アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 722

【公判調書2278丁〜】

                 「第四十五回公判調書(供述)」

証人=大谷木豊次郎(五十八歳・浦和自動車教習所法令指導員。事件当時、埼玉県警察本部捜査一課・課長補佐)

                                         *

福地弁護人=「最初に飛び出したのは誰ですか」

証人=「私だと思います」

福地弁護人=「どこへどういう風に飛び出したんですか」

証人=「道路に飛び出しまして、それから犯人のいた方に行ったんです」

福地弁護人=「ただ黙って飛び出したんじゃなくて周囲に何か言って」

証人=「何か言ったと思いますね。皆飛び出して来ましたから」

福地弁護人=「警笛は吹いたような記憶ですか」

証人=「それは記憶ありませんですね」

福地弁護人=「あなたは飛び出してから佐野屋の前に出て、あの道路を右の方に飛び出した、それからどこへ行きました」

証人=「それから道路が農道みたいなのがありますね、あそこのところを道路沿いに追ったわけです」

福地弁護人=「佐野屋の前の広い通りを右に行って、それから」

証人=「三十メートルか二十メートルか行きまして右に行く農道がありますね、あの農道を右に折れて行ったんです、追いかけて」

福地弁護人=「どれくらい追っかけました」

証人=「百メートルくらい行ったでしょうね」

福地弁護人=「追っかけて行ったのはあなた一人ですか」

証人=「あとは幾人かついて来たかも知れませんね。はっきりしてませんが」

福地弁護人=「百メートルくらい行って引き返したのは」

証人=「それはですね、あの辺は麦畑で麦があったし、それからお茶が植ってあるので懐中電灯くらいの光で照らしてもなかなか光が届かないんです。これはもうここの現場で捜しても捜し当てられないと。それよりも早く連絡して、もっと遠いところを捜査した方がいいと考えてそこから引き返したんです」

福地弁護人=「犯人が現れた時の逮捕の手筈は、どういう合図で誰が先に飛び出すとか、そういった細かい打合せもしてあったんでしょうか」

証人=「あまり詳しい打合せは、とにかくしてなかった、ああいうような意表を突かれてしまったからですけれども、とにかく佐野屋の前に犯人が現われたら包囲の形を取っておるから包囲して捕まえようということだったんですね」

福地弁護人=「総指揮者のあなたが最初に飛び出されたようですけれども、ほかの人は勝手に飛び出してはいかんという注意でもしてあったんでしょうか」

証人=「そういう打合せはしてなかったですね」

福地弁護人=「それであなた引き返したんですね」

証人=「ええ」

福地弁護人=「ほかの人たちはその時どうしておりました」

証人=「ほかの人たちの行動については記憶ありませんね」

福地弁護人=「ただあなたは総指揮者なんだから誰と誰はどこにいるんだとか、誰と誰はどこを張れとかいう指揮をしなければなりませんでしょう」

証人=「とにかくそういう指揮はしなかったですね」

福地弁護人=「指揮をしなかったというのはどういう」

証人=「それは出来ないんです。皆、分散しておるわけですから」

福地弁護人=「あなたは農道を引返して佐野屋の通りに戻ったんでしょう、それからどうされました」

証人=「それからどうしたかちょっと記憶ないんですね。はっきりは」

福地弁護人=「百メートルくらい農道を追っかけて行って戻って、それっきりですか。あとは何も」

証人=「何かやったけれども、どんな風なことをやったか具体的には覚えてません」

福地弁護人=「例えば別の方面には」

証人=「とにかく見つけて歩いたことになるんですけれども」

福地弁護人=「あっちこっち歩き回った記憶はあるんですか」

証人=「ええ、あっちこっち歩き回った記憶はあるけれども、畑の中には入らず道路を歩いておったということです」

福地弁護人=「しかし犯人が逃げたのはまさに畑の中のほうでしょう」

証人=「畑の中を逃げましてもね、そんなに長く畑の中に潜んでおらないでしょう。これはまあ捜査官とあれとの考え方ですが、犯人は早く現場を離れたいという意識があるでしょう。それに畑をいくら捜しても畑のすぐそこにいるということが分かればもうこれは袋の中のねずみですぐ捕まってしまうんで、周りを捜しなさいと」

福地弁護人=「周りの捜し方ですが、先ほどの第三図を見て下さい。今までずっと質問して来ましたので大体この図面はどういう図面かは」

証人=「はい」

福地弁護人=「犯人が逃げるのをあなたが追っかけたという農道は63から61へ向かうこの道ですね」

証人=「はい」

福地弁護人=「これをあなたはどこら辺まで追っかけたということですか」

証人=「このじゃが芋畑62よりまだ手前ですね、63の方にまだ少し近いほうですね。63から62に向かって五分の三くらいまで追いかけて行ったんです」

(続く)

                                          *

先日、市民プラザかぞ(加須)で行なわれた、映画「造花の判決」の上映後、狭山事件再審活動の関係者より現状報告がなされた。それによると、検察より証拠開示された万年筆を鑑定したところ、重大な鑑定結果がもたらされたという報告があり、これは他の証拠資料の鑑定結果とともに冊子に綴じられ来場者に配られた。

「左=被害者が書いたペン習字浄書。右=被害者が使用していたインク瓶」

「下=石川一雄被告人宅鴨居から発見された万年筆(検察より証拠開示されたもの)。上=同万年筆で書いた数字」

両者を蛍光X線分析でインク含有元素を検査。結果・・・

この結果には正直驚きを隠せない。石川一雄被告人宅鴨居から発見された万年筆は被害者の所持していたものではないのである。

この日、来場者に報告を行なった狭山事件再審活動の関係者の話では、この鑑定結果を知った検察は押し黙ったというが、その後早速反論を開始し徹底抗戦の構えという。

このインクの鑑定を行なった下山 進・吉備国際大学名誉教授は、本来かなり大型である蛍光X線分析装置を法廷内での鑑定を実行するため、性能はそのままに小型に作りなおし持ち込んだという(・・・ここはちょっと私の記憶があやふやだが)。

さらに、上記の下山鑑定を認めない検察に対し弁護団は、蛍光X線分析装置自体は規模の大きな研究施設に存在するため、検察側で同一のインク分析検査を勧めたが、頑なに拒否しているという。