アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 798

狭山市田中地内から発見されたシチズン・ペット腕時計。写真は"無実の獄25年・狭山事件写真集=部落解放同盟中央本部中央狭山闘争本部・編、解放出版社"より引用。

【公判調書2470丁〜】

                   「第四十八回公判調書(供述)」

証人=石原安儀(五十七歳・警察官)

                                            *

石田弁護人=「東島君の調べを終わってからあなたはどんな捜査をなさいましたか」

証人=「それからは多分石川君の裏付け、上司からこれをやれ、あれをやれというような指示を受けましてですね、裏付捜査をやってます」

石田弁護人=「どんな裏付捜査をしたんですか」

証人=「裏付捜査というのは多分、一つは五月の一日に石川君が脅迫状を届けた時に鎌倉街道を三輪車で、三輪車の調査ですね。それから野球をやったメンバーの関係、それから時計の捜査、こんなくらいきり、あと記憶にないんですけれども、そんなような記憶であります」

石田弁護人=「野球をやったメンバーの捜査というのはすでに出来ていたんじゃないですか」

証人=「いや、いくらか念入りにやったような気がするんですが、いつ、どういう野球を何時頃から何時頃までやったというようなのも聞いたようだったですね。これは記憶ですからはっきりしません」

石田弁護人=「それから鎌倉街道の車の通過状況ですか、この捜査もすでにかなりされておったんじゃありませんか」

証人=「これはですね、二、三日やったような気がします」

石田弁護人=「だからあなたではないにしても、すでに他の警察官がある程度調べられておったんじゃありませんか」

証人=「さてそれは分かりません。何と言ったって大部隊で幹部の方が多いものだから、とてもじゃないが人がどうやった伝々て、戦争ですから、自分のやること自体をまあ正確にやっぱりやらなくちゃならないというのでどうしても最近の捜査というのは自分のことをしっかりやらなくちゃならないということですから」

石田弁護人=「あなたにこういうことをやれという捜査を命ずるのはどういう人ですか」

証人=「これはですね、幹部です」

石田弁護人=「特定の幹部でしょう」

証人=「普通の場合ですとあれだけど、狭山事件の時は大体警部の方の指示で私共は当時動いたわけですね。その当時の警部とすれば山下さん、清水さん、大谷木さんがいましたか、それから狭山の諏訪部刑事課長、青木さん、飯塚さんが外勤課長で途中から来てましたから、だから誰にどういう風な指示を受けてやったんだというようなことは記憶にありません」

石田弁護人=「それから更にどんな捜査をされたんですか」

証人=「三輪車が終わってそれから時計です。それで時計の捜査をやって、私の記憶では七月の二日に飯能に殺人事件が発生したんですよ、で、その飯能の殺人事件に行きましたら大体幸いにしてホシがすぐわかりましたので、一日で引き揚げて来まして、それで私は一日経った四日の日から今度は丁度狭山事件の最中に大宮と浦和の両管内にアベックの殺人事件が発生していたんです。その関係でおそらく私の記憶ですが七月四日にそちらの方へ行っています」

石田弁護人=「時計の点について尋ねますが、これは何日間くらい時計の捜査に従事されたんですか」

証人=「私は二日くらいだと思います」

石田弁護人=「そうすると六月ですか、それは」

証人=「六月の末です。とにかく飯能の事件が七月の二日ですから、その前だから六月の末頃だと思います」

石田弁護人=「その時計の捜索より聞込みなりの捜査というのはどんな風な形で行なわれたんでしょうか」

証人=「これは上司から入間川の田中地内で、入間川の当時はバイパスが出来てないと思ったけれども、あれから田中の駐在所の手前に入りました三叉路になった突当たりのT字路になった脇辺りに捨てたというようなことを指示されましてですね、多分この時は六人くらいで捜査に行ったと思います」

石田弁護人=「その六人くらいというのは六人が一組になるんですか」

証人=「一組は、二人です」

石田弁護人=「三組行くということになる」

証人=「私は三組と記憶しています」

石田弁護人=「そのあなたを含めた六人の警察官のお名前を覚えておられますか」

証人=「梅沢、鈴木、飯野」

石田弁護人=「宇田川警官はいませんでしたか」

証人=「ちょっと記憶ないですね」

石田弁護人=「増野というのは」

証人=「・・・・・・記憶がないですね」

石田弁護人=「鹿野」

証人=「ああ、鹿野は記憶あります」

石田弁護人=「それから野本定雄」

証人=「野本さんは・・・・・・記憶ないけど」

石田弁護人=「時計の問題ですね」

証人=(注:1)「ええ、時計のあの時には野本さんは行かなかったと思いますね、一緒に。というのは私が親方のような気がするんです。だから野本、当時の警部補が行ってりゃ向こうが先任者ですから、野本さんが。私がとにかく三組ということは誰だったか知らないけれども覚えてるというのは、六人で三組で大体三方を分けてあの近くから鍬など借りて来てやって見たんですが」

石田弁護人=「農家から鍬など借りられたというんですがね、これは一丁借りただけじゃなく何丁か借りたんですか」

証人=「それは忘れちゃったです。記憶にありません」

石田弁護人=「機屋さんからも鍬みたいなものを借りていませんか」

証人=「記憶ありません」

石田弁護人=「農家から借りたというのがあなたの記憶としてはあるんですか」

証人=「あの辺は大体農家が主ですからそのような記憶です」

(続く)

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(注:1)であるが、この証言には私が句読点を追加している。何故かというと原文は読点がほぼ打たれておらず、そのまま通して読んだ場合に意味がよく分からない証言となり、この後の問答とのつながりを理解する上で障害となってしまうからである。仮に原文通り記載した場合、この証言を再び読み返す時に、証人が言わんとする趣旨を理解するには、どこへ読点を打てば良いか頭の中で何度も読み返させられ、時間の浪費も甚だしいこととなる。従ってここに注:1 と記し、私なりに適切と考えた場所に句読点を打ち、ことわりを入れたわけである。だが、読む側にこのような負荷を与えるこの注:1の証言は、本質的に句読点を追加したぐらいでは解決しない、読みづらくさせる何かが潜んでいる。