アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 720

狭山事件再現実験より。この写真は改めて見ると事件当夜の雰囲気を十分に伝えているのではないだろうか。佐野屋付近での張込みは、このような状況下で行なわれたのであろう。

「写真二点は"無実の獄25年・狭山事件写真集=部落解放同盟中央本部中央狭山闘争本部・編、解放出版社"より引用」

【公判調書2273丁〜】

                   「第四十五回公判調書(供述)」

証人=大谷木豊次郎(五十八歳・浦和自動車教習所法令指導員。事件当時、埼玉県警察本部捜査一課・課長補佐)

                                         *

福地弁護人=「第一回目の打合せの時に、服装等については特に注意が与えられたことはありましたか。目立った服装はまずいとか」

証人=「それは白っぽい服装は、といっても五月ですから、まあ白っぽい服装は普通だったらなかったんで、特に私は服装の点については、まあ、出来るだけ足音のしないようにしようじゃないかというようなことをちょっとうすら覚えにあるんですけれども、あまり記憶ははっきりしません」

福地弁護人=「足音のしないようなというのは、例えばなるべく駆け出したりしないように、ばたばたしないようにと」

証人=「編上靴みたいなのは履かないようにということですね」

福地弁護人=「あなた自身はどういう履物を履いて行かれたんですか」

証人=「私は普通の皮靴ですね。支給されているような靴です。下がゴム底の皮靴です。私はこういうような事件ということを知らないで、ただ行けということなので軽い気持ちで行ったんですから」

福地弁護人=「その、あなたと一緒に張込んだ人たちはどういう靴を履いておったか記憶ありますか」

証人=「それは記憶ありません」

福地弁護人=「まあしかし音のしないような靴を履いて行こうという申し合せはあったんですか」

証人=「そんなようなことだったかと、その点はやはりあまり記憶ははっきりしないんです」

福地弁護人=「第一回の計画を立てられた時に犯人がどっちの方向から来るか、どっちの方向へ立去るかというような、いろいろなケースについて想定をされただろうと思いますが、それはなさいましたか」

証人=「それは一応自転車で来ると。歩いて来るということはちょっと考えなかったんです。で、自転車を使うか、バイクを使うかではなかろうかということを想定して、それですから、その道路の、佐野屋を中心として両側に配置をしたということなんですね。

それで、他の遠いところをその時刻に通る者は全部検問しようじゃないかと、やはり重点が道路を利用すると、乗り物を利用するんじゃないかということで想定を組んでおったんですね」

福地弁護人=「歩いて来るということは全然考えてなかったんですか」

証人=「歩いてはちょっと意表を突かれましたんです」

福地弁護人=「それは第二回の計画に至ってもそういう想定は変わってないでしょうか」

証人=「変わってないようですね」

福地弁護人=「いよいよそうやって張込んでいるところに犯人が来ましたね」

証人=「はい」

福地弁護人=「犯人が来る前に善枝さんの姉さんの登美恵さんが佐野屋の前まで来ましたね」

証人=「来ました」

福地弁護人=「どういう風にして登美恵さんが来るかということ等の手筈についてはあなたは当然承知しておられるんでしょうね」

証人=「ええ、登美恵さんが一人で歩いて来ると」

福地弁護人=「どっちの方からですか。それは佐野屋の方から通りに向かってですね、右の方からですか」

証人=「右の方からだったと思います」

福地弁護人=「お金を持って来るわけですね」

証人=「お金を持って来るわけです」

福地弁護人=「佐野屋の前で待つわけですが、佐野屋のところに来る時間は、何時頃だという手筈になっていたんですか」

証人=「十二時だったと思いますが、何か指定された時刻には、というようなあれだったと思います」

福地弁護人=「佐野屋の前にあなたと反対側に増田さんという人がいたことをあなたは知らないんですか」

証人=「知りません、後になって来ておったということです。来るわけではなかったんですね。捜査計画の中にはなかったわけです、あの人が来るということは。単独で来て」

福地弁護人=「勝手に来ていたんですかね」

証人=「そうなんでしょうねえ」

福地弁護人=「登美恵さんは歩いて来たわけなんですか」

証人=「途中まで自動車で送って、それから歩いて来るという計画でした」

福地弁護人=「登美恵さんが佐野屋前に着いた時は」

証人=「登美恵さんはそこに歩いて来ました」

福地弁護人=「登美恵さんが来たのはすぐわかりましたか」

証人=「わかりました」

福地弁護人=「何か話しかけたり、合図をしたりは」

証人=「特にやらなかったですね。と思いますが。ちょっと忘れましたね」

福地弁護人=「登美恵さんが佐野屋の前に着いたとき居た場所と、あなたが潜んでいる場所とはどれくらい離れてますか」

証人=「登美恵さんはあそこの佐野屋の前を行ったり来たりしておりましたから見えなくなって」

福地弁護人=「ちょっと待って下さい。登美恵さんはずっと歩いて来て佐野屋の前に来てどこで待ってましたか、佐野屋の」

証人=「登美恵さんは大体佐野屋の前の付近におりました」

福地弁護人=「道路のところに」

証人=「ええ。あそこは道路のへりに店がございますから、その軒下付近のところですね」

福地弁護人=「登美恵さんが来て何分くらいで犯人が現われましたか」

証人=「それは・・・・・・・・・。どれくらいだったか、ちょっと記憶ないですけれども、そう時間的に長くないように思いました」

福地弁護人=「犯人が現われたということはどうやってわかりましたか」

証人=「何か、こう、がさがさというような音がしたような気がしますね」

福地弁護人=「どこでがさがさと」

証人=「がさがさとしたのは佐野屋の方に向かって、あの通りから左の方であそこ、道路の脇に畑があってそのへりに茶の木がうすく見えたんですが、その茶の木の付近らしい風に感じたんですね」

福地弁護人=「まずがさがさと音がしたと」

証人=「ええ、何かがさがさというか、足音が聞こえましたね、それで、ああこれは来たなという感じがしました」

(続く)