるいは私が話を聞いて、調書を取っております間に多少のゆとり等もあることもあるんです。そういうことはその間ですと分かりませんですけれども、普通の場合は休憩時間とか、そういう時間は冗談も言いますし、雑談もいたしますので」

中田弁護人=「調べというのは、何時から何時まで発問して答を引き出して、何時から何時まで調書を書いて、といったような、そういう区別があるものではないでしょう」

証人=「はい」

中田弁護人=「もっといろいろな雑談が入ってみたり別の話が入ってみたりといういろいろな角度から時間が費されるんではないですか」

証人=「はい」

中田弁護人=「あなたが調べ中の時には、長谷部さんは、横にいて時々発問する程度で冗談を言ったり何もしないと、そういうわけのものでもないでしょう」

証人=「はい」

中田弁護人=「長谷部さんが別に紙を切って何か作ってみて、石川君を喜ばしてみたというわけのものでもないでしょう」

証人=「はい」

中田弁護人=「石川君を喜ばせるために紙で細工をしたわけでもないでしょう。聞きたいことは、あなたが、長谷部さんが紙で何か細工していたという、それは長谷部さんは何でそういうことをしていたか聞きたいんですがね」

証人=「はっきりその紙を切ったりなんかしてるのも私は覚えがありませんけれども、出来るとすればさっきも申しましたように休憩時間だとか、あるいは私がメモをいたしまして、調書を書いている間とか、そういう間にはそういうことが出来ると思うんです。ただ普通にまともに聞いたり答えたりしている間には、そういうことは出来ないだろうと、そういうことです」

                                            *

裁判長=「そうじゃなくて、何故、そういうことを長谷部という人がやるという風にあなたは考えたか、聞いてるんです」

証人=「先ほども申しましたように、多少の冗談も入りますし雑談も入りますから、そういう類いのものであったと思います」

                                            *

(続く)