アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 647

【公判調書2019丁〜】

                   「第四十一回公判調書(供述)」⑥

証人=竹内武雄(五十六歳・埼玉県交通教育協会評議員。事件当時、狭山警察署長)

                                          *

宇津弁護人=「それから当時の狭山署管内というのは入間市を含んでおりましたか」

証人=「入間市ですか、含んでおります。狭山市入間市ですね。当時は西武町という、今は合併になったんでしょうかな」

宇津弁護人=「そうすると先ほどから仰っておられる担当から、そういう少時という者がいるかどうかについても、それは子供のほうまで分かっておると仰いましたが、それは狭山署管内という範囲でもそういうことは言えるわけですか」

証人=「ええ、それはですね、古い受持ちには大体分かってます。管内ですね、特に駐在所関係は大体。市街地に入りますと、そうはまいりませんがね」

宇津弁護人=「ところが、昭和三十八年の本件当時ですね、少時という人間が狭山署管内に存在したようですけれどもね」

証人=「存在しておったということですか」

宇津弁護人=「はい、長島少時、少時は正に、少ない時と書くんですがね。当時の狭山署管内に実際に存在したということを我々は掴んでますが」

証人=「聞いてませんね。それはいくつぐらいの人ですか」

宇津弁護人=「三十五才ですね」

証人=「私はまあ、今の記憶でもですね、当時はそんな大きな人というかね、成人したのはあんまり考えておらなかったです。幼稚園の小さい子供か、せいぜい高校程度であろうと。そんな大きな三十や四十のそういうのは、あまり考えておりません」

宇津弁護人=「まあ、誘拐などの被害者は幼児が多いですからね」

証人=「ええ。そんな大きな人はほとんど該当者として調べてなかったわけです」

宇津弁護人=「脅迫状は誘拐される幼児よりも両親か何かに宛てられるほうが多いわけですね」

証人=「ええ」

宇津弁護人=「従って、その少時という人に、問題の、よく誘拐されるような小さな子供がいるかどうかの点に重点を置いて調べたんだと、そういう意味ですか」

証人=「そうです」

宇津弁護人=「ところがね、この長島少時という人のところには当時四才の女の子がいるんですよ」

証人=「はぁ」

宇津弁護人=「うってつけじゃないですか。当時の警察は少時についてどういう捜査をしたのですか、一体」

証人=「ですからですね、私は憶えてません。どう捜査したか、細かい点は、ほとんど記録を見てわかる程度ですね。それも担当者のほうが詳しく知っています」

宇津弁護人=「とにかく、あなたとしては幼児のいる少時に該当する人間は調べたと仰いましたね。管内の」

証人=「完全に調べたとは言ってません。調べたが、すぐ死体の発見があり、捜査の重点、方法は変えてきたと。もちろん、捨てるわけにはまいりませんから、最後の最後まで、捜査のときには分担を置いて各分担によってやってます。少時に限らずあらゆる捜査が全部そういう風に進んでます。分担によって最後の事件の解決まではほとんどそういう記録に残ってきます」

宇津弁護人=「少なくともこの問題は当時の捜査本部についての大きな盲点ではなかったと思うんですかね」

証人=「どういう意味ですか、私にはちょっと解せないですね。捜査は確かに記録があればその通りです、捜査はですね、各分担をしてましたから。しかし、盲点とか、そういうことではないと思うんです。事件はもう大体その死体の発見から方向を変えていったわけですから、万が一というような意味で広範囲に捜査の記録はとっております」

宇津弁護人=「狭山署管内に、もし、あの猟銃ですね、鉄砲。猟銃を持っておる者があれば、あれは警察に登録しなければなりませんね」

証人=「ええ、します」

宇津弁護人=「三十八年当時、およそで結構ですが、事件当時ですね、鉄砲を狭山署に登録している人数は大体で結構ですが、何人くらいですか」

証人=「全然記憶ないです、何挺か」

宇津弁護人=「あれは許可というんですか、所持についてはですね」

証人=「ええ、所持許可ですね、撃つほうの許可をやっているわけです。県のほうで所持許可を、まあ、二つになります」

宇津弁護人=「その所持許可についても期限があるわけでしょう」

証人=「ええ、更新します」

宇津弁護人=「そういうものを扱っている部局は何というんですか」

証人=「防犯ですね」

宇津弁護人=「当時の防犯課というんですかね」

証人=「あそこは防犯係です」

宇津弁護人=「本件当時の防犯係長はどなたですか」

証人=「大野警部補ですね、大野キヘイですか」

宇津弁護人=「係員はその大野係長以下何名ですか」

証人=「三名と思います」

宇津弁護人=「この本件についてはその防犯係の三名の方々も何等かの本件の捜査のために動員されておったのでしょうか」

証人=「記憶はありませんね、どの係がどうか、よく記憶ありません。あるいは、タッチしなかったかも知れません、捜査のほうには。大野君はあるいは、捜査のほうに出たですね」

