アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 687

(狭山事件裁判資料より)

【公判調書2157丁〜】

               「第四十三回公判調書(供述)」⑭

証人=中  勲(五十七歳)

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福地弁護人=「あなたは先ほど山上弁護人の問に対して玉石については全然記憶がないと言ったけれども、前回この法廷で証言した時はそういう風には言っていないが、どちらが本当なのですか」 

証人=「玉石にはあまり記憶がありません」

福地弁護人=「その点に関する前回のあなたの証言は、『玉石も発見されておりますね』という弁護人の問に対し『何かそのようなことなんですね』と答え、続いて『私は現場を見たんですけれども、玉石を、最後までやっておらなかったので現物は見ておらないんです』 と答えているが、現物を見ていなくともその当時玉石のことが問題になったことは知っているのではありませんか」

証人=「玉石については、どんなものかほとんど記憶にないのです。最近、週刊埼玉が書いているので私も振り返って考えてみているのですが、玉石というものはほとんど問題になっていないし、私もほとんど記憶がないのです」

福地弁護人=「しかしあなたの前回の証言によると『玉石を、最後までやっておらなかった』というのですが、これはどういうことですか」

証人=「私は直接の捜査はやっておりません」

福地弁護人=「あなたは今日の中田主任弁護人の尋問のときに、前回、少時という人物が実在していることを弁護人から聞いたと言ったが、この前この法廷で弁護人はそういうことは言っていないのです。あなたはそれをどこで聞いたのですか」

証人=「私はこの法廷で聞いたように記憶しているのですが」

福地弁護人=「言っていないことは調書上間違いないのです」

証人=「少時という人が実在しているけれども知っているかという問があり、私は、知りません、初めて聞きます、と答えたように記憶しているのですが」

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裁判長=「その点に関する前回の速記録を見ると、証人は石田弁護人の問に対して『その少時さんという相手を重点的に捜査致しましたけれども、確定をするに至りませんでした』と述べ、続いて『少時と書くしょうじさんは、見当たらなかったんですね』という問がありそれに対して証人は『ございません。しかし、あれは当て字であろうという風に私どもは判断しました』と答えているわけだけれども、この『少時と書くしょうじさんは、見当たらなかったんですね』という問は、単にその言葉通りの意味のほか、少時という人は実在したか実在しなかったかという風な意味で、少時という人はいたかも知れないが捜しても見当たらなかったんですね、という風に解釈出来ないこともないが、この点どうですか」

証人=「それで私は帰って少時という人はどこにいたのだろうという問合せをしたのですから、それを少時という人がいるように解釈したわけです」

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検事=「少時という人が実在していたとしても、犯人が脅迫状に少時と書く時にその実在する少時という人に宛てるつもりで書いたかどうかということは分からないわけですね」

証人=「はい」

検事=「実在している人物に宛てるつもりで書くこともあるかも知れないし、当て字のつもりで書いたら、たまたまそれが実在する人物の名前と一致したに過ぎない場合もあるのではありませんか」

証人=「私どもは、果たしてああいう字の名前の人がいるかどうか所在の捜査をしろということと、おそらく当て字であろう、江さくという字から見て当て字であろうという風に考えたものですから、音が同じなら徹底的に洗い出せ、という指示をしました」

検事=「それに該当する人を発見するには至らなかったのですか」

証人=「当て字は三、四人出ました」

検事=「証人は先ほど、少時という人物が実在していれば犯人はその少時という人を知っている人であろう、というような弁護人の問に対してそうですという風に答えたが、その知っているというのはお互いに面識があることが必要ですか」

証人=「そうではありません」

検事=「極端な場合、犯人が通りすがりに門票を見て、ここに住んでいる人はこういう名前の人であると一方的に知って宛名を書き、被害者側からは全然分からないという場合もあり得るのではありませんか」

証人=「あり得ます」

検事=「それから、少時という人が実在すると分かっていたら当初の捜査方針は変わっていたのではないかというような問に対し、そう思うというような答があったが、捜査のスタートにおいて方針が変わるということは結論まで変わるということなのですか」

証人=「そういうものが出て来ればそれに対する徹底的な捜査をしただろう、という意味で言ったのです」

検事=「結論が違ってくるかどうかは分かりませんね」

証人=「はい」

検事=「前回の証言の中に、本件があって間もない頃にあの近くで自殺した奥富玄二という人が被害者の中田方で作男をしていたことがある、ということが出たが、その奥富玄二という人が中田方で作男をしていたのはいつ頃のことであったか聞いていませんか」

証人=「私の記憶では、栄作さんの話で、玄二さんが中学を卒業して間もない昭和二十二、三年頃で、善枝さんが乳飲み子でよくおんぶをした頃だ、という風に聞きました」

検事=「その後の交際状況はどうでしたか」

証人=「被害者の姉の亡くなった登美恵さん、この人は当時二十三歳ぐらいでしたが、登美恵さんの話でも、登美恵さんが小学校二、三年の頃でその後ほとんど行き来はなかった、ということでした」

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次回、宮沢弁護人。