アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 716

事件当時の佐野屋付近。「写真は"無実の獄25年・狭山事件写真集=部落解放同盟中央本部中央狭山闘争本部・編、解放出版社"より引用」

【公判調書2263丁〜】

                   「第四十五回公判調書(供述)」

証人=大谷木豊次郎(五十八歳・浦和自動車教習所法令指導員。事件当時、埼玉県警察本部捜査一課・課長補佐)

                                         *

福地弁護人=「五月二日に狭山署に行かれて状況を聞いたんでしょうね」

証人=「聞きました」

福地弁護人=「どういうことだったんですか」

証人=「前の晩どのような状態で、警察はそれを知ってどういうような風に処置をしたかということを聞きました。それで今日の計画はどういう風になっているのかということを聞きました」

福地弁護人=「簡単でいいですからその、警察がどういう処置をしたかということについてあなたの記憶では」

証人=「はっきり記憶ないんですけれども、とにかく被害者がまだ生死不明な状態だから被害者が生存しているものと仮定して極秘裏に、まあ犯人の捜査をするということをやったんだと、それで万が一に、その点についてはっきりしてないんですが、何か被害者の家のほうにも幾人か張込みを置いたというような風に記憶しておりますが」

福地弁護人=「五月一日、つまりあなたが狭山署に行かれる前の晩に犯人が金を取りに来るのではないかということで犯人が指定した場所に警察が張込んだという話はしていませんでしたか」

証人=「そんな話がありましたね。前の晩かも知れないということでゆうべ張込みをしたけれども来なかったという話がありました。それはその現場でだったかも知れません、どうもその点ははっきり記憶ありませんが、とにかくそういうような話がありましたから」

福地弁護人=「五月一日、つまり前の晩の張込みについて具体的にどこに何人くらいが張込んでおったか、記憶ありますか」

証人=「その記憶はありません」

福地弁護人=「全然ありませんか」

証人=「ええ、何か具体的に言われたんですが、今、記憶はありません」

福地弁護人=「犯人がお金を持って来いと指定した場所はどこだか記憶ございますか」

証人=「何か店屋さんで、佐野屋さんとか言ったような記憶なんですが、あるいは間違っているかも知れませんが、そのような記憶が薄っすらとあるんです」

福地弁護人=「そこで五月二日にあなたが狭山警察に着いてから、これからどういう風にするかというその話に移りますが、その日狭山警察では当面最も迫られていた問題は五月二日の夜の張込みのことだろうと思うんですが、そうでしょうか」

証人=「そうでしたです」

福地弁護人=「この五月二日の張込みのことについて、いろいろ打合せがあったと思いますけれども、その点を少し思い出して話してほしいんですが、五月二日の張込みの総指揮者といいますか、それは誰がすることになってましたか」

証人=「総指揮者はその時には、まだ狭山警察の刑事課長、まあ、署長ですね、署長がなるという形になっておったんです。

で、その当時は、私が行った当時はとにかく狭山警察署の署員だけでもってこの事件を捜査するということになって人員その他についての配置等については検討して、すでに大体計画が出来ておったわけです。

それを検討してまずこれでいいじゃないかと、とにかく地理に明るい者を、どのようなことを重点にして計画を立てたかを私、問いましたところが、とにかくそのところの土地に勤務した者とか、あるいはその辺の地理に詳しい者を重点的に一人ずつ配置して、ほかの者をそれに付けて二人ずつ組にして張込みをすると、ただそれだけでは私、もし自動車で犯人が来るかも知れんというようなことを予想して、いわゆるひったくり的な方法を取られて持って行かれた時にはこれを追跡して対抗しなければならない、そのような配置もしてあるかというようなことと、それから署員の数はちょっと忘れましたけれども、その犯人が来るといった指定した場所を中心にして張込みを重点的にやってその外周にも張込みをするように配置したんです」

