アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 918

狭山署の中での石川一雄さん(事件当時)。写真は二点とも"無実の獄25年・狭山事件写真集=部落解放同盟中央本部中央狭山闘争本部・編、解放出版社"より引用。

関 源三。

【公判調書2900丁〜】

                    「第五十四回公判調書(供述)」

証人=関 源三(五十五歳)

                                            *

石川被告人=「先ほど原検事と一緒に浦和拘置所に会いに来たと言いましたね」

証人=「はい」

石川被告人=「あの時は区長室だったんですね、八月の二十四日頃だと自分は記憶しているんです」

証人=「ああ、そうですか」

石川被告人=「暑い時期で自分は九月一日まで一か月間大体仕事したんですね、その直後にちょうど来たのでわかったんですけど、その時原検事が石を掘らなかったかとか、それから茶の木を切ったんじゃないかと言われたんじゃないですか、それから三人じゃなかったですね、霜田区長も来たと思うんですね、もちろん三人じゃ許されないと思うんですね。畳の上に直にしゃがんだでしょう、関さんと自分と原検事は。区長はちょうど椅子みたいな所に腰掛けた」

証人=「・・・・・・区長さんが居たかどうかというのははっきりしていないんで、私居なかったと思ったから居ないとさっき言ったんですが」

石川被告人=「原検事が関さんと来た時、今自殺伝々と言いましたけれども、もちろんそれで来たかも知れないけれども、その時原検事が、石を掘らなかったかとか、それから茶の木を切ったんじゃないかって、刀のような物で茶の木を切ったんじゃないかと、そんなことなかったかと、もちろん自分はそんな事知らないと言ったけれどもそんなことを聞いたんじゃないですか、一緒に来た時に」

証人=「覚えてないです」

石川被告人=「全然分かんないですか」

証人=「・・・・・・・・・分かんないですね」

石川被告人=「先ほどの弁護人からの質問でちょっと自分としても分かんなかったんですけどね、仕事をするために浦和の方へ出掛けて来られたんですか、関さんは」

証人=「それが何かの連絡があって行ったような気もするんです」

石川被告人=「連絡があったというのは自分の所へ」

証人=「そうじゃなく」

石川被告人=「何の連絡ですか」

証人=「その点が、こういうことでこうなんだということが忘れたと言いますか、はっきり覚えてないから」

石川被告人=「偶然、原検事と会ったというあれですか」

証人=「偶然というよりも何かの連絡で私行ったと、だから偶然というんじゃなく、行ったから会ったということだったんです」

石川被告人=「それから手紙の件ですけれども、先ほど四十六年に手紙を貰ったというようなことを九月の公判の時から言っているんですけれど、自分は出した記憶ないんですね、拘置所にその点調べてもらったら出していないようだと言っているんです。出していないんですよね、自分も」

証人=「それじゃ今年になって貰ったという風に考えていたんですけれども、私の記憶違いで、前だったかも知れません」

石川被告人=「だからそんなのはないわけですね」

証人=「・・・・・・・・・・・・」

石川被告人=「四十五年の四月四日付で葉書を関さんに、面会してほしいということを書いて出したでしょう。その返信に関さんは交通係で忙しいからそれが終わってから面会に来るというようなことを書いてあるんじゃないんですか。自分の所に関さんの返信の葉書をとってあるんですよ。関さんが先ほど自分に嘘をついたことないと言ったけど、嘘をついたことになるんですね、自分に対して」

証人=「いや、私は今忙しくて行けないということを書いたという風に言ったと覚えているんですがね」

石川被告人=「いや、先ほどお父さんとか弁護人から面会に行くなと言われているからうまくないから理由をつけて行かなかったと」

証人=「私が今忙しくて面会に行けないというのは今年来た手紙だという風に解釈しておりました」

石川被告人=「今年は出してないですね、全然出してないから四十五年ということになっちゃうでしょう」

証人=「今年手紙が来ていないとすれば私の思い違いであって、前の返事かも知れません。私今年だと思っていたんですよ」

                                            *

裁判長=「さっき私が四十五年四月四日付の葉書が来てそれに対してあなた四月十日返事出すとわざわざ表に書いてあるね。その葉書の内容はどういうことだと聞いたんだから、あんまり今年の手紙と間違うあれはないんだが、今聞いてると、今年来たと思われる葉書に対する返事だと思ったと、こう言うの」

証人=「それ四十五年のその時には今忙しくて行けないからというような返事だったんですよ」

裁判長=「だからそういう言葉を書いたのは、さっきの話では弁護士も関さんに会っちゃいけない、うちの方でも会っちゃいけないと言っているから会うのはよろしくないと」

証人=「会わない方がいいだろうと」

裁判長=「思って言葉の上ではそこまで書けないから都合が悪いから今行けないと、こう書いたように思うと、こう言うんだね」

証人=「はい」

裁判長=「だからそれは四十五年の四月四日付で来た葉書に対する返事だと思ったと、こう言うんだね」

証人=「ええ、大体そういう内容なんです」

                                            *

石川被告人=「先ほど、関さんが裁判長の質問に対して、是非とも面会に来てほしいという趣旨のことを書いた手紙を出したことに対して、うちのお父さんや弁護士から面会伝々と言われているから行かない方がいいだろうと思って、それで理由を付けて出したと言いましたね」

証人=「はい」

石川被告人=「それじゃ嘘ついたということになるんですよね」

証人=「・・・・・・・・・・・・」

                                            * 

昭和四十六年十一月二十七日

東京高等裁判所第四刑事部  裁判所速記官  重房義子 印

                                            *

今回をもって第五十四回公判は終え、次回は第五十五回公判へと進む。証人には石田一義=養豚業が呼ばれており、佐野屋、あるいは中田家から近く、そしてその使用人たちに捜査の目が向けられたという事実を考えれば、ここは刮目して読んでゆきたい。