宇津弁護人=「大野さんは」

証人=「捜査のほうへ」

宇津弁護人=「捜査に入っておった」

証人=「ええ。でも係は置いておったと思います」

宇津弁護人=「本件の何か書類の」

証人=「大野君を捜査に出しまして、あとは一般事務をやったと思います」

宇津弁護人=「まあ、鉄砲という一つの危険なものを管理するわけですから、まあ、直接、係長さんなどはね、その鉄砲持っている方々と面識を持っておるというのが普通でしょうね」

証人=「数が多いですから、全部というわけにはまいりませんですね、まあ、ある程度は知ってますね」

宇津弁護人=「ところで、その先ほどの長島少時という方はね、ちゃんと鉄砲を所持して本件のだいぶ前から鉄砲撃ちなんですがね、こういう人間を当時の狭山署ないし捜査本部が全然追及しないというのは納得できないんですが、どうでしょう」

証人=「大野係長がその長島少時を知っておるかというんですか」

宇津弁護人=「いや、警察がね、少時について、ある程度捜査をしたと言っているけれども、管内は一応調べたと言っておられるけれども、正にその管内に長島少時という、しかも非常に珍しいんですよね、少ない時というのはね、それと同じ字の人がいると、それについて全然取調べた、捜査した形跡がなさそうですが、これはどういうわけですか」

証人=「私は記憶ありませんね、どういうわけと言われてもですね」

宇津弁護人=「証人として、どうしてそういうことが起きたかと考えられますか」

証人=「どうしてかと言いますと、最初申したように、県下から刑事が集まってきて、土地一つ、道一本も知らないような刑事が大部分だったと、で、混成で入ったと、で、記録を見れば分かりますように、若干あちこち落ちこぼれというかですね、記録も完全な記録が出来ておらんと思います。そういう風で大勢集まって、分担でがさがさやったという捜査のために、若干、そういうような、今になってみると、これはどうか、あれはどうかという点はあると、こうは思います」

宇津弁護人=「あなたの証言によっても小さな子供のいる家を重視したとしても管内についてはいろんな書類をあたらなくとも子供の・・・(注:1)まで分かっているんだと、こういうような証言もありましたね」

証人=「ええ」

宇津弁護人=「それなのに、どうしてこういう長島少時、少ない時という字まで一致している人間を洩らしておったということになるんでしょうかね」

証人=「ちょっと説明できませんですね」

宇津弁護人=「それじゃ、そのようにお聞きしておきますが、この長島少時さんという人は三十八年の四月三十日頃に鉄砲の許可を取った模様ですが、その点も当時の署長としては確かめておりませんか」

証人=「ええ、知ってません」

宇津弁護人=「その長島少時、この方をこの脅迫状に関連することで取調べたことはないんですな」

証人=「捜査本部ですか」

宇津弁護人=「本部であろうと誰でもね」

証人=「それは知りません」

宇津弁護人=「捜査本部副本部長としては取調べなかったと言えるわけですね」

証人=「なかったというか、現在知ってません。調べたかどうかということをですね、説明できません」

宇津弁護人=「この長島少時という方の住いは入間市小谷田○○番地という所ですがね」

証人=「記憶が出ないですね」

宇津弁護人=「入間市小谷田と申し上げると大体の土地勘はおつきになりますか」

証人=「いや、ちょっと分かりませんね。武蔵町ですかな、旧豊岡の方ですかな」

宇津弁護人=「そのようですね」

                                          * 

裁判長=「入間市ですか」

証人=「今、入間市。変わったんですね。元、武蔵町ですね」

裁判長=「旧武蔵町」

証人=「ええ、当時の武蔵町ですね。今は入間市

(続く)

注:1については、判読不明であった(写真参照)。

ところで私は以前、宇津弁護人のいう入間市小谷田○○番地を訪れたことがある(狭山の黒い闇に触れる 1・2参照)。公判調書には番地まで表記してあるが、そこには現在も居住者がおり、この場で公開はできない。

該当する番地には古めで小ぶりな家が建ち、表札は無かった。