アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 807

【公判調書2493丁〜】

                  「第四十八回公判調書(供述)」

証人=石原安儀(五十七歳・警察官)

                                            *

宇津弁護人=「(先ほど示した原審記録一三三一丁の現場見取図第二図を示す)あなたが鹿野さんと一緒に時計を捜したということはさっき出ましたが、それではこの図面のこのT字路から東側の道路を捜した班と、茶畑の方面を捜した班、それぞれ誰と誰の組だったか述べてもらいたいんです」

証人=「これがどうも申し訳ないんですが、さっきから考えて誰がどっちだか、どうも記憶ないんです」

宇津弁護人=「組合せは分からなくてもこの茶畑の方の捜索をした者には誰がいたとか、それからT字路から東の方に向かって捜した者に誰がいたと、その組合せが分からなければその中の誰かでも結構です」

証人=「・・・・・・・・・」

宇津弁護人=「メンバーは大体先ほど思い出されましたからね、それをはめ込んでもらえればいいわけです、記憶にしたがって」

証人=「いや、はめ込みと言うけれども大体三日間くらいやってまして、初日に誰、二日が・・・・・・これがずっと十日なら十日、一か月なら一か月メンバーが変わらなければいいが、しょっ中変わってるだけにその点が注意をどうも記憶に出て来ないんです」

宇津弁護人=「今の表現によりますと時計を捜すのに三日に渡ってやったように聞こえましたが、どうなんですか」

証人=「結局拾われたんじゃないかということで戸別に聞いたのが総合したやつなんです」

宇津弁護人=「今時計を捜してるところだけ聞いてる、やはり三日に渡ってやったんですか」

証人=「いやいや、そうじゃないです。これはその日だけなんだけれども」

宇津弁護人=「そのことを三つに分けて三方面に分けたと言ったでしょう。あなたと鹿野さんは分かったですよね、あとの茶畑の方面。これはT字路から東の方面ね、それぞれの組合せ、もしくは組合せがはっきりしなければ誰がどういう方面にいたかということです」

証人=「記憶にありません、忘れました」

宇津弁護人=「思い出して下さい」

証人=「・・・・・・・・・・・・」

宇津弁護人=「飯野源治さんはどこの方面にいましたか」

証人=「・・・・・・思い出せません」

宇津弁護人=「それから聞込みの段階でこのT字路交差点、それから東の方に向かうと更に北の方に降りる、図面じゃ降りるところがありますね、つまり内田良夫あるいは増田実太郎方に降りる道がありますね」

証人=「ええ」

宇津弁護人=「この道路を経由して内田とか増田方に聞込みに行ったということはあるんですか」

証人=「・・・私はこっち側のような気がします」

宇津弁護人=「まずじゃ質問を変えますが、この内田とか増田とか、それから安藤さんとか須釜さんとか、大野さん、まあこういう家がありますね」

証人=「はい」

宇津弁護人=「こういう所に聞込みしたことはしたんでしょう」

証人=「私は行ったような記憶はないですね」

宇津弁護人=「聞込みの範囲内には入っているわけですね、当然ね」 

証人=「入ってます」

宇津弁護人=「この内田方とか増田方に行くには今私が指示した道路を通って行かれるわけでしょう」

証人=「そうですね」

宇津弁護人=「先ほどの証言だと、どの範囲に聞込みを行なうかもあなたが大体指示したようですね」

証人=「ええ、そうです。だからやっぱり道で」

宇津弁護人=「あの道通ってあっちに行けと」

証人=「だから広い道を切っちゃってね、だから私はこっちへ行ったような気がするんです」

宇津弁護人=「あなた自身は東西に走る道路の南側を聞込みしたと思う」

証人=「ええ、そうです」

宇津弁護人=「しかし始める前は今のあなたの証言によれば道を示しながらあっちの方に聞込みしなさい、こっちの方もしたらいいというようなことで始まったわけですか」

証人=「そうです」

宇津弁護人=「そこでまず内田さん、増田さんに行くためには先ほど指示した道路を通って行くであろうという証言になるわけですね」

証人=「そうですね」

宇津弁護人=「そっちの方の聞込みに従事したのはどなたか分かりませんか」

証人=「・・・・・・思い出せません」

                                            *

石田弁護人=「時計の捜索についての捜査報告書は捜索をしたその当日出したかどうか」

証人=「・・・・・・その点は、ずれているかも知れませんし、その当日出しているかも知れませんし、これははっきり記憶はありません」

石田弁護人=「私共がその検察官から閲覧させられた限度の六月二十九日付の時計に関する捜査報告書は三通あって、そのうち一通は石原さんあなたと、鹿野巡査の共同作成名義、二通目は飯野源治と増野という警察官の二人の名義、同じ日付の三通目の捜査報告書は鈴木、宇田川、両名の捜査報告書と、こういう風になるほど三本出されているようなんですがね、これはあなたが先ほど言った三組に分かれたそれぞれの組単位を示しているかどうか」

証人=「・・・・・・・・・」

石田弁護人=「つまり石原さんと鹿野さんは一つのペアで組まれたわけでしょう」

証人=「はい」

石田弁護人=「飯野さんと増野さんが一つのペアになられたかどうかですね。もう一つ逆に言えば鈴木さんと宇田川さんという人がワンペアになったのかどうか」

証人=「・・・・・・・・・その点ははっきりしませんが、当時もそういう記録が出ているとすればやはりその三組でやったんだと、こう思われますね」

石田弁護人=「そうだとすると○○(注:1)聞くわけなんですがね、鈴木さんと宇田川さんという人達はT字路の中心を境にして西と東に分かれるわけでしょう」

証人=「はい」

石田弁護人=「鈴木さんと宇田川さんは西なのか東なのか」

証人=「申し訳ないんですけど、どうもその点忘れちゃったんです」

石田弁護人=「記憶のいいあなたが忘れたということは大変残念なんだけど、もう一つお伺いしたいことは、同じ日付の捜査報告書類にあなたと鹿野さんの名前の中に十八軒ほどの付近の民家を聞込み捜査したことが記載されていて、その現場付近の民家の図面も添付されているんですが、そういう捜査報告書を作ったかどうか」

証人=「作った記憶があります」

(続く)

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(注:1)印字が不鮮明であり○○とした。