アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる725

第三見取図が実際にはどのような状況であったのか、事件当時に撮影された写真と比較する。見ての通り、この写真は日中に撮影されたと思われ、かなり鮮明である。写真の赤い点は佐野屋。事件当夜は月明かりがあったとされるが、街灯すらないこの環境下での張込みは綿密な計画が必須であったことは間違いない。

【公判調書2284丁〜】

                    「第四十五回公判調書(供述)」

証人=大谷木豊次郎(五十八歳・浦和自動車教習所法令指導員。事件当時、埼玉県警察本部捜査一課・課長補佐)

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福地弁護人=「午前中からの証言によると、この不老川のほうですね、つまり、権現橋とその下の橋を結んだそこら辺を主として捜したんでしょう」

証人=「その中間でなくて、この方面へ向かってということです。権現橋からその下の橋の間だけということでなくて」

福地弁護人=「そちらのほうを重点的に捜されたことは間違いないですね」

証人=「ええ」

福地弁護人=「ということは、犯人が不老川の方向へ逃げたんではなかろうかという想定があって重点的に捜されたわけですね」

証人=「ええ」

福地弁護人=「そういう想定がもちろん一つあったと思いますがね、もう一つの想定としてはですね、犯人が61の地点で左右いずれかへ逃げたという想定はされなかったんでしょうか」

証人=「もちろん、そういう想定がありましたから、こっち方面への広範囲の捜査はしたわけです」

福地弁護人=「じゃ、まず、農道のほうから61へぶつかって左へ逃げたという、仮にですよ、そういう想定で捜査をされたとすればですね、そういう想定があったと思いますけれども、その点についてはどういう捜査の結果と言いますかね」

証人=「ここからはですね、先ほど道路ということを重点にということを言いましたが、道路を重点にはしているけれども、やはり、道路のほうが捜査員の行動も速いわけですね。ですから、道路で分かる範囲、ですから、道路のところから、その晩は、前の晩に雨が降った関係で、もし、畑か何かで足跡でも付いておれば、そこへ入っていったということが捜査出来ますですね、もし、畑に入ったようならば、その入ったところから足跡が付くでしょう。そういう関係で、こちら方面の道路を中心にして捜さしたわけです」

福地弁護人=「それは翌朝のことでしょう」

証人=「翌朝です。当夜は私のほうはこの付近しかやらなかったです。この佐野屋の近くを、佐野屋を中心にしたところ、そして権現橋、あるいはここの町田忠治さんのところまで来たったかどうか、わからないけれども、その方面のところをやっただけに過ぎないわけです」

福地弁護人=「つまり、権現橋とか町田忠治のところ、ここが一つの要所になりますね」

証人=「ええ、そうです」

福地弁護人=「そこは当夜のうちに確かめられた」

証人=「権現橋のほうへ行った記憶はありますけれども、忠治さんのところまで行ったかどうかという記憶についてははっきりしません」

福地弁護人=「車で回られたと言いましたね」

証人=「ええ、車で回りました」

福地弁護人=「権現橋のほうへ行かれたというのは、そっちのほうへ犯人が来たかどうか確かめに行かれたわけですか」

証人=「それもあったんですね、それに捜査員に知らせることが目的だったわけです。犯人が逃げたということをですね」

福地弁護人=「じゃ、逃げた直後ですかね」

証人=「逃げて間もなくです」

福地弁護人=「車で回られたと言ったけれども、車はどこかに置いてあったんですか」

証人=「車はどちら方面だったかな、この私たちの張込んだところから四、五百メートル離れたところに置いておったわけです」

福地弁護人=「どちらの方向へ四、五百メートル」

証人=「どっちだったか、そこのところ、土地不案内でよくわからなかったですから、夜だったですから」

福地弁護人=「それではですね、夜が明けてからのことを伺いますけれども、夜が明けて、最初にあなたは現場の指揮者としてどういうことをおやりになりましたか」

証人=「そこの、犯人が来ておったと、この64の地点ですね、このところを中心にして、そこから足跡を辿るようにしたわけです」

福地弁護人=「まず、64の足跡を見たわけですか」

証人=「はい。そこにははっきりした足跡はなかったですね。とにかく足の跡がたくさんあったんですけれども、地面にいろいろゴミがございましてですね、はっきりした足跡がそこでは付いてないで、有効な足跡と思われるようなものは、あまり見当たらなかったような気がします」

福地弁護人=「それで」

証人=「それから、その足跡を鑑識に追わせましてですね、そうしたところが、このジャガ芋畑という印がしてある、この62の地点だと思いますが、この付近のところで、かなり明瞭な足跡を発見したと。64から足跡を追って行ったところが、他にももちろんあったわけですけれども、その足跡が不鮮明で証拠とするに足る足跡でなかったんですが、62の付近において、かなり鮮明な特徴のとれると思われるような足跡があったというので、そこで足跡を採取させたと思います」

福地弁護人=「64の地点から足跡を辿ったと仰いましたね」

証人=「はい」

福地弁護人=「辿っていったら62に着いたわけですね」

証人=「ええ」

福地弁護人=「64から62へ辿った道筋ですけれども、足跡はどこにあったんでしょうか、64から62への足跡ですがね」

証人=「この赤く線が引いてあるところ、63から62に来る途中でなく、この64から、大体62のある左下というんですか、この辺のところを畑のへりを通って来たように思います。農道よりか離れたところですね」

福地弁護人=「この図面でいうと、農道の下になるわけですね。そうすると、64と62を結ぶ線」

証人=「直接結ぶ線ではないんです。63から62のところに農道がある、そこの63から62のほうに向かって右側に畑一枚あって、そこのところに畑の境界らしいものがありまして、そこのところを辿ったように記憶しております。大体そこを中心にしてですね、そこで、今度ジャガ芋畑のところに入って62のほうへ向かってきたと、そういうような記憶がございます。この64の丸がある下側から62のほうですね」

福地弁護人=「その64から62へ繋がっている足跡ですがね、どちらの方向へ向かった足跡ですか」

証人=「これは64から62のほうへ向かった足跡です」

福地弁護人=「それが62へ来てどうなっているわけですか」

証人=「それから今度、農道へ出ましてですね」

福地弁護人=「どこで農道へ出るんですか」

証人=「62のところから今度すぐ右というか上のほうへ向かって」

福地弁護人=「左に曲がるわけですね」

証人=「走って来た方向から言うと左へ曲がって、それから農道でちょっと消えてしまっていたように記憶しておりますが、そのあとははっきりしたのが見つからなかったです」

福地弁護人=「しかし、辿ってきて62へ来て、先ほど何か鮮明な足跡が見つかったと仰いましたが」

証人=「ええ、62のところで比較的鮮明な足跡があって」

福地弁護人=「それは64からずっと繋がっている足跡が62のところで、特に鮮明になっておるわけですか」

証人=「はい、それはその途中で足跡の上に土が崩れてしまって、はっきりしておらなかったんですが、62の付近のところで比較的崩れない、足跡をとっても証拠になるようなのがここで発見出来たわけです」

(続く)