アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 686

【公判調書2155丁〜】

                 「第四十三回公判調書(供述)」⑬

証人=中  勲(五十七歳)

                                          *

石田弁護人=「豚屋の犬が七匹いるという趣旨のことを言いましたが、あなたは豚屋のスコップがなくなったという報告を部下から受けたのですね」

証人=「はい」

石田弁護人=「その報告を受けたのはいつ頃ですか」

証人=「六日頃ではなかったかと思います。六日頃に届出、あるいは聞込みに行った捜査員が、なくなったということを聞いて来た、というような記憶があるのですが、そういう時点で確か報告を受けたように思います」

石田弁護人=「犬が七匹いるという報告は、その際一緒に受けたのですか」

証人=「時期はちょっとはっきりしません。確実に七匹かどうかは分かりませんが、私も行ってみて相当沢山の犬がいることは現認して来ました」

石田弁護人=「先ほどの証言によると七匹ということでしたね」

証人=「七匹のように記憶しているわけです」

石田弁護人=「スコップは石田豚屋のどこから盗まれたという風に報告を受けましたか」

証人=「道路の端に豚小屋がありますが、あそこの餌をやるスコップで、餌の中に入れて置いたのか付近に置いたのか、そんな記憶です」

石田弁護人=「不老川という川がありますね」

証人=「はい」

石田弁護人=「あの川の脇の豚小屋から、という報告ですか」

証人=「はい」

石田弁護人=「なくなったという報告ですか、盗まれたという報告ですか」

証人=「なくなったということだと思います」

石田弁護人=「なくなったという場所に犬は」

証人=「一匹です」

石田弁護人=「仮に七匹いたとすると六匹は豚小屋の方にはいなかったわけですか」

証人=「はい。少し離れた本宅の方にいるわけです」

石田弁護人=「それは川を超えたところですか」

証人=「地続きです」

石田弁護人=「橋を渡って行ったところではありませんか」

証人=「橋は渡らないと思います。両方とも川の向う側だと思います」

石田弁護人=「石田豚屋の本宅というのはスコップがなくなったという報告のあった豚小屋と川を隔てていますか、いませんか」

証人=「はっきりした記憶はありません。あるいは川をはさんでいるかも知れません」

石田弁護人=「そうすると、あなたは普通の人は入れないという理由として犬が七匹いると言うが、一匹だけなら入れるわけでしょう」

証人=「現に石田一義さんの言で、豚にいたずらをされると困るので、その犬は非常によく吠える、吠えればすぐ本宅の方から他の犬が応援に駆けて行くように訓練されている、ということでした」

石田弁護人=「それは、あなたは誰から聞いたのですか」

証人=「石田さんのところへ二度ほど伺っていろいろ聞いてますが」

石田弁護人=「誰から聞きましたか」

証人=「誰から聞いたかははっきりしません」

石田弁護人=「あなたは死体発見現場からいろいろな物が発見されている点について、弁護人の問に対してあまり深くタッチしていないという風に述べたが、そうすると、あなたは新聞記者に捜査の状況について発表しているわけだけれども、あなたが発表する材料についてはあなた以外の人がお膳立てをしているわけですね」

証人=「資料を集めてやっているわけです」

石田弁護人=「あなたが新聞発表をする際の下役というかお膳立てをする人は誰でしたか」

証人=「当時は将田警視が大体担当していました」

石田弁護人=「将田さんが整理したものに基づいてあなたが記者会見をしていたわけですか」

証人=「はい」

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(石田養豚場の餌入れとスコップ。写真は"差別が奪った青春"部落解放研究所・企画・編集=解放出版社より引用)