【公判調書2797丁〜】
「第五十三回公判調書(供述)」
証人=関 源三(五十五歳・飯能警察署勤務、警部補)
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阿形弁護人=「あなたは石川君の勾留中に石川君の自宅へ行かれたことが何回かあるということでしたね」
証人=「はい」
阿形弁護人=「それで、ちり紙とか下着などを差し入れのために預かって、持って帰ったことがあるということでしたね」
証人=「一回くらいあると思います」
阿形弁護人=「下着、ちり紙、そのほかにも何かありますか」
証人=「ありませんです」
阿形弁護人=「それはあなたから石川君に渡されましたですか」
証人=「いや、それは一応飯塚課長に出して、それで向こうから渡しました」
阿形弁護人=「手続はそういうことですけれども、それに関連して、下着やちり紙預かって、直接渡してやるとか、そういうときに、ちょっと言葉を交わすとかそういうようなことはなかったですか」
証人=「私が直接やったということはありませんでした」
阿形弁護人=「お母さんが直接、下着なんかを持って来られたのは見ておりますか」
証人=「誰が持ってきたというのは私は見たことありません」
阿形弁護人=「それはないですか」
証人=「はい」
阿形弁護人=「すると、あなたが預かってきた下着なんかは誰が渡したんでしょうか。本人には」
証人=「よく分かりませんが、斉藤さんじゃないかと思うんです」
阿形弁護人=「あなた自身は渡したことは記憶がないというのか、はっきり、そういうことはなかったというのか、どっちでしょうか」
証人=「私が直接渡したのはまず、ありません」
阿形弁護人=「まずというのは、そうすると、預かってきてあげたのは何回くらいありますか」
証人=「それは一回くらいと思ってますが」
阿形弁護人=「一回だけですか」
証人=「でも、はっきり一回と言い切れませんが、一回くらい、私が預かってきたというような記憶がありますが」
阿形弁護人=「一回くらいははっきり記憶しておるということですか」
証人=「それははっきりでもありませんが、一回、私も持って行ったことがあるなという記憶です」
阿形弁護人=「これは石川君にね、直接渡して、実は私が預かってきてやったんだというようなことをちょっと言っているしね、渡したという風な記憶はありませんか」
証人=「そういう記憶はないです」
阿形弁護人=「石川君に聞いてみると、あなたから直接渡してもらったと、家から預かってきてやったんだというようなこともちょっとね、口添えがあったという風に本人は言っておるんですけれどもね」
証人=「ああ、そうですか」
阿形弁護人=「思い出せませんか」
証人=「私が直接渡したことはないように思っておるんですが」
阿形弁護人=「絶対ないとは言えないんですか」
証人=「絶対とも言えませんです」
阿形弁護人=「それから石川君の自宅へ足を運んだのが四、五回くらいと言われましたですね」
証人=「はい」
阿形弁護人=「特に捜査の目的で行かれたことはあるんですか」
証人=「捜査のことは一回もないです」
阿形弁護人=「そうすると、どういう用件で行かれましたですか」
証人=「下着とか日用品の関係、それから一回は面会のことで行ったことがあります」
阿形弁護人=「その下着とか日用品の関係というのは、もう少し具体的に言うと、どういうことですか」
証人=「それは下着が汚れたから洗濯替えを持ってきてくれとか、あるいは、ちり紙がなくなったとか、歯磨きがなくなったから届けてくださいとか、そういうようなことで行ってます」
阿形弁護人=「そういうことであなたが署から出かけるについては誰かの指示でですか、それともあなたの判断でですか。石川さんから、ちり紙が切れているとか、そういうことを聞いたからその用件で行くわけですわね」
証人=「ええ」
阿形弁護人=「それについて、あなたが行くについてですよ、あなたのご判断に基づいてなのか、誰かの上司の指示に基づいてなのか、それはどうでしょうか」
証人=「それは上司が、こういうわけでちり紙がないと言っているから持ってくるように言付けを言われて」
阿形弁護人=「洗濯のための下着の宅下げなんかも持って行ったことがあるわけですね、取替えのため」
