アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 680

(狭山事件裁判資料より)

【公判調書2136丁〜】

                 「第四十三回公判調書(供述)」⑦

証人=中  勲(五十七歳)

                                          *

主任弁護人=「前回の証言の後、県警本部や何かに行ってこの事件の記録を見せてもらったこともありませんか」

証人=「山小屋の問題がどうもはっきりしなかったので、その記録があったら調査してくれということを電話で照会しました」

主任弁護人=「照会の結果はどうでしたか」

証人=「田中という小字かの山林内に、付近の小川という中学三年になる少年をかしらに五人ほどが遊びに行き、木の枝や何かを折って遊び場所を作った。付近にあったエロ本とか書類の関係、そういうものは、今は入間市に入っていますが当時は西武町と言っており、そこの仏子という所の人が炭の空俵に入れて持って来て山に捨てたのを持ち込でだのだ(原文ママ)、というところまで解明されたということで、当時事件に関係ないということで切った、という風に聞きました」

主任弁護人=「自動車の教本か何かの本も発見されたのではありませんか」

証人=「それは受験勉強用の問題集ですが、仏子の人がそういう屑を炭俵に入れてその付近の山に捨てて行った、それを拾い集めた、という風に聞きました」

主任弁護人=「今、山小屋は田中と言いましたね」

証人=「山小屋のあった所在地が田中です」

主任弁護人=「死体発見現場から近いところですか」

証人=「だいぶ離れています。二千メートルぐらい離れているのではないでしょうか。はっきりした距離は調べなかったのですが、私も現地へちょっと行ってみたことがありました。その後状況が分からなかったので照会してみたのです」

主任弁護人=「照会したのは今の点だけですか」

証人=「ええ、外にはありません」

主任弁護人=「前回も尋ねましたが、あなたとしては脅迫状の表に書いて消してあった『少時』というのは当て字であると考えていた、ということでしたね」

証人=「はい」

主任弁護人=「当て字であると考えていたにせよ、ショウジと発音する名の人についての捜査はもちろんしたわけですね」

証人=「しました」

主任弁護人=「少なくとも犯人はショウジという人を何らかの形で知っている人でなければならないという風に考えて捜査したわけですね」

証人=「そうです」

主任弁護人=「ショウジという字はどういう字であったか覚えていますね」

証人=「はい。少年の少に時と記憶しております」

主任弁護人=「その名の特異さからあなたはそれを当て字と考えたのですね」

証人=「そうです」

主任弁護人=「当時、それは当て字ではなく本当にそういう人がいるということを聞いたことはありませんか」

証人=「ありません。現場付近を中心に半径四キロぐらいの範囲を捜索させましたが出て来ませんでした」

主任弁護人=「現場とはどこですか」

証人=「佐野屋付近です」

主任弁護人=「なぜ四キロと限ったのですか」

証人=「そんなに遠くで事件を起こすこともなかろうということと、一応あの辺だろうという頭があったものですから」

主任弁護人=「つまりあなたの最初の直感とあまり遠く離れていなかった、そういう考え方からですか」

証人=「まあ、あの辺だろうという感じです」

主任弁護人=「この前あなたが証人に立ったのちに、少時という人物が実在するということを誰かから聞いたことはありませんか」

証人=「この前この法廷で聞きました」

主任弁護人=「この法廷で言いましたか」

証人=「はい。弁護士さんから聞きました」

主任弁護人=「少年の少に時という字を書く少時という人物が実在するということをですよ」

証人=「どなたか発言されました」

主任弁護人=「少ない時と書く少時という人が昭和三十八年当時実在したということをこの法廷で誰かから聞きましたか」

証人=「聞いたような気がするのですが」

主任弁護人=「少時という人の問題について尋問したかも知れないが、少時という人が実在するということはあなたに対して誰も言っていないはずですが」

証人=「私は、同じ字で知らなかったかという質問を受けたように記憶しているのですが」

主任弁護人=「知らなかったかという質問はしたが、昭和三十八年当時少時という人が実在しているが、あなたはそれを知らなかったかという風な質問をした人はないでしょう」

証人=「似たような質問ではないでしょうか」

主任弁護人=「狭山署管内に昭和三十八年当時そういう人が実在していたということを知っていますか」

証人=「この法廷で聞いて初めて知りました」

主任弁護人=「とすると、あなたにとってそれはかなりびっくりすることではありませんか」

証人=「あんな変わった字の名前の人がいるのかと実はびっくりしました。あとで刑事総務課で聞いたら狭山ではあるけれども距離的にだいぶ離れているということで、当時出て来なかったのではないかな、という感じを持ちました」

主任弁護人=「あなたは山小屋のことの外に少時という人のことも県警の人に聞いてみたのですね」

証人=「照合する時に山小屋のことを合わせて聞きました」

主任弁護人=「先ほどは照会したのは山小屋のことだけだと言ったではありませんか」

証人=「少時という変わった名の人が実在しているそうだがどの辺だろう、というようなことをちょっと聞きました」

主任弁護人=「刑事総務課に照合したところ、長島少時という人が当時も現在も存在しているということが確認出来たでしょう」

証人=「姓は知りませんがそういう変わった名前があるということは確認しました」

主任弁護人=「同時にその人が住んでいるところが狭山署管内であるということも確認出来たわけでしょう」

証人=「はい、出来ました」

主任弁護人=「当時の捜査本部長として、今そのことについてどういう考えを持ちますか」

証人=「捜査が不徹底だったといえると思います」

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続く。