アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 904

東京高等裁判所へ出廷する石川一雄氏(1974年)。写真は"無実の獄25年・狭山事件写真集=部落解放同盟中央本部中央狭山闘争本部・編、解放出版社"より引用。

【公判調書2864丁〜】

                  「第五十四回公判調書(供述)」

証人=関 源三(五十五歳)

                                            *

橋本弁護人=「川越にいた当時は石川君は接見禁止、差入れ禁止、そういう処分を受けていましたね」

証人=「・・・・・・・・・・・・」

橋本弁護人=「あなたも警察官でしたから、常識でご存じでしょう。強盗、強姦、殺人という罪名が付けば接見禁止になるのが普通ですわね。この石川君の場合も付いておったでしょう、川越時代は」

証人=「付いていたと思いますですね」

橋本弁護人=「ですから川越時代にお金を差入れるということは出来ないんじゃないんですか。特別に許可があれば別でしょうけれども」

証人=「その差入れですが、それは私の所へ送って来たんです。知らない人なんですけれども」

橋本弁護人=「あなたの所へ来た経路はいいですから私が聞いてるのはあなたから石川君に渡したのはいつの時期かということを聞いているんです」

証人=「私が渡したのか捜査で渡したかはっきりしませんですけれども浦和へ行く前ですね」

橋本弁護人=「浦和時代と東京拘置所時代に千円と七百円ずつ分けて諏訪部刑事からと言ってあなたが石川君に渡したことがあるでしょう」

証人=「行ってから諏訪部さんから私がもらって来て石川君に渡したのはないですね」

橋本弁護人=「東拘時代は全部あなたのお金ですか」

証人=「そうです。東京の千円も浦和の五百円も私の金です」

橋本弁護人=「ところでそういう、被告人に現金を差入れるというようなことはあなたがやったのは石川君だけですか、ほかの被告や被疑者でもあるんですか」

証人=「ほかの人は知ってる人はありませんでした」

橋本弁護人=「あなた、現役の警察官でしょう」

証人=「はい」

橋本弁護人=「当時も現在もね」

証人=「はい」

橋本弁護人=「現職の警察官が公判進行中の被告人に会って現金を差入れるというようなことは普通のことですか」

証人=「いや、私、友達と言うか、前から知っておるしするから、りんごの一つでもどうかなという気がしたわけです。だけどそういうのはだめだけど、金で置いていけば何かこっちで買ってこっちでやるということを拘置所の方で言ったんです。それでじゃ何かりんごでも買ってやってくれと、それで千円置いてきましたです」

                                            *

福地弁護人=「あなたは諏訪部課長からお金を受け取ったというようなことをさっきから言ってるんですがね」

証人=「いや、それは諏訪部刑事から受け取ったというんじゃないんです。私だか誰だかそれははっきりしないということはいいんですけれども、私だか捜査の誰かが」

福地弁護人=「いや、あなたが誰からか送ってきたお金を受け取ったことは間違いないんですか」

証人=「手紙で来たんです」

福地弁護人=「誰宛に来たんですか」

証人=「それは私宛に来たんです」

福地弁護人=「それはあなた、じゃ、開けて見たわけですね」

証人=「はい」

福地弁護人=「そしてその金をどうしたんですか」

証人=「それを私に来たんだけれども、捜査の方へ預けておいたんです」

福地弁護人=「捜査の誰に預けたんですか」

証人=「誰かはっきりしませんですが、それが石川君にせんべいでも買ってやってくれというような内容の手紙が書いてあって、それで金が入っていたものですから私がそれを持っているわけにいかないので捜査の方に預けたんですが」

福地弁護人=「諏訪部さんに預けたんじゃないですか、それは」

証人=「諏訪部さん・・・・・・・・・かも知れないですけれども」

福地弁護人=「その手紙はどうしました、現在持っていますか」

証人=「その手紙はうちにあるかも知れません。この間も一通捜してみると言ったんですけど無かったんですけど」

福地弁護人=「そうするとあなた宛に送ってきた手紙ですね、それは」

証人=「あなたの記憶ではどうもはっきりしないけれども、捜査に預けとこうと、こういうことですね」

証人=「私が人の金を持ってるわけにいきませんから」

福地弁護人=「そうすると捜査に預けて、その金はそれからどうなったんですか」

証人=「その金を浦和へ行く前に石川君に渡したと」

福地弁護人=「誰が渡したんですか」

証人=「その渡したのが私が直接渡したか、捜査が渡してくれたか、ちょっとはっきりしないんですが。渡したということは私聞いて知ってるんですが」

福地弁護人=「渡したというのはどうして分かっているんですか」

証人=「それはですね、あれは私が預かってそれを捜査に預けてあるのを、あの金を渡さなくちゃって私が言ったかどうか、それで、それはそうだということになって、だから間違いなくこれは渡してあると思うんです」

