アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 917

鞄と教科書は一緒に捨てたとの石川被告の供述に反し実際にはそれらは別々の場所で発見されているなど、狭山事件ではその方々で矛盾、齟齬が生じている。証人らの証言と、捜査当局が認定した事実とされる事柄が食違いを見せているのである。

・・・・・・さて法廷では石川被告が関源三へ詰問を浴びせる。

写真二点は"無実の獄25年・狭山事件写真集=部落解放同盟中央本部中央狭山闘争本部・編、解放出版社"より引用。

【公判調書2897丁〜】

                    「第五十四回公判調書(供述)」

証人=関 源三(五十五歳)

                                            *

石川被告人=「それから自分が鞄を捨てたという略図を書いた時、最初に行った時発見出来なかったですね」

証人=「はい」

石川被告人=「あの時はその略図を書いた、捨てた山というのはどこだと関さんは思ったですか」

証人=「中学校の方から来て山へ入った右側という風に私は思ったです」

石川被告人=「中学はどこにあるんですか」

証人=「山学校の方」

石川被告人=「山学校の方の新しく出来た中学の方と思うということですか」

証人=「ええ、そうです」

石川被告人=「中学の方から、田中の方から南へ向かって右側ですか」

証人=「ええ、山へ入った右側という風に感じたんです」

石川被告人=「するとゴムひもが捨ててある所という意味ですね」

証人=「ゴムひもはあの道の左側の方です」

石川被告人=「そうすると教科書が捨ててあったという所ですね」

証人=「教科書は知らないんです。これは今でもどこだと場所も知らないんですよ」

石川被告人=「ゴムひもの第一発見者は関さんですよ」

証人=「ゴムひもは知ってますよ」

石川被告人=「それで教科書が発見されたというのは今でも知らないんですか」

証人=「教科書は知らないです」

石川被告人=「東中学の南の方に捨ててあったんでしょう」

証人=「そうそう東中学の方から山に入って来て左の少し坂のようになっている高くなっている杉か樫か檜か忘れたけれども、そこにゴムひもがあったんです」

石川被告人=「それじゃ今、鞄を捨てたという山を確認するためですけれども、その場所を述べていただけますか」

証人=「向こうの山学校の方から来て」

石川被告人=「加佐志街道ですか」

証人=「それから薬研坂の方へ向かって来てですね」

石川被告人=「全然道が違うんじゃないでしょうか、狭山精密の方でしょう」

証人=「狭山精密から堀兼の方へ行くあの道の方へ向かって」

石川被告人=「薬研坂へ向かうということになると堀兼へ出ちゃうんですね、鞄はずっとこっちでしょう、入間川でしょう」

証人=「入間川です」

石川被告人=「通称山学校の南でしょう」

証人=「山学校の南です」

石川被告人=「そうすると加佐志街道じゃないですか」

証人=「・・・・・・山学校の方から南側に来ると山になるんですけれども」

石川被告人=「両方挟んでいますね、道が。どっちの道ですか」

証人=「山学校の東の道ですね」

石川被告人=「そうすると、東中学から言うと右というんですね」

証人=「東中学の西になるわけです。山学校と東中学の間の所ですね」

石川被告人=「それから真っ直ぐ南に」

証人=「それをずっと南に入っていくと畑になるけれども、畑を通り越して山へ入って左が最初は低いんだけど、それからずっと高くなっている所にゴムひもがあった」

石川被告人=「鞄はどこという」

証人=「鞄はゴムひもからずっと下へ降りて来た所ですね、ですから山学校の方から来た道から言うと左側です。だからゴムひものあったそのちょうど下ということはないけれども、その坂を、だらだら山だから高くなっている、その下の所です」

石川被告人=「自分としてはその山、あんまりよく分からないですけれども、鞄を捨てたということは山学校の南の横山米屋の山に捨てたということに自分はしているんですね、そうじゃなかったですか、もちろん教科書が発見された場所は関さん分からないというから説明のしようがないですがね、今ゴムひもが発見されたという道から右側になるんです」

証人=「ですから分かんないというのはここだということが分からないんです。大体あの辺だということは聞いたから分からないんです。ですから今の言うのは石川君の言うように右の方ですね、山学校の方から降りて来た」

石川被告人=「山学校というのは東中学の通称山学校との間の道という意味ですね」

証人=「そうです。あれからずっと来た右の方だということは聞いているんです」

石川被告人=「だから自分は教科書が発見されたというのは結局嘘発見器にかけられた時言われたから、狭山にいる時もう教科書が発見されたことを横山の山学校ということを知ってるからね、その辺に鞄を捨てたという風に自分は図面に書いているんですね、だから図面を書いた時、東中学のこと書いてないでしょう、普通だったら、鞄が発見された図面だったら東中学を書かないと分からないんじゃないですか」

証人=「・・・・・・・・・・・・」

                                            *

裁判長=「要するに証人がさっきから言うことを聞いてみると、鞄と本というのは山道を境にして右と左に分かれているんだ、今になって言えば。そういうことを言うんでしょう」

証人=「はい」

                                            *

石川被告人=「だから結局、関さん説明出来なかったんじゃないですか。鞄の発見された山の説明は今でも出来ないんでしょう」

証人=「いや、鞄の発見されたのはその道の左側です」

石川被告人=「どういう所に捨てたか弁護士に問われてもこの間説明出来なかったでしょう」

証人=「だからそういう細かいのは忘れてしまったから、この前の証言の時すじを引いてあるのは何かということは説明出来なかったんです」

石川被告人=「結局あの地図を持って行ったらまるきり知らない人だったらわからないじゃないですか。具体的に捨てたという道も書いてないしあれは山学校を対象にしていないから、だから自分としては横山の山に捨てたということにしたんですね、自分としてはそういう風に書いつもりなんですがね」

証人=「・・・・・・・・・・・・」

(続く)

                                            *

公判調書に記載されている法廷での尋問には、たびたび、「・・・・・・」という表記がなされている場面が現れる。この場面を読み返すとそれはほぼ質問を受けた側が「・・・・・・」という反応を示しており、これは問われたことに対して、何らかの要因によりその返答に詰まったと解釈して良いだろう。

ならば何故、「・・・・・・」という無言の反応を示したのか、その無言の背景を探るには狭山裁判の第一審、第二審を通し、この「・・・・・・」という反応を示した文脈を再検証しなければならないという新たな問題が生まれ、私はその段取りを考えつつ晩酌の用意を始めた。