【公判調書2790丁〜】
「第五十三回公判調書(供述)」
証人=関 源三(五十五歳・飯能警察署勤務、警部補)
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山梨検事=「先ほど弁護人の質問で、何か下着を持って行くのを、後で持って行くというので差し出さなかったことを思い出したということをさっき言われましたね、被告人の家へ行った時の話ですが」
証人=「・・・・・・先生に言われて思い出したというのは、ちょっと、つかえちゃってるんですけれども」
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裁判長=「さっきね、下着を持って行ってやるかという風にお袋さんに言ったら、持って行くと言って、その時は出さなかったことがあるかも知れない、弁護士さんにそう言われればということでしたが」
証人=「わし記憶がなかったんですけれども、先生がそういうことがあったかと言われたんで、それで思い出して、そういえばそういうことがあったという風に思い出したわけです」
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山梨検事=「それはどういうことだったんですか」
証人=「私はあそこへ行ったのが、下着とか、いずれにしても日用品を持ってきてくれとか、そういう使い奴(やっこ)と言いますか、使いで行ったわけです。それで時によって、じゃあチリ紙ぐらいならこれを持って行ってくれと、持って行ったこともあるとわし思います。そのときに、下着は後で届けるからと家の人が言ってくれたんで、ああそうかと帰って来たんです。その家の人が届けると言ったことを忘れていたんですけれども、さっきの尋問で言われて、ああそういうこともあったなと思い出したんです」
山梨検事=「家の人がどこへ届けると言ったんですか」
証人=「川越です」
山梨検事=「家の人が警察へ持って行くというのを、あんたにどうしてくれと言ったんですか」
証人=「下着ぐらいだったならば持って行ってもいいということで私、持って行ったことも一回か二回かあったと思います。後で届けるというのは、わしが持って預かって行かないでも後で、家の人が・・・・・・」
山梨検事=「家の人が直接本人の所へ届けるから、あんたには頼まないでもいいと、こういうことですか」
証人=「はい」
山梨検事=「だからあんたがわざわざ行ったのに家の人があんたに渡さないでこっちで直接届けに行くからと言ってあんたに洗濯物を渡してくれなかったと、洗い上がった洗濯物を渡してくれなかったと、こういうことがあったと」
証人=「そうです。別に悪いあれじゃないですけど、なにどうせ面会に行くから、その時こっちで持って行くからというようなことです」
山梨検事=「前回、先週でなくこの前の控訴審の公判の時に、証人は被告人から今でも、自分が慕われているんだという風に思っているという供述をしておりますね」
証人=「はい」
山梨検事=「その気持ちはどうですか、現在でも変わらないですか」
証人=「私は、変わらないんじゃないかと思います。まあ、自分のことですから、何ですが」
山梨検事=「証人のところへ手紙は、被告人からいつ来ましたか」
証人=「今年になっても一回来たと思ってます」
山梨検事=「その前は」
証人=「四十五年頃だったです」
(続く)
息子の無実を信じ、訴える石川一雄氏の両親。左が富造さん、右がリイさん。写真は"無実の獄25年・狭山事件写真集=部落解放同盟中央本部中央狭山闘争本部・編、解放出版社"より引用。