アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 873

【公判調書2727丁〜】

                    「第五十二回公判調書(供述)」

証人=青木一夫(五十六歳・川越市役所臨時嘱託)

                                            *

中田弁護人=「話があっちこっち飛んで恐縮ですが、時計を田中へ捨てたという供述があってから、一、二日、調べに行かなかったということは先ほど伺ったんですが、その後あなたは、あなたの想像として述べられたところによると、拾った人があって、持っていたんだけど、警察の方で捜索に行ったので、持っていた人がまた捨てたということも考えられると言いましたね」

証人=「はい」

中田弁護人=「あなたとしては、警察が田中の辺りで時計を捜しているということを、普通の人が知ることが出来るような形で捜索が行なわれたという風に考えていたわけですね」 

証人=「はい」

中田弁護人=「そうですね」

証人=「はい」

中田弁護人=「あなたは、石川君を調べながら、捜査本部の指揮のもとにまわりの人が、警察が時計を捜しているということを知り得るような捜査がなされていることを知ってたんですね」

証人=「知っていたというよりも、そういう風に想像しておりました。当然あの付近で警察側が何人も行って捜索すれば、近所の人にも分かることですから」

中田弁護人=「それでも警察は見つけなくて、後で七十才くらいの老人が見つけて、あなたとしては不思議だったでしょう」

証人=「はい」

中田弁護人=「不思議だからこそ、あなたも発見された場所へ行ったんじゃないですか」

証人=「その不思議とは関係ありませんけれども、どういう場所から発見されたのかということで行って見たわけです」

中田弁護人=「発見された場所へ行ってからのちに時計を捨てた場所について、石川君に質問したことがありますか」

証人=「さあ、どうでしたか、記憶ありませんが」

中田弁護人=「あなたとすれば石川君が田中の三叉路の真ん中へ置いて来たと言ったのが不思議だと思ったでしょう」

証人=「そのときに・・・・・・」

中田弁護人=「思っていたけれども、本当に石川君が言った近くにあれば、そのことで石川君との間で話のやり取りがあるのが普通じゃないですか、記憶してませんか」

証人=「はい」

中田弁護人=「あなた自身、発見された時計を示して石川君に尋問したことがありますか」

証人=「ちょっと今思い出せませんが」

中田弁護人=「前にあなたに証人になってもらった時にもその点を聞いてるんですけれども、ちょっとくどいようだけど、時計が発見されたのちに時計を示して聞いたという調書がないんですよ、これはちょっと捜査の常識に反すると思うから聞くんですが、普通ならば発見された物を確認するための調書を作るのが普通でしょう」

証人=「確認するための調書を作るのが常識・・・・・・そうですね」

中田弁護人=「常識として考えられる、ところがそれに反して調書がないとすれば何か特別に理由があったのではないかと思うので聞いてるんです。何か思い当たること、あるいは思い起こすことはありませんか」

証人=「格別ありません。そういう確認の漏れているのが他にもあるかも知れませんですね」

中田弁護人=「他にあるんですか」

証人=「鞄なんか示したでしょうかね、示してないんじゃないでしょうかね。なんか私今記憶がはっきりしてないんですけれどもね」

中田弁護人=「万年筆を示したかどうか記憶ないですか」

証人=「万年筆はどうでしょうかな・・・・・・・・・」

中田弁護人=「被告人の自白で、ここへ捨てたここへ捨てたということで出てきた物証は鞄と万年筆と時計でしょう」

証人=「はい」

中田弁護人=「その物証については、確認のために示したことがないという記憶なんでしょうかね、むしろあなたは」

証人=「どうもそこのところはっきり覚えておりませんですが」

中田弁護人=「最後に一点、あなたは死体の首に荒縄とは違う木綿の紐が結び付けられていたことを知ってますね」

証人=「紐ですか」

(続く)

被害者の遺体は目隠しされ、後ろ手に縛られた上、うつ伏せに埋められていた。写真は"無実の獄25年・狭山事件写真集=部落解放同盟中央本部中央狭山闘争本部・編、解放出版社"より引用。