アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 902

○前回、法廷での問答の内容が被害者の遺体解剖に集中しており、その生々しさに私は途中で引用を中止した。被害者の死因が絞殺か扼殺か、あるいは別の方法であったか、その検証までは何とか読了出来た。しかしその後に続く、被害者の年令(当時十六歳)を踏まえてか、 生前の性交渉の有無を彼女の遺体をもってして検証しており、死してなお辱めにあう様は、私には直視出来なかった。

さて、法廷に召喚されていた証人=五十嵐 勝爾への尋問が終了した段階で、第五十三回公判は閉廷しており、今回より第五十四回公判が開かれる。

証人として呼ばれた方は再び関 源三巡査部長(階級は当時)である。

【公判調書2856丁〜】

                  「第五十四回公判調書(供述)」

証人=関 源三(五十五歳)

                                            *

裁判長は証人に対し、前々回の公判においてした宣誓の効力を維持する旨を告げた。

尋問及び供述は、別紙速記録記載の通り。

なお、別紙速記録末尾に記載の被告人の証人に対する尋問に引き続き、検事、弁護人、裁判長から要旨次のとうりの発言がなされた。

山梨検事=「相手の感情を害さないために忙しいという理由で断る断り方もあるわけだから必ずしもうそをついたとは言えないのではないか」

山上弁護人=「尋問中だから検事は黙っていなさい」

山梨検事=「尋問を整理する必要がある」

裁判長=「証人はその問に答えなさい」

山上弁護人=「裁判長は証人に検事が今言ったとうりに答えなさいと言うのですか」

裁判長=「そんなことは言わない。そんなばかなことを言ってはいけません」

山上弁護人=「弁護人に対してばかとは何ですか。取り消してください」

裁判長=「弁護人のことをばかと言ったのではない。そんなばかばかしいこと、という意味で使った言葉であるから取り消す必要を認めない」

山上弁護人=「そのようには受け取れなかった。取り消してください」

裁判長=「取り消さない」

                        引き続き、尋問及び供述

裁判長=「証人は先ほどの被告人の問に答えなさい」

証人=「私はうそは言っておりません」

                                                                             以下余白

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【公判調書2858丁〜】

                                     速記録    昭和四十六年十一月九日

                                            *

橋本弁護人=「この前の法廷で、今年になってあなたの所に来た手紙を本日提出するというお話でしたね、手紙ありましたか」

証人=「捜したんですが、見つかりませんでした」

橋本弁護人=「本年手紙が来たということは間違いない事実ですか」

証人=「本年と思っております」

橋本弁護人=「と思っておるということはあまりはっきりしないということですか」

証人=「見つからないからですけれども、まあ今年になってからというような記憶がありますが」

橋本弁護人=「それは封書ですか、葉書ですか」

証人=「葉書だと思います」

橋本弁護人=「あなたの所では葉書を焼き捨てるというようなことはないわけでしょう」

証人=「いや、葉書を焼くというんじゃなく、いろいろごみが出た時に一緒に焼くこともあります」

橋本弁護人=「この前、石川君からあなたの所へ来た手紙、葉書の類を証拠に法廷で提出しましたね」

証人=「はい」

橋本弁護人=「全部で十七通ありますけれどもあれがすべてですか」

証人=「あれだけだと思っております」

橋本弁護人=「そうすると今年の寒い頃に来たというものを除けば全部裁判所に提出したということになりますね」

証人=「もうないと思っております、私」

橋本弁護人=「あなたは、あなたの調べをした被疑者、被告人とその後も交際を続けるというようなことはよくあることですか」

証人=「特別、交際というようなことはしておりませんですけれども、まあ帰って来たりなんかした時にまあ良かったなとかいうようなことはあります」

橋本弁護人=「石川君とはもう何回か捜査段階それから浦和の一審の段階、それから二審の東京高裁の段階で面会しておるようですね」

証人=「はい」

橋本弁護人=「前後何回くらい面会しておるか記憶ありますか」

