アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 721

事件当時の佐野屋付近。写真中央◎印は、登美恵さんが身代金に見せかけた紙包みをもっていたところ。写真右端の✖️印に犯人が現われた。「写真は"無実の獄25年・狭山事件写真集=部落解放同盟中央本部中央狭山闘争本部・編、解放出版社"より引用」

【公判調書2276丁〜】

                   「第四十五回公判調書(供述)」

証人=大谷木豊次郎(五十八歳・浦和自動車教習所法令指導員。事件当時、埼玉県警察本部捜査一課・課長補佐)

                                          *

福地弁護人=「そしてそのあとどうしました」

証人=「犯人のほうが『おい』、と言ったか、何か言葉をかけたような、犯人の方が先に言葉をかけたような気がするんですね」

福地弁護人=「どういう言葉をかけたか、思い出せませんか」

証人=「そのことはちょっと忘れました。その言葉について何か報告書か何か書いたような記憶があるんですが、書いて・・・・・・」

福地弁護人=「書いたものをあとで何か警察か、検察庁かに出した記憶があると」

証人=「何かそんな記憶があるんですけれども、報告書か・・・・・・」

福地弁護人=「まあ出来るだけ思い出して下さい。最初に犯人が何か呼びかけたんじゃありませんか。登美恵さんに向かって」

証人=「何か呼びかけた気がしますね」

福地弁護人=「それに対して何か登美恵さんは答えましたか」

証人=「ええ、何か呼びかけたんで答えてましたね。そのような気がしますね」

福地弁護人=「どういう風に呼びかけられて、どういう風に答えた記憶は」

証人=「具体的にはねえ・・・・・・、『持って来たか』、というようなことを言ったったかな、そして『持って来た』、と、言ったか、『うん』と言ったかな、それで『こっちに持って来い』、と言うんで、途中まで、そう言われたんで登美恵さんがそっちのほうに歩いて行ったんかな、歩いて行ったんだが、また、途中から引返して来ちゃって、何かそういうようなことが一、二回やったですね。それでややしばらくしてから犯人は『警察が来てるんだろう』、『警察は来てない』、と言ったんかな、それでどれくらい経ったかな、またしばらくしてから『持って来い』と言ったのかな、何かそんなことも言ったような気がするし、それから、あと『持って来なければおれは帰るぞ』、というようなことを言ったですかね、何かそんな言葉のやり取りがあったように、おぼろに記憶するんですけれども」

福地弁護人=「大体、そういうことのやり取りがあった時間は何分くらいですかね」

証人=「時間的にはどれくらいかな・・・・・・。あんな風な緊張した時間だから相当長いように感じたけれども実際にはそんなに長くなかったんかも知れませんですね、その時の時間は・・・・・・、はっきり記憶ありませんね」

福地弁護人=「犯人がその言葉のやり取りの中で、三十分後におれは帰らにゃいかんというようなことを言ったのを聞いた記憶はないですか」

証人=「うん、そんなことも言ったったかな。何か、帰らなくちゃならないとか何か」

福地弁護人=「時間のことを何か言いませんでしたか」

証人=「そんなことを、三十分に帰らなくちゃいかんとか、何分後に帰らなくちゃいかんとか、そんなことを言ったようにも・・・・・・」

福地弁護人=「犯人が登美恵さんとそういうやり取りをしている場所なんですけれども、あなたが潜んでいるところからどれくらい離れているんです」

証人=「登美恵さんがやり取りしているところはすぐ傍なんですが」

福地弁護人=「犯人は」

証人=「犯人の方はあの時にはもう、そう遠いところではなかったですね、すぐ傍に声が聞こえてるところですから、聞き取れましたから話が、遠くはないですね」

福地弁護人=「何メートルくらい離れてましたか」

証人=「あの時は・・・・・・」

福地弁護人=「あなたは翌朝明るくなってから犯人がいた場所は見当がついたんでしょう」

証人=「ええ、つきました。あそこのところですね、あれが二十メートルくらいありましょうかね。もっと遠いような感じを持っていたんですけれども、実際は朝になってみて、ああここだったんかということで足跡を見まして、今少し遠いところ、三十メートルくらい離れていたんかなという感じだったんですね、言葉のやり取りを聞いている時は」

福地弁護人=「あなたのいた場所は道路から何メートルくらい引っ込んでいるんですか」

証人=「道路からは二、三メートルくらいです」

福地弁護人=「そこにあなたはしゃがんでいたんですか」

証人=「しゃがんでいたんです」

福地弁護人=「二人でしゃがんでいた」

証人=「はい。それで犯人の出たところの間にヒバかヒノキの生垣がありましたので、向こうを透かしても見えなかったんですね。暗かったし、月は出ておったように思いましたが、何かあそこに障害物があったんかな・・・・・・」

福地弁護人=「犯人と登美恵さんとのやり取りを終わった犯人が立ち去ったような状況があったんでしょうか」

証人=「ええ、立ち去ったような状況がありましたので、すぐ行けということで出て行ったところが、話をしておったようなところにもう犯人の影はなくて、これは逃げられたんだということで、もう、それは『おれは帰るぞ』というようなことを言ってからかなり経ってからですね」

福地弁護人=「『おれは帰るぞ』と言ってからしばらくはじっとしていた」

証人=「今までのやり取りの関係からすぐ帰るんじゃない、取りに来るだろうと」

(続く)

                                          *

2023年9月9日、埼玉県加須市の市民プラザで映画の上映会が開かれるとの情報を得、朝酒を控え出動した。映画の鑑賞は無料であるが電車賃は往復で2,000円を越えた。

「造花の判決」というタイトルの映画であるが、内容は狭山事件を扱った劇映画+ドキュメンタリー物であり、インターネットで検索をかけても情報は乏しく、この映画を鑑賞出来るなら2,000円、いや5,000円払っても悔いはないと常日頃思っていたのである。

上映時間は2時間であり、硬めの座席に耐えながらの鑑賞であったが、とりあえずは幻の映画をこの目で確認出来たことに満足した。狭山事件を映像という角度から見た場合、公判調書や関連書籍などの「文章」での理解とは違い、視覚的な表現は文章表現よりも、やはりダイレクトに伝わる利点があることに気付いた。

上映後、関係者より狭山事件再審請求に関する最新情報がもたらされたが、これについては後日述べよう。