福地弁護人=「金額はいくらですか」

証人=「はっきりしませんけれども、千円か千五百円、二千円はないと思います」

福地弁護人=「送ってきた人の名前は先ほどちょっと言いましたけれども、何という人ですか」

証人=「一人は石山という人です」

福地弁護人=「もう一人は」

証人=「一人は全然知らない人、東京の人なんですが」

福地弁護人=「そうすると諏訪部さんが、その今あなたが話した送ってきた金についてどういう風に関係しているんですか」

証人=「私は預けたんですから、その諏訪部さんに預けたかどうかそれもはっきりしないんですけれども、いずれにしても捜査の方に一応預けたんです」

福地弁護人=「諏訪部さんからあなたが受け取ったとか、諏訪部さんから頼まれたというような事実はないんですか、そのお金に関しては」

証人=「諏訪部さんから預かったとかそういうことはないです」

福地弁護人=「何か先ほどの橋本弁護人の尋問に対して諏訪部さんから金を預かって渡したという風に受け取れるような発言をあなたはしたようですけれどもね」

証人=「諏訪部さんから預かったということはないです」

                                            *

裁判長=「最初に、諏訪部から金を預かって渡したそういう金もあると、そういう風な意味のことは言ったんだ」

証人=「はい」

裁判長=「それが後のほうになってそこが曖昧になっちゃったんだがね、それを聞いてるんだよ」

                                            *

福地弁護人=「橋本弁護人は、諏訪部課長からお金をあなたが受け取って俺の代わりに石川に渡してくれと言って持って行ったことはないかと、そういう趣旨の質問があって、あなたはそれを肯定するような、今、裁判長が言われたそういう答えをしたように思うんですがね、思い出して下さい。あなたは諏訪部課長からお金を預かって拘置所へ届けたことはないんですか」

証人=「拘置所へ諏訪部さんから預かった金というのは、それはないです」

福地弁護人=「千七百円と七百円を持って行った記憶はないんですか」

証人=「それはないです」

福地弁護人=「先ほどの証言と若干食い違うように思いますがね」

証人=「拘置所というと浦和へ行った後ですから、人に預かって金を持って行ったというそれはないわけです。ただ石川君が浦和へ行く前にその私宛に来た金額はちょっとはっきりしませんけれども、千円か、その程度だと思いますけれども、その金を、捜査に預けておいたのを、それを拘置所へ行く前に川越で石川さんには渡してある、その渡したのが私が直接渡したんだったか、あるいはほかの捜査の人へ渡したか、その点がはっきりしませんが」

福地弁護人=「しかし自分が渡したか他人が渡したかくらいは記憶に残ってそうなものですがね、はっきりしませんか」

証人=「・・・・・・・・・・・・」

福地弁護人=「それから、先ほどあなたは拘置所へ行ってりんごでも買って入れようとしたら、それは出来ないと拘置所に言われた、だから仕方がないから金を入れたと、こういう趣旨の発言をされましたね」

証人=「それで向こうでそういう食物や何かは出来ないんだと、だけど金で置いておくんならばこっちでそうした何かを買ってあげると、そういう風に言われたんです」

福地弁護人=「拘置所で果物や何かいろんな食物を差入れ出来ませんか、あなた現職の警察官ですから分かるでしょう。拘置所では果物やいろんな食物の差入れが出来ませんか」 

証人=「向こうの拘置所の方でそういう風に言われたから、何もまあ、そうでなきゃりんごのたとえ一つでもと思ったけれども、向こうでそう言われたので、じゃそういう風に頼むと言って置いて来たんですが」

福地弁護人=「りんごは入れられないと、そういうことになっているんだと、そういう風に言われたんですか、拘置所の人に」

証人=「食物、そういうのはまずいから金で置いて行くんなら、後でこっちで言われた日に買ってやると」

福地弁護人=「食物を入れることは自由になっているでしょう」

証人=「・・・・・・・・・・・・」

(続く)