福地弁護人=「ちょっと待って下さい。まず佐野屋付近等への張込みの計画は狭山署のほうで計画を作ったんですか」

証人=「はい」

福地弁護人=「それに対してあなたが今仰ったようないろいろな注文をつけたんですか」

証人=「注文じゃないです。こういう風な体制が出来ておりまして、だけれども周りのほうに対する連絡方法が何等処置してなかったんで、当時県警にあるハンディトーキーを活用したらどうかと私が申しました」

福地弁護人=「そういうことを仰った相手は誰ですか」

証人=「署長です」

福地弁護人=「狭山署長等の計画に対してあなたがいろいろアドバイスをした形になる」

証人=「そうです」

福地弁護人=「そのアドバイス、今、いろいろ上げられましたけれども、もっと広い範囲で人員を配置しろ、ハンディトーキーを持っていくように、そのほかには」

証人=「その程度ですね」

福地弁護人=「人員についてはどれくらいを考えていたんですか、狭山警察署のほうでは」

証人=「狭山署員全員を配置しました」

福地弁護人=「何人くらいですか」

証人=「その当時何人おりましたか、よく知りませんが、もうほとんど署員は緊急の、宿直員ぐらいしか残さず全員配置しました。最初のこれは計画書ですよ」

福地弁護人=「あなたが今仰った狭山署長との最初の計画についてのやり取り、それはその五月二日の大体何時頃でしょう」

証人=「私が行って間もなくですからお昼前のうちにそういうことが出来ました」

福地弁護人=「あなたのいろいろなアドバイスによって狭山署の計画はその後変わりましたか」

証人=「その計画はほとんど変わりません。ハンディトーキーを持たせるというだけで、あとは変わりません」

福地弁護人=「その夜の張込みはそういう配置体制で行なわれたんですか」

証人=「いいえ違うんです」

福地弁護人=「違うんですね、その辺を少し詳しく話して欲しいんですが、どういうわけで違ったんですか」

証人=「それは何ですね、これはもうそろそろ配置しようと思った時間、配置を始めようという計画は最初は十時だったかと思うんですが、それより二時間か、それくらい前に、当時浦和警察署に捜査本部を設けられておったその捜査員が、課長、次席の指揮の元に大挙あそこの署に来たわけです。で、計画はどうなっているかと。こうです、と言ったところが人員が参りましたものですから人員を配置しろということになって」

福地弁護人=「浦和に捜査本部があったというのは別の事件ですか」

証人=「別件です」

福地弁護人=「別件で浦和に捜査本部があって、そこにいた人たちが」

証人=「捜査本部におった県警本部捜査一課の捜査員が八時頃か、だったと思います、十時に配置しようという計画を立てた、その二時間くらい前だと思いますから、八時頃じゃないかと思うんです、浦和の捜査本部の、いわゆる県警本部の捜査員が参ったんです」

福地弁護人=「何人くらいですか」

証人=「十二、三人いたんじゃないかと思います」

福地弁護人=「その中の責任者の名前は覚えておりますか」

証人=「責任者はとにかく課長が参りましたんですから」

福地弁護人=「何という人ですか」

証人=「課長は・・・・・・」

福地弁護人=「中勲ですか」

証人=「ああ、中勲です」

福地弁護人=「中勲という人が来たというのは狭山警察署に来たんですか」

証人=「そうです」

福地弁護人=「一緒に来たんですか」

証人=「課員を連れて一緒に来たんですね」

福地弁護人=「その、中課長がそういう人たちを連れて来たというのは張込み要員として連れて来たんですか」

証人=「そうなんですね。そうなんだと思います」

福地弁護人=「そこでそれまでの計画は変更になるわけなんですか」

証人=「変更になったんです」

写真奥○印は佐野屋。手前✖️印は犯人出現場所。「写真は"無実の獄25年・狭山事件写真集=部落解放同盟中央本部中央狭山闘争本部・編、解放出版社"より引用」

(続く)