【公判調書2723丁〜】
「第五十二回公判調書(供述)」
証人＝青木一夫(五十六歳・川越市役所臨時嘱託)
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中田弁護人＝「死体を縛っていた縄が、どこから出たのかということを知ったのは石川君の供述を聞いて初めてですか」
証人＝「どこから出たかということですか」
中田弁護人＝「そうです」
証人＝「････････････」
中田弁護人＝「死体を縛ってあった縄について捜査当局とすれば、当然どこからそれが出てきたものかを調べていたでしょう」
証人＝「どこから持って来たろうかということについての捜査はしておったと思います」
中田弁護人＝「被告人を取調べる時にあたってのそれらの捜査の結果について、あなたは一定の認識を持っていたわけでしょう」
証人＝「一部については、認識を持っていたものもあります」
中田弁護人＝「その認識の中身を言って下さい」
証人＝「中身と言いますと。私は、五月の四日か五日頃から捜査に助勤で入りまして、ずっと捜査に携わっておったんですから、いろんなことを聞いたり見たりして、記憶の中にありました」
中田弁護人＝「具体的には今思い出せないということですか」
証人＝「いろんなことがあるので、どういう点を申し上げたらいいのか分かりませんが」
中田弁護人＝「あなた自身は、石川君を調べている間に、縄はどこから持ってきたのかということをある程度考えて調べていたのではないですか」
証人＝「ああ、そういう意味ですか。確かあそこにはたくさん縄を捨ててあった場所が一カ所あったと思います」
中田弁護人＝「あそこというのはどこですか」
証人＝「山寄りの場所ですね。死体が発見されました場所から百メートルか二百メートルぐらい離れた所だったでしょうか、たくさん捨ててあった場所もありましたし、その他にも何ヶ所か縄のあった場所があったように思うんですが、多分そういうところではないかという意味のことが頭の中にあったと思います」
中田弁護人＝「石川君が自白する前に、今あなたが述べたような場所から縄を持ってきて、死体を縛ったのではないかという風なことを聞いたことがあるかどうか記憶していますか」
証人＝「聞いたことと言いますと」
中田弁護人＝「時期を限っておきますが、自白する前にあなたが、あそこにたくさんあったという今説明した縄の場所ね、そこからお前は縄を持ってきて、死体を縛って、どうかしたんじゃないかという風な質問をしたことがありますか」
証人＝「そういう質問はないと思いますが、はっきり覚えていません」
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裁判長＝「ちょっと弁護人、伺いますが、自白をする前というのは、どの自白ということを限定しなくていいですか」
中田弁護人＝「最初の、三人でしたという自白です」
裁判長＝「じゃ、六月二十日頃に三人説を言ったその日にちを土台にして、その前に特定のところから縄を持ってきて死体を縛ったんじゃないかという質問はしなかったという問です」
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証人＝「そういうことはなかったと思います」
中田弁護人＝「石川君が、三人でやったという自白を変えて、自分でやったと最初に言い出したのはあなたに対してですね」
証人＝「そうです」
中田弁護人＝「その単独でやったという自白をする前までに、今のような縄に関して質問をしたことがありますか」
証人＝「多分ないと思いますが、ちょっと記憶ありません」
中田弁護人＝「多分ないという風に思われるのはあなたの記憶としては、初めの頃には縄の出所に対して、あまり聞いたことはないという風な記憶があるからではないのですか」
証人＝「いや、そうじゃなくて、何か、まだ三人でやったという話をしている時にはそういった具体的な話は出ましたでしょうかな。私は今考えてみて、そういう、縄で縛ったというようなはっきりした供述がなかったように思うんですが、いかがでしょう」
中田弁護人＝「あなたに対して、自分一人でやったんだと言うようになってからは、すらすらと細かい供述をし始めたという記憶ですか」
証人＝「すらすらでもなかったでしょうね」
中田弁護人＝「だからいろいろあなたとすれば今まで調べていた材料なんか調べて、ああじゃないか、こうじゃないかと聞くこともいろいろあったわけでしょう」
証人＝「はい」
中田弁護人＝「縄のことについて、あなたのほうでここから持ってきたんじゃないか、というような質問をしたことがあるかどうか、その辺についてあなた記憶は今あるのですか、ないんですか」
証人＝「ここから持ってきたんじゃないかというような質問をした記憶はありませんですがね」
中田弁護人＝「すると、石川君は、自分勝手に言い出したと、そういう記憶ですか」
証人＝「どこから持ってきたかということを聞いて、それでそういう話になったんだと思いますが」
(続く)