証人=「・・・・・・全部で三回くらいかと思います。東京が一回で浦和が二回と思っております」

橋本弁護人=「面会の際にお金を差入れるようなことがありましたね」

証人=「はい」

橋本弁護人=「それは何回くらいありましたか」

証人=「二回と思います。東京が一回、浦和が一回です」

橋本弁護人=「お金を郵便で送ってやったようなこともありますね」

証人=「郵便のことはちょっと思い出せないですが」

橋本弁護人=「四十年の四月頃、お金を送ったことはありませんか」

証人=「はっきりしませんです」

橋本弁護人=「お金を差入れた金額はいくらですか」

証人=「浦和が五百円です。それから東京は千円だと思っております」

橋本弁護人=「そのお金の出所はどこですか」

証人=「私のです」

橋本弁護人=「あなた自身のお金ですか」

証人=「はい」

橋本弁護人=「誰かに頼まれて差入れしたんですか」

証人=「いや、違います」

橋本弁護人=「あなたの自発的なものですか」

証人=「はい」

橋本弁護人=「それから、石川君に手紙をしばしば出しておるようですね、あなたの方からも」

証人=「はい」

橋本弁護人=「これも大体のことで結構ですが、浦和時代と東京時代に分けてどのくらい出しておりますか」

証人=「わかりませんけれども、石川君からもらった手紙の数くらいは出しておると思います」

橋本弁護人=「同数くらいは」

証人=「はい」

橋本弁護人=「この前あなたが法廷で提出した石川君の手紙の中にはあなたの出した手紙に対する返事がありますね」

証人=「はい」

橋本弁護人=「つまりあなたの方から出した手紙に対する石川君の返答と、そういう性質の手紙が何通かあるんじゃありませんか」

証人=「それは寒くなる時や何かに寒くなるから体に気をつけなくちゃだめだからといったような手紙を出しております。それの返事も貰っておるというような記憶もあります」

橋本弁護人=「先ほど面会をした記憶は三回くらいだという話でしたが、もっと多いんじゃないですか。浦和時代、東京時代を通じて」

証人=「東京が一回です。それから浦和が二回と思っております」

橋本弁護人=「浦和というのは三十八年の九月以降のことですよ」

証人=「日ははっきりしませんけれども浦和にいる時に二回と思っております」

橋本弁護人=「(東京高等裁判所昭和41年(押)第20号の4の手紙のうち、無日付:二十六日消印の封書を示す)この手紙があなたの所へ来たわけですね」

証人=「はい」

橋本弁護人=「『過日はわざわざ面会に来ていただき誠にありがとうございました。何の話も出来ず心残りでした。本当にどうも遠路ご苦労さまでした。また、お金まで差入れていただきなんとお礼を言っていいかわかりません。ありがたく厚くお礼を申し上げます』と、こう書いてありますね」

証人=「はい」

橋本弁護人=「そうすると、これは日付がはっきりしませんが、この手紙の前にあなたが面会をしてお金を差入れたわけですね」

証人=「ええ、そうですね」

橋本弁護人=「その日付と金額はわかりませんか」

証人=「・・・・・・浦和のでございますか」

橋本弁護人=「今のは浦和のですね」

証人=「五百円です」

橋本弁護人=「(同じく手紙のうち昭和三十八年十二月十七日:同月十八日消印の封書を示す)『先日は私のためにわざわざ面会に来ていただき誠にありがとうございました。その折、差入れ金までしていただき感謝しております。厚くお礼申し上げます。公判もあと三回で終わるそうです』こう書いてありますね、そうすると三十八年の十二月十七日前後にもあなたは石川君に面会をしてお金を差入れていると、こういうことになるんじゃないんですか」

証人=「私は浦和で五百円一回だと思っておるんですが・・・・・・」

橋本弁護人=「(同じく手紙のうち昭和三十九年三月七日付の封書を示す)『一昨日は多忙のところ遠路わざわざ面会に来ていただき、誠にありがとうございました。またその折、差入れ金までしていただき感謝しております。本当にありがとうございました』三十九年の三月、もちろん浦和ですね、まだ」

証人=「はい」

橋本弁護人=「そうすると三回になりますか、面会と差入れは」

証人=「・・・・・・・・・・・・」

橋本弁護人=「記憶ありますか」

証人=「ちょっと記憶がないですが。それは」

(続く)

                                            *

○被告本人の自白維持を継続させるためか、証人=関 源三は石川被告に手紙を出し、また返事も書き、さらには金銭を差入れ、被告の心境が変化せぬよう奸計を働かせているとも思えるが、果たしてその行動は野球などを通じた信頼関係からもたらさられたものなのか、それは法廷での尋問の行間から探るほかない。