証人=「それは持って行ったかどうかはっきり記憶してないですが」
阿形弁護人=「新しいのを入れてくれということを言いに」
証人=「新しいというわけでもないんですが」
阿形弁護人=「新しいというのは洗濯したものでいいですよ、新品でなくても」
証人=「はい」
阿形弁護人=「その、あなたに行けと言った上司はどなたですか」
証人=「飯塚さんに言われたこともあると思います。それから諏訪部さんに言われたこともあると思います」
阿形弁護人=「そうすると、石川さんのところへ行った四、五回というのは、すべてそういう用件になるわけですか」
証人=「はい」
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中田弁護人=「あなた、先ほど持ってきておられたという手紙と葉書、ちょっと見せて下さい」
証人=「(証人は持参した封書、葉書を弁護人に示した)」
中田弁護人=「順序よくなってますか」
証人=「いや、なってません」
中田弁護人=「ばらばら」
証人=「はい」
中田弁護人=「先ほど、今年も来たと言いましたね」
証人=「はい」
中田弁護人=「いつ頃ですか」
証人=「まだ少し寒いうちだったと思います」
中田弁護人=「一月、二月頃」
証人=「はっきりしないんですが、まだ寒い時期ですから、二月か、その頃じゃないかと思います」
中田弁護人=「封書ですか、葉書ですか」
証人=「葉書です」
中田弁護人=「それはどうされたの」
証人=「それ、家に置いたんですが、状差に置いたんですが、見つからなくなったんです」
中田弁護人=「私がこうして今見ている、十七通と言われたのかな」
証人=「はい」
中田弁護人=「これをあなたがね、今日ここに来るについて、県警捜査一課から受け取ったのはいつですか」
証人=「これは日は分かりませんですが、もう半年くらい経つと思います」
中田弁護人=「受け取ったのが」
証人=「はい」
中田弁護人=「そうすると、もうずっと前に捜査課に出してあったわけですな」
証人=「出してあったというか、見せてくれと言うので出したわけです。それは幾日でもなかったわけです」
中田弁護人=「半年ほど前と言われましたかね、今」
証人=「はい」
中田弁護人=「返ってきたのがね」
証人=「はい」
中田弁護人=「その返ってきた頃で言えば、今年来た葉書というのは前ですか、後ですか」
証人=「これが本部の方から返ってきた後です」
中田弁護人=「それは本部へ出さなかったの」
証人=「それは別に、出せとも言われなかったから出さなかったです」
中田弁護人=「今年もらった葉書というのは、燃しちゃったり捨てちゃったりしたわけじゃないでしょうな」
証人=「そうです。別にこれを燃すとか捨てるとかいうものじゃないですから」
中田弁護人=「あなた十七通もとってあるんだから」
証人=「はい」
中田弁護人=「捜してみたら、きっと出てくるでしょうな」
証人=「・・・・・・・・・・・・」
中田弁護人=「多少関心があるものですからね、今年あなたのところへ送ったという葉書に」
証人=「はい」
中田弁護人=「捜して下さいますか」
証人=「あるかないか別としまして、捜します」
中田弁護人=「あなた、今年来たことは間違いないの」
証人=「今年です」
中田弁護人=「それじゃ捜して下さい」
証人=「ええ、捜します」
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裁判長=「あなた、その今年の葉書というものにどういう内容のことが書いてあったか、大体憶えてますか」
証人=「大体は、寒いが元気でいるとか、時候の挨拶です」
裁判長=「そうすると、事件のことについてとか、関連すると思われるようなことは何も書いてないんですか」
証人=「そういうのはありません」
裁判長=「書いてない」
証人=「はい」
(以上 佐藤房未)
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今回で、証人=関 源三への尋問は終了するが、葉書の件を含め、彼は再び法廷へ呼ばれると思われる。
次回、証人として呼ばれた人物は被害者の遺体を解剖した方である。