写真四点とも当時の石田養豚場。
【公判調書2915丁〜】
「第五十五回公判調書(供述)」
証人=石田一義(三十五歳・養豚業)
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橋本弁護人=「あなたの不老川のほうにある豚小屋は夜は灯りを点けるんですか」
証人=「点ける場合と、点けない場合もあります」
橋本弁護人=「灯りの設備はありましたか」
証人=「ありました」
橋本弁護人=「電燈ですか」
証人=「はい」
橋本弁護人=「どの辺にあったんですか」
証人=「小屋の中に五か所くらい点くようになっていたと思います」
橋本弁護人=「それは普段は点けておくんですか」
証人=「毎晩点けたかどうかは分かりませんけれども、向こうに住んでないものですから」
橋本弁護人=「問題の五月一日の夜は点けておったかどうかということはどうでしょうか」
証人=「そうですね、今のところ、ちょっと忘れました」
橋本弁護人=「とにかくそっちには誰も人はいなかったんですか」
証人=「そうです」
橋本弁護人=「住込みの人はどっちにいたんです」
証人=「家の方におりました」
橋本弁護人=「(東京高等裁判所昭和41年〈押〉第187号の41号スコップを示す)このスコップに見覚えありますか」
証人=「ええ、当時警察の人が来て、その時見たのに違いないと思いますね」
橋本弁護人=「警察の人があなたの家に持って来て、お前の家のかと言ったのと同じだと思うと」
証人=「ええ、そうですね」
橋本弁護人=「同じだと思うのはどういう根拠によるんでしょうか。つまり何か特徴がありますか」
証人=「ええ。普通のスコップと違って、餌をかますものですから、植物性の油が染みてたわけですね、当時はもっと」
橋本弁護人=「植物性の油ですか」
証人=「機械油と違いますから、残飯をかましますから」
橋本弁護人=「どこに染みていたんですか」
証人=「柄の部分と、その持っている(弁護人はこの時スコップの柄の三角形の下、十二、三センチあたりを持っていた)下辺りですね。それと、その後ろの下のほうに付いている窪みの部分が普通の泥なんかを扱ってるスコップと違うわけです」
橋本弁護人=「差込みになっているところ、へこんでいるところですね」
証人=「ええ、ついているものが、それもね」
橋本弁護人=「へこんでいる部分に付着しているものが普通のものと違うと」
証人=「ええ」
橋本弁護人=「付着しているものは何ですか」
証人=「残飯のかすみたいなものだと思います」
橋本弁護人=「植物油といいますけれども、何の油ですか」
証人=「それは分からないですね、いろいろな油が入ってますから。残飯ですから」
橋本弁護人=「それは機械油とどう違うんですか」
証人=「どう違うって、はっきり分からないです」
橋本弁護人=「機械油と違って植物油だということは分かりますか」
証人=「残飯かましてる場合は分かります」
橋本弁護人=「スコップに付いてしまった場合、これは植物油だ機械油だということはどうして分かるんですか」
証人=「その、家で餌をかますのに使っていたんですから、その当時見た時は分かりました」
橋本弁護人=「このスコップがお宅にあったスコップだということですか」
証人=「ええ、そうだと思います。当時見たあれですね、間違いがなければね」
橋本弁護人=「間違いがあるかないか私にも分からないんですが、そうすると、お宅で無くなったスコップだという風にあなたが仰る根拠は付着物、柄の部分の黒っぽく見える部分がそうだというんですか」
証人=「ええ、そうです」
橋本弁護人=「これにはちょっと泥が付いてますけれどもね」
証人=「はい」
橋本弁護人=「あなたの家で使っている時も付いていましたか」
証人=「付いてないです」
(続く)