アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 913

【公判調書2886丁〜】

                 「第五十四回公判調書(供述)」

証人=関 源三(五十五歳)

                                            *

裁判長=「非番というのは勤務時間に入るんですか」

証人=「たとえば夕べ泊まりで寝なかったというんで今日は休みという」

裁判長=「それは勤務はしないけれども、うちに居なくちゃならない、勝手に外出してはならないという時間なんですか、それとも外出して自分勝手な行動を取ってもいいという時間なのか」

証人=「そういう時は普通はうちで体を休めるということなんですけれども、口頭で話せば上司の方で口頭の許可でじゃ管外に出ることはいいという風にやってくれたわけです」

裁判長=「まあ非番の時にはそこらを散歩したりなんかするという風な、自分の自由な行動をしても咎(とが)め立てされるようなことはないんですか」

証人=「行き先をはっきりしておけばまあいいと言いますか、向こうでじゃ行って来いと」

裁判長=「じゃ普通の勤務をしなきゃならない日に勝手にさぼっているというのとは少し訳が違うと、こういうわけですね」

証人=「はい」

                                            * 

佐々木弁護人=「そうすると非番の場合にも他所へ行くという時には上司に連絡するわけですか」

証人=「はい」

佐々木弁護人=「仮にあなたが行かれたのが全部非番だとしても連絡はしているわけですね」

証人=「口頭では連絡していると思います」

佐々木弁護人=「あなたが面会に行ったということは非番の場合でも上司は知ってるわけですね」

証人=「はい」

佐々木弁護人=「しかし勤務時間中であったかも分からん、非番であったかも分からんということですか」

証人=「日がはっきりしませんですからね」

佐々木弁護人=「そうすると勤務時間中だとすれば当然あなたとしては許可を受けていますわね」

証人=「はい」

佐々木弁護人=「非番であったとしても連絡しなければならない」

証人=「はい」

佐々木弁護人=「そうすればあなたが行ったことは上司はどっちみち知っているんじゃないんですか」

証人=「はい。一応断わるわけです」

                                            *

山梨検事=「さっきあなたがちょっと言われたように浦和に連絡事項があって勤務は勤務で、それで浦和に行った間に面会して来るということもあったんじゃないの」

証人=「それが連絡に何か行ったというのも、そういう記憶もあるんですが、それが今考えてみますと・・・・・・・・・連絡に行った時だと思うんですけれども、何か石川君が事故というんじゃないんですけれども、拘置所の中で何かあったというようなことを私が聞いたことがあるんですね。それでその時検事さんと一緒に行ったと思うんです。一番最初ですけれども」

山梨検事=「何か自殺でも計りかけたということですか」

証人=「ええ、何かそんなことを聞いたんです」

山梨検事=「それでその検事さんと一緒に行ったと」

証人=「はい、それが何か連絡に行った時に・・・・・・・・・面会にわざわざこっちから行ったというんじゃないように、そこは記憶しているんです」

山梨検事=「先ほどの面会の回数ですがね、今の原検事と一緒に行った分と、それから被告人のお母さんと弟と一緒に行った分と入れると浦和が二回となると、あなた一人で行ったというのは浦和ではないですか」

証人=「浦和は私が一人で行ったというのはないんです。数は二回行っています」

山梨検事=「今の二回がそうだと、こういうわけですか」

証人=「はい」

山梨検事=「ただ、今の手紙を見ますと、たとえば昭和三十九年三月七日付の手紙に『一昨日は多忙のところ』という風にはっきり一昨日という風に具体化しているわけですよね。だから三月七日の一昨日なんだから五日に面会に来て差入れしてもらってありがとうという風に書いてあるんですがね、これを見ると。あんただけで面会したのが浦和でもう一度あるのじゃないかな」

証人=「私はしかし全部で浦和は二回しか行ってないと思っております」

山梨検事=「(東京高等裁判所昭和41年〈押〉第20号の4の手紙のうち昭和三十九年三月七日付の封書を示す)これ見て下さい」

証人=「私は二回しか行ってないと思っております、今でも」

山梨検事=「(同じく手紙のうち昭和四十年四月十二日付の封書を示す)どうですか、これは千円送ってもらったというのだな」

証人=「思い出さないんですがね」

                                            *

裁判長=「『一金千円也を御恵送いただき』という風な表現になっているが、これは持って行って手続きをして入れたのだけじゃなくて、送った千円というものもあるんじゃないかという質問だね」

証人=「・・・・・・・・・思い出せないです」

裁判長=「(同じく手紙のうち昭和四十五年四月四日付-同月五日消印-の葉書を示す) それのおもての下の方に四月十日頃返事出すという風に読めるんだという風にこの間調書でもなっているわけですが、四月十日頃あなた、返事を出したんですね」

証人=「これは私が書いたんです」

裁判長=「ただ裏の方を見ると『自分としては黙っておれなかったので、以前この旨を関さんにお知らせしたことがありましたが』つまり弁護士や家の方では関さんに来てもらっちゃいけないという風に言っている、そこで今日まで筆を取らず且つ『自分としては黙っておれなかったので、以前、この旨を関さんにお知らせしたことがありましたが、もし私の願いを叶えていただけるものでしたら一度面会に来ていただきたいのですが、いかがでしょうか。あまりにも自分勝手なお願いで申し訳ありませんが、お許し下さい、ではからだを大切に、さようなら』と、こういう風に結んである。これが去年の四月四日の日付で出ている。去年の四月四日というと当裁判所で更新の手続きをして盛んに被告が争っていた時代なんだが、それにも関わらず一度、この時代に『願いを叶えていただけるものでしたら一度面会に来ていただきたいのですが、いかがでしょうか』という風なそこまで書いてある、で、あなたはこの時行かなかったんだね」

証人=「ええ」

裁判長=「どうして行かなかったんです」

証人=「いや、それはですね、前に私が面会に来ちゃまずいというような手紙があったからそれで行かなかったんです」

裁判長=「だけどそれは十分向こうも承知だと、弁護士が会っちゃいけないと、うちの方でも会ったら面会に来てやらないと言っているんだが、そこをおしてどうしてもあなたに会いたいと言っているわけでしょう」

証人=「はい」

裁判長=「それにも関わらずそれは会えないというので行かなかったというのは何か特別な理由はないんですか」

証人=「ほかには特別な理由はありません」

裁判長=「うちの方で会うなということは、まあ被告人が切に願っても、それは行くのはどうかと思うくらいの心持ちですか」

証人=「ええ」

裁判長=「それで返事はどんなことを書いた」

証人=「行きたいけど忙しくて今のところ都合がつかないというような手紙だったと思います」

裁判長=「それじゃそれは内容に大したことは書かないが、ありふれた断りの文句を書いたと、それだけのことだと、こう言うのだね」

証人=「はい」

(続く)