アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 900

【公判調書2801丁〜】

                  「第五十三回公判調書(供述)」

証人=五十嵐 勝爾(五十八歳・埼玉県警察本部刑事部鑑識課犯罪科学研究室長)

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原本番号  昭和四十年(刑)第二六号の四七

速記録      昭和四十六年九月十六日

事件番号  昭和三十九年(う)第八六一号

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裁判長=「最前、あなた、事件については狭山事件として知っているだけで、被告人の名前、あるいは被害者の名前、日時などはあまり憶えていないと、こういう風に仰いましたですね」

証人=「はい」

裁判長=「この事件について、あなたがなすったのは何だったんですかね」

証人=「死体を解剖して、それで種々の嘱託書に書いてあった鑑定事項について結論を下したと」

裁判長=「鑑定書ですね、いわゆる鑑定をなさって、それから、それについて法廷で証言をなすったことがありますね」

証人=「はい」

裁判長=「当時、なすった証言の内容、どんなことを聞かれ、どんなことを答えたかということを大体憶えてますか」

証人=「いや、鑑定書の確認の後ですね、大したことは聞かれなかったように憶えてますが」

裁判長=「自分のお作りになった鑑定書を、今、写しか何か持っておられますか」

証人=「いや、見つけてみましたけれども、ちょっと見つからなかったですから持参致しませんでした」

裁判長=「内容はそらで憶えておられますか」

証人=「大体。結論としては扼殺と」

裁判長=「いやいや、細かいことはどうせ、後で聞かれると思いますが、大体こういう風な死体であって、こういうふうな点に特徴がある、鑑定の結果はこうであったということを今、そらで憶えておられますか」

証人=「鑑定書を見せて頂ければ、質問内容によってある程度思い出せるかと思いますけれども、細かい点は記憶ございません」

裁判長=「それでは、まず私のほうからあなたの経歴を、前に聞いておりませんので簡単に伺いたいと思いますが、お医者さんの資格はお持ちですね」

証人=「医籍登録はしてございます」

裁判長=「ですから、そういう風な学校を卒業して、いつ、どういうことに携わったかということを簡単に述べて下さい」

証人=「昭和十六年三月、新潟医科大学卒業、それですぐ軍医として兵役につきまして、短期軍医の召集を受けまして、昭和十九年十月半ばに召集解除、昭和二十年五月一日から東大の法医学教室に副手として入室しました」

裁判長=「それは先生はどなたですか」

証人=「古畑先生です。それで二十三年十一月から鳥取医専の法医学教室の助教授を翌年の七月いっぱいまでやってました。で、昭和二十四年の九月三十日付で県警本部へ入っております」

裁判長=「埼玉県ね」

証人=「はい」

裁判長=「それは地位はどういう地位ですか」

証人=「技術吏員としてです」

裁判長=「警察吏員、技術吏員なんですか」

証人=「技術吏員です」

裁判長=「その次、地位が変わって・・・」

証人=「それで国警から県警に変わりましたから、それで現在の地位になってます」

裁判長=「前は犯罪科学研究室長というあれじゃなかったですね」

証人=「当時は鑑識課の中に組み込まれておりましたから」

裁判長=「鑑識をやるから技術吏員だと思うんですが、それの前の県警本部における名称とか、地位の変動がありましたら、大雑把なところを言って下さい」

証人=「最初はいわゆる技師として元の改正前の、終戦直後のあれで六級職て入ってます。元の高等官待遇で。それで鑑識課の中の一係になっておりましたが、技官の監督を兼ねていました」

裁判長=「県警本部の鑑識課の中に所属しておったわけですね」

証人=「はい。それから県警の中で実験室として半独立的な地位になって実験室の室長格として技師の監督にあたってました」

裁判長=「その間、年月が経っているでしょうね。二十四年九月に入ってから、仕事は同じようなことだが地位は変動してきているわけですね」

証人=「ええ」

裁判長=「それで、この前の三十八年の証言のときは県警本部刑事部鑑識課勤務と、こういうことになっておりますかね、警察技師でね。その間に、それになるまでにそういう風な意味で県警本部の中で、所属とか地位の変動がありましたか、実験室長になってから」

証人=「実験室から犯罪科学研究室として鑑識課付置の形になっております」

裁判長=「犯罪科学研究室、これはやはり鑑識課に付置されたものですね」

証人=「はい」

裁判長=「その次は」

証人=「それで室長として現在に至っております」

裁判長=「そうすると、三十八年当時に刑事部鑑識課勤務というのは、正にその犯罪科学研究室に所属していたということを示すわけですか」

証人=「鑑識課員として、鑑定方面の仕事を主にしたと」

裁判長=「そして、その犯罪科学研究室というのに所属していたわけですか」

証人=「いや、その当時は技師たちの一つの係の」

裁判長=「そうすると、鑑識課に所属するようになったのはいつからですか」

証人=「それは入りましたときは国家地方警察の時代でございましたけれども、途中、警察法の改正で県警になりまして、引続きの形になっております」

裁判長=「だから、鑑識課というのは実体が同じなので、鑑識課というものに大体所属していて、鑑定などをやっていたという風な実体は変わらないんですね」

証人=「変わりません」

裁判長=「それでずっとやってきて、今の犯罪科学研究室というものが今もある。今はそれの正式の室長だと、そういうことになるわけですか」

証人=「はい」

裁判長=「いつからですか、正式の室長は」

証人=「憶えておりませんが」

裁判長=「もう久しくなりますか」

証人=「この事件が起きてしばらく経ってからだと思います」

裁判長=「本件事件のしばらく後と記憶しておるが、犯罪科学研究室長、これは鑑識課に付置されておると、こういうことになりますね」

証人=「はい」

